Written By: sax on 2月 13, 2019 No Comment

サックスという楽器はピカピカ・メカメカしてる割には、「色味」に欠ける工業製品です。楽器全般に渡って色味の豊富なものは多くはありませんが、歴史の古い楽器の「工芸的な美しさ」に比べ、サックスが放つオーラは直球的な「機能美」であり、アート性もベルの彫刻が担っている程度です。そんなサックスに、野に咲く小さな花のようなささやかな色味をもたらしているのが「フェルト」です。大げさですか?ならば、サックスの各所に散らばる、赤や緑のいくつかの小片が無くなってしまったら、サックスがいかに味気ない見栄えになってしまうか想像してください。あの緑や赤、結構決まってますよね。
 あらぬ方向から攻め始めましたが、サックスのフェルトは決して飾りではなく、機能上不可欠なものです。そして各メーカーが、味も素っ気も無い黒や自のフェルトを選ばないことは、サックスのデザインにフェルトの色がいかに貢献しているかを物語っていると思います (大げさですか?)。サックスでフェルトが使用されている場所は、左手小指のテーブルキーの連動接触面の衝撃緩和、左手フロントGキーやAキーのカップ接触面の衝突音防止と隙間調整、右手ハイEサイドキーの足の当り止め、Low C、B、B♭カップの開き調整用、といったところです。金属同士が当たる部分に薄いフェルト片を挟んで音や傷を防ぐ事と、円柱状の位置調整可能なフェルトで、トーンホールカップの開きの角度を決める事、そんな役割でフェルトは使われています。ちっちゃいフェルトシートが10枚以下、大小の円筒のフェルトが4個くらい、それがサックスのフェルトの全数です。

 フェルトはサックスにとって決してメジャーな部品ではありませんが、サックスからフェルトが無くなったらどうなるでしょう。キーを操作するたびにサックスが「ガチャガチャ」と激しい音を立て、各音の音程、特に低音部の音程はむちゃくちゃになるでしょう。「フェルトじゃなくても良いじゃん」、と言う方も居るでしょう。事実、欧州の楽器メーカーの多くが業績不振に陥つたとき、あのセルマー社がサックスのコルクやフェルトの代替え品として、「合成ゴム(のようなもの)」を使った時期があったそうです。古参のリペアマンさんの話しでは、それらの部品は貨物船の船倉での高温・高湿に耐え切れず、サックスが日本に付いたときには、ゴムが溶けてべったりと金属管体にくっ付いてしまっていたそうです。ある時期の日本のサックスリペアマンたちは、新品サックスのゴム剥がしに明け暮れた、という話しです。真偽のほどは定かではありません。
 コルクもフェルトも、欠損、劣化に気付き難い部品です。たまには自分のサックスのフェルトやコルクをじっくりと眺めて、その状態を確認してあげてください。

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Written By: sax on 2月 6, 2019 No Comment

言わずと知れたジャズテナーサックスの巨人、ソニー・ロリンズは1930年アメリカのニューヨークに生まれました。現在88歳で、つい最近まで現役で演奏を続けていましたが、2017年の年末に肺線維症のため引退を宣言しました。1951年にプレスティッジレコードと契約してから、66年間の長きに渡る彼のジャズ人生の中、何度も活動停止や引退宣言をし、その度に復帰をして来ましたが、今回ばかりは復帰は難しそうです。
 ロリンズがジャズテナーの巨人としての存在を確固たるものにしたのは、1956年リリースのアルバム、「サキソフォン・コロッサス」の大ヒットでしょう。その収録曲、「セント・トーマス」はジャズの定番曲となり、かつロリンズの代名詞ともなっています。また1962年リリースの「橋」も名盤として挙げられます。人気絶頂のさ中に引退宣言をし、自分の音楽を見直すためマンハッタンのウイリアムズバーグ橋の下で練習に励んでいたそうです。数年に渡り「引退」していましたが、その後復帰し、復帰最初のアルバムタイトルを、練習場所にちなんで「橋」としたそうです。1956年の「テナー・マッドネス」も必聴盤です。この録音はロリンズとレッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、フィリージョー・ジョーンズ(ドラムス)で録音することになっていたところへ、当時マイルス・デイヴィスのクインテットの新進テナー奏者であったジョン・コルトレーンがひょっこリスタジオに現れ、このメンバーでの録音に飛び入りしたそうです。そのためコルトレーンが参加しているのは「テナー・マッドネス」の一曲のみ。期せずしてジャズテナーの二大巨匠の熱のこもったバトルが実現しました。ロリンズは長い活動期間の中、誰もが認める名盤が数多く揃っているので、紹介しだすときりがありません。

 ソニー・ロリンズは、その太くて暖かい、テナーサックス独特の豪快なサウンドでも有名です。彼の使用楽器はセルマー・マークⅥの13万番代。マウスピースはオットーリンク・メタルの10番またはベルグラーセン・メタルの130にラボーズのMIDのリードだったそうです。しかしロリンズ自身はあまり楽器やセッティングに頓着しないサックス奏者だったようで、ここ10年ほどはセルマーの現行の楽器を吹いているステージ写真が多いようです。またロリンズの半世紀に渡るベスト録音を集大成した「ジャズ・コロッサス」という2枚組のCDを聴いていると、「本当に同じ人が吹いてるの?」と思うほどサウンドが演奏ごとに異なっています。ロリンズは常に奏法の改善を試みていた、との意見もありますが、それだけでは無いような気がします。そしてどんなに音質が変わっても、それらのどれもが「ロリンズの音」になっています。豪快な節回し、美しいアドリブ旋律、表情豊かなメロディはロリンズのそれら以外の何物でもありません。ソニー・ロリンズはまさにジャズテナーサックスそのものです。

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Written By: sax on 1月 30, 2019 No Comment

サックスがどのくらいの数の部品から出来ているかご存知ですか?一般的なアルトサックスで、約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、溶接やら、はんだ付けやら、ネジ留めやらの色々な方法で、ひとつのサックスに組み立てられている訳です。その方法の中で、「サックスはこれで組み立てられている」と言っても過言ではないのが、「はんだ付け」です。今日はちょっとディープな、サックスのはんだ付けの世界を紹介します。
 ラジオやオーディオアンプ等の、電子機器の製作を趣味としている方々は、熱したはんだごてと糸はんだで配線を結合します。電子製品の中にあるプリント基板の裏側の金属の 「点々」は、はんだ付けのはんだで基盤の回路と部品が接着された部分です。はんだは鉛とスズの合金で、電気配線用のはんだはスズ60%:鉛40%で、180℃前後で溶け、固まり方も速いです。それに対し金属接着用のはんだはスズ50%:鉛50%とスズの比率を落とし、融点も高く、ゆっくり固まるようにしてあり、はんだをしっかり盛るのに適しています。また固まった後も柔軟性があり、金属が収縮してもはんだ付け部分が割れ難いという特性があります。はんだとともにサックスの組み立てに使われるのが「銀ロウ」です。銀35%:銅35%:亜鉛30%前後の配合比率の合金で、700℃前後で溶け出します。アルミニウムやマグネシウム以外のほとんどの金属に使用可能で、伸びがよく、強度にも優れた汎用性の高い接合材です。銀ロウはかなりの高温で接着しているので、取れる事はほとんどありません。比べて、パンダ付けは溶ける温度が銀ロウより低いため耐久性は劣りますが、修理がし易いというメリットがあります。

 このように融点(溶ける温度)の違う合金を使うのには、サックスの組み立てと修理を考えた、合理的な理由があります。多くの部品を結合して組み立てるサックスでは、三つ以上の部品を熱接合する場面が多くあります。一種類のはんだだけで接合していたら、「一か所を接合した後、他の場所を接合していたら、その熱が伝わって前の部品が溶けて落ちた」、なんて事に成りかねないのです。また楽器の使用中の部品への力の加わり方、それによる修理や調整の確率の高い場所、振動を伝えるべき場所とそうでない場所、等々。サックスの製造に携わる技術者たちは、接合の温度差という凄く細かい事にも配慮しているのです。
 アメリカンセルマーのU字管ははんだ付けしてあるので有名です。管体を伝達する音のロスが少ないとの評価ですが、現代の楽器に取り入れられたという話は聞いたことはありません。コスト対効果の問題でしょうか。現代の楽器には化学系の「接着剤」が多用されているそうです。はんだや銀ロウに匹敵する性能があるようですが、修理は…困難だと思います。最強強度の「溶接」も近代設備では比較的容易に出来るようです。ロボットアームで高電圧を使ったスポット溶接、なんていうのも出来ちゃうらしいです。でも多くのリペアマンが、「昔ながらのロウ付けとはんだ付けが一番修理し易い」、とおっしゃってます。

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Written By: sax on 1月 23, 2019 No Comment

ジェイク・コンセプション(1936年1月13日~2017年12月4日、本名ジェイク・ヘルナンデス・コンセプション)はフィリピン出身のサックス奏者で、アジア諸国で「キング・オブ・サックス」と称されました。多くのサックス奏者にとってあこがれの先輩であり、ヒーローなんてすが、若い方々には意外と名前が知られていないようです。うーん、ならば奥の手。「スイートメモリー(松田聖子)」、「お嫁サンバ(郷ひろみ)」、「ヤングマン(西條秀樹)」、「北の宿から(都はるみ)」、「ギンギラギンにさりげなく(近藤真彦)」、「時をかける少女(松任谷由美)」など等、昭和の輝けるヒット曲たち。これら全部、ジェイクが吹いています。
 19歳からプロキャリアをスタートさせ、1964年、23歳の時に単身来日。1970年代・80年代にスタジオ・ミュージシャンとして、歌謡曲からロック、ジャズ、フォーク、ポップスとジャンルを超えて活躍しました。歌謡曲全盛の時代、70年代から80年代にかけて、ヒット曲のほとんどでのサックスをジェイクひとりで吹いていたのではないかと言われています。 70年代に新しく台頭してきた「ニューミュージック」の高度なサウンド重視の傾向は、歌謡曲のジャンルにまで及び、レコーディングやコンサートにおける編曲のレベルが格段に上がりました。それにともなって、ミュージシャンにはそれまで以上に高い演奏技術が求められ、腕の立つスタジオ・ミュージシャンに仕事が集中しました。そんな時代にとりわけ引っ張りだこになったのが、フィリピン生まれのジェイク・コンセプションだったのです。西洋的な乾いた力強さでもなく、日本的な湿った哀愁とも違う、独特のあたたかさを持ったヌケの良い明るいサウンドで、メロディアスで切れのいいフレーズを、アドリブで苦もなく奏でてくれるジェイクは、まさに時代のサックス奏者でした。1980年代当時、ジャズアルトサックスのレジェンド、渡辺貞夫氏は、「今、日本で吹いているサックスプレイヤーでジェイクに勝てるミュージシャンはいないね。あいつは凄いよ。なんでも吹けるからね。僕もかなわない」、と言っています。

 ジェイク・コンセプションはマウスピースのリフェースや製作にも造詣が深く、数多くの 「Jake」ブランドのマウスピースを世に送り出しました。EMSをベースにしたリフェースモデルや、クリスタルアクリルを使った透明な「Jake」マウスピースが有名です。すべて彼自らの手によるハンドメイドで、ジェイクのサウンドを彷彿する、まろやかなのに切れ味の良い、芯の太いサウンドが特徴です。新規個体が出ない今、中古市場でも高値で流通しているようです。
 まさに時代の一部を創ったサックス奏者、ジェイク・コンセプション。あなたの手持ちの古いレコードやCDのライナーノーツの中に、彼の名前を見つける事が出来るかもしれません。

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Written By: sax on 1月 16, 2019 No Comment

先日はリガチャーの形の変遷をお話ししたので、リガチャーのサックスサウンド全体への影響に関する変化ついてもお話ししたいと思います。
 もともとはリードをマウスピースに固定するという役割だけだったので、「糸で縛り付けとけ!」で始まったリガチャーですが、リード取り付けの簡便さを求めた結果、金属製のものが主流になって来ました。薄い金属ベルトをネジで締める、現在でも一般的なリガチャーの形式のものが多数出回るようになると、リガチャーの目的が少し変化して来ます。リガチャーに使う金属の種類や厚さ、デザイン等によって、サックスから出るサウンドに変化が現れる事に皆が気付いたのです。一番初歩的な工夫は、逆締めリガチャーでしょうか。それまでリード側に締めネジを付けていたのに対し、反対側のマウスピースの背中に締めネジを付けたのが逆締めリガチャーです。これだけの工夫ですが、リードの振動に対するネジの重さの負荷が軽減し、逆に締めネジがマウスピースの一部として振動し、サックスのサウンドに積極的に影響を与えるようになりました。

 初期の「個性的な構造の」リガチャーは多種多様です。金属ベルトの打ち抜き模様に工夫をすることで、ベルト自身に締め付けの張力を持たせ、ネジが無くてもリードを締め付けて、マウスピースにしっかりと固定するリガチャー。ロートンやオットーリンクのベン・ウェブスターモデルに見られるような、マウスピースにレールとなる切り込みを入れ、そこにはめ込んだリガチャーでリードを固定する、「スライダータイプ」もありました。逆締めリガチヤーが現れると同時に、「あれ、これなら金属ベルトじゃなくても良くね?」と誰かが考えたのか、樹脂ベルトのリガチャーが現れます。その構造から、逆締め一本ネジが普及しました。それがまた進化し、今では金属製の逆締め一本ネジリガチャーが数多く出回っています。当然ネジの総重量は軽くなっています。ひょっとしたら、最近のモデルでは、順締め二本ネジより逆締め一本ネジのリガチャーのほうが多いのかもしれません。
「ただリードを固定し、それ以外は何もしない」糸巻リガチャーは、「吹奏感やサックスのサウンドに大きな影響を与える重要な部品」である現代リガチャーヘと役割を変えました。サックスのサウンドの源であるマウスピースは、そう簡単に交換することは出来ませんが、リガチャーは同じマウスピースに、全く性質の違うものを取り付けることが簡単に出来ます。マウスピースとリガチャーの組み合わせによって、サウンドの作り込みをかなり多岐に渡って調整することが出来ます。現代のリガチャーの役割は、「リードを最適な圧力でマウスピーステーブルに固定」するだけでなく、「マウスピースの不要な振動を吸収」するとともに、 「サックスサウンドに有効な倍音成分を付加する」という、非常に重要なものです。あるときは「締め具」、あるときは「おもり」、あるときは「共鳴振動子」、あるときは「おしゃれなアクセサリー」などと、リガチャーは大変な重労働をしています。

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Written By: sax on 1月 9, 2019 No Comment

アルトサックスと言えばチャーリー・パーカー、テナーと言えばジョン・コルトレーン(ご意見は色々あるでしょうが…)。そしてバリトンと言えばジェリー・マリガンでしょう(これは、皆さん同意していただけると思います)。 1927年4月6日、ニューヨーク州フィラデルフィア生まれ。8歳の頃にはニューヨークジャズシーンにデビューし、ジーン・クルーパー楽団などの編曲者として名を挙げました。「クールの誕生」のアルバムで知られるマイルス・デイヴィスの九重奏団に参加し、バリトンサックスの演奏の他、数多くの曲の作・編曲も担当しています。また、モダン・ジャズ・ビッグバンドの代表的存在であるスクン・ケントン・オーケストラにも編曲を提供するなど、ジェリー・マリガンは稀有なバリトンサックス奏者であると同時に、優れた作曲家、編曲家、ピアニストとしても知られています。 1952年頃に西海岸に居を移し、トランペットのチェット・ベイカーらと画期的なピアノレス・カルテットを結成し、ウェストコースト・ジャズの基盤を作りました。マリガンはウェストコースト・ジャズの中心的人物として西海岸で活躍し、べン・ウェブスター、デイブ・ブルーべック、セロニアス・モンク、ズート・シムズら、ジャズの巨人だちと名演奏を残しています。
 マリガンは多くのジャズ・ジャイアントと「Mulligan Meets…」の共演アルバムを残していますが、異色の名盤、「Stan Getz Meets Gerry Mulligan」は必聴です。このアルバムでマリガンは、テナーサックスの名手スタン・ゲッツと息の合った演奏を繰り広げていますが、録音曲のうち3曲で両者が互いの楽器を交換。そう、スタン・ゲッツがバリトン、ジェリー・マリガンがテナーを吹いています。しかもサウンドが互いのそれに「劇似」のため、言われなければ楽器交換に気が付かないレベルです。しかもフレージングまで、互いに相手を意識して真似ています。まさに名人同志の「遊び」ですね。

 ジェリー・マリガンのバリトンサックスはCONN製のGerry Mulligan Mode1 です。M12をベースにカスタマイズされたもののようですが、現在では珍しいLow B♭モデルです。現代で一般的なLow Aのバリトンサックスより管体が少し短く、最低音はB♭で当然Aキーは付いていません。管体が短いので軽くて取り回しが良いばかりでなく、サウンドもLow Aモデルと比べて軽やかな感じです。また音抜けも良く、バリトンサックスにありがちな「音がこもった感じ」も軽度です。マウスピースはGale Hollywoodを主に使用していたようです。このマウスピースはDukoffのOEMで、Dukoff Hollywoodが販売されていたのと同じ頃のモデルです。晩年はリガチャーで有名なCHARLES BAYがマリガンと共同開発したMulligan Modelのマウスピースを使っています。長めのダックビル型のビーク(マウスピース先端部)を持つこのマウスピースは、今でも現行品として販売されています。

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Written By: sax on 12月 26, 2018 No Comment

マウスピース放浪の旅はサックス奏者の性(さが)と言われていますが、最近では「リガチャー放浪記」も決して冗談では済まなくなっています。多種多様なリガチャーの中で、自分のセッティングにあったリガチャー、「うん、これだ!」というリガチャーにめぐり合うのは至難の業です。サックスのリガチャーの進化をちょっと振り返ってみましょう。

 クラリネットの初期には、リガチャーは「紐」でした。紐でぐるぐる巻きにしてリードをマウスピースに固定するか、紐を編み込んだ「帯」でリードを締め付けていました。この「編み込み帯式リガチャー」はいまだに健在で、サックス用にもいくつものブランドから販売されています。紐の次の時代は金属のベルトです。真鍮の薄い板を帯状にしてマウスピースに巻き付け、端をまとめてネジで締めつけるという、現在でも最も一般的なリガチャーの標準形です。金属板を色々な模様で打ち抜くことで、デザイン性に加えて、リガチャーの重量や締め付ける力の平均化、共振特性等を、各メーカーはそれぞれ工夫を凝らしているようです。金属ベルトの次には「樹脂ベルト」が登場しました。マウスピースを樹脂のベルトで締め付けて、リードを固定するリガチャーの形式です。このタイプのリガチャーを、「もともと本革で出来ていたベルト式リガチャーが、合成樹脂ベルト製に進化した」と思っている方々がいるようですが、本革は「延び」の制御が難しいため、ほとんどのベルト型リガチャーで使用されていません。ベルト式リガチャーは、合成樹脂あっての方式です。数本の細い金属パイプを円形の針金つないだタイプのリガチャーも出てきました。それまでマウスピースに 「べったり」と密着していたリガチャーを、マウスピースから離すことでマウスピースの振動を阻害しないようにする、という発想のリガチャーです。この方式は、針金が人工繊維の紐に置き換えられたり、マウスピースに縦線で触れるパイプが無垢の特殊金属に変わったりと、様々な工夫がなされ各種メーカーから販売されています。

 10年以上前に、それまで「リードを固定する」器具だったリガチャーに、「サウンドを調整するおもり」を付けた製品が発表されました。そのおもりは「バランサー」と呼ばれ、大きさや金属の質、形など、様々なバリエーションを持って、プレーヤーの好みやニーズに応えました。この頃にリガチャーの役割は、「サックス全体のサウンドつくりに積極的に貢献するもの」にはっきりと変わってきました。今では形を見ただけで、そのリガチャーの大体のサウンド傾向が把握できるので、リガチャーはサックスプレーヤーが自分のサウンドを調整するための、「心強いアクセサリー」になっています。ま、数千円から数万円までと、価格のバリエーションはあまり楽しくない場合もありますが…。

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Written By: sax on 12月 20, 2018 No Comment

1916年に米国テネシーに生まれたテナーサックス奏者、サム・テイラーは1940年代から1960年代にかけて、スウィングジャズ、ブルース、R&B、ロックンロール等と、幅広いジャンルで活躍したジャズミュージシャンです。しかし日本でのニックネームは、「ムード・テナーの帝王」でした。50年代後期から頻繁に来日し、各種の企画の録音に参加していたサム・テイラーは、スタンダードジャズに加え、民謡から古賀メロディー、当時の日本の流行歌まで吹きまくり、日本での「ムード歌謡」には欠かせないテナーサックス演奏者となりました。 60年代に音楽好きの若者だった方々なら、テナーサックス=(イコール)サム・テイラーであり、彼の演奏する「ハーレム・ノクターン」や、あらゆるジャンルの音楽で聴かせた、彼の「むせび泣くテナー」のサウンドを思い出せることでしょう。
 ある時期にはド派手なピンク色のテナーサックスを使って、哀愁たっぷりにムード歌謡を吹きまくっていたサム・テイラーですので、「そっち系専門」と思われているかもしれませんが、実はとんでもない超売れっ子ジャズテナーマンでした。1940年代後期から1950年代中頃まで、Ray Charles(レイ・チャールズ)、Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)、James Brown(ジェームズ・ブラウン)、Brenda Lee(ブレンダ・リー)、Bud Powell(バド・パウエル)、Dexter Gordon(デクスター・ゴードン)、Sonny Rollins(ソニー・ロリンズ)、Ray Charles(レイ・チャールズ)等の超有名ミュージシャン達と録音を残しています。また歴史的ビッグバンド、Glenn Miller(グレン・ミラー)楽団やTommy Dorsey(トミー・ドーシー)楽団などにも在籍していました。

 多種多様なジャンルで活躍したテナーマン、サム・テイラーは、やはり引っ張りだこになるだけの「技術」と「センス」がありました。特筆すべきはそのすばらしい音程感と高度なサウンドコントロールのテクニックです。扇情的な表現で多用される跳躍フレーズも、サム・テイラーは飛び先の音の音程をピタリと正確に射抜きます。跳躍先の音程をベンドなどで調整すると、フレーズが泥臭くなりがちですが、ど真ん中ストライクで決められると爽快感すら感じられます。サム・テイラーの、「臭いけど爽やかな、唯一無二のサウンド」のキーポイントはこの辺にあると思います。またサブトーンのコントロールも秀逸です。ため息のような空気感たっぷりのサブトーンから、クリスタルのようにクリアなノーマルトーンまで、連続的に、かつ音毎にサブトーンの深さをコントロールするのがサム・テイラーのサウンドです。またヴィブラートもロングトーンに掛けるきめ細かいものから、フレーズごとに短く掛ける、演歌のこぶしのようなものまで、多彩なコントロールが見られます。アンブシャと口腔のコントロールだけでおこなうベンドダウンも、サム・テイラー節のひとつかもしれません。二度以上の音程を瞬時にベンドダウンし、間髪を入れずに元のフレーズに戻る。カッコ良いんですよね。今でも全く古さを感じないサム・テイラーのサウンド。是非聞いてみてください。

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Written By: sax on 12月 19, 2018 No Comment

1916年に米国テネシーに生まれたテナーサックス奏者、サム・テイラーは1940年代から1960年代にかけて、スウィングジャズ、ブルース、R&B、ロックンロール等と、幅広いジャンルで活躍したジャズミュージシャンです。しかし日本でのニックネームは、「ムード・テナーの帝王」でした。50年代後期から頻繁に来日し、各種の企画の録音に参加していたサム・テイラーは、スタンダードジャズに加え、民謡から古賀メロディー、当時の日本の流行歌まで吹きまくり、日本での「ムード歌謡」には欠かせないテナーサックス演奏者となりました。 60年代に音楽好きの若者だった方々なら、テナーサックス=(イコール)サム・テイラーであり、彼の演奏する「ハーレム・ノクターン」や、あらゆるジャンルの音楽で聴かせた、彼の「むせび泣くテナー」のサウンドを思い出せることでしょう。
 ある時期にはド派手なピンク色のテナーサックスを使って、哀愁たっぷりにムード歌謡を吹きまくっていたサム・テイラーですので、「そっち系専門」と思われているかもしれませんが、実はとんでもない超売れっ子ジャズテナーマンでした。1940年代後期から1950年代中頃まで、Ray Charles(レイ・チャールズ)、Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)、James Brown(ジェームズ・ブラウン)、Brenda Lee(ブレンダ・リー)、Bud Powell(バド・パウエル)、Dexter Gordon(デクスター・ゴードン)、Sonny Rollins(ソニー・ロリンズ)、Ray Charles(レイ・チャールズ)等の超有名ミュージシャン達と録音を残しています。また歴史的ビッグバンド、Glenn Miller(グレン・ミラー)楽団やTommy Dorsey(トミー・ドーシー)楽団などにも在籍していました。

 多種多様なジャンルで活躍したテナーマン、サム・テイラーは、やはり引っ張りだこになるだけの「技術」と「センス」がありました。特筆すべきはそのすばらしい音程感と高度なサウンドコントロールのテクニックです。扇情的な表現で多用される跳躍フレーズも、サム・テイラーは飛び先の音の音程をピタリと正確に射抜きます。跳躍先の音程をベンドなどで調整すると、フレーズが泥臭くなりがちですが、ど真ん中ストライクで決められると爽快感すら感じられます。サム・テイラーの、「臭いけど爽やかな、唯一無二のサウンド」のキーポイントはこの辺にあると思います。またサブトーンのコントロールも秀逸です。ため息のような空気感たっぷりのサブトーンから、クリスタルのようにクリアなノーマルトーンまで、連続的に、かつ音毎にサブトーンの深さをコントロールするのがサム・テイラーのサウンドです。またヴィブラートもロングトーンに掛けるきめ細かいものから、フレーズごとに短く掛ける、演歌のこぶしのようなものまで、多彩なコントロールが見られます。アンブシャと口腔のコントロールだけでおこなうベンドダウンも、サム・テイラー節のひとつかもしれません。二度以上の音程を瞬時にベンドダウンし、間髪を入れずに元のフレーズに戻る。カッコ良いんですよね。今でも全く古さを感じないサム・テイラーのサウンド。是非聞いてみてください。

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Written By: sax on 12月 12, 2018 No Comment

楽器屋さんやネットショップには、様々な形のサックスストラップが溢れています。おぶい紐のようなハーネス型、肩に掛けるフック型、ズボンの後ろに留めるズボン吊り型、スリングのV字を押し広げるワイドスライダー型等々、形や仕組みが多種多様な、「サックス吹きの体に優しいストラップ」が数多く出回っています。かたや昔ながらの、「ペルトにひも」のストラップも健在です。サックス奏者にとっては切っても切れない縁のストラップを、細かく考えてみましょう。
 サックスストラップに対する恒久的な悩みはいくつかあります。首にサックスの重量が集中し、肩こりや頸椎ヘルニアを起こす、とか、サックスの重さで首が絞められ、喉が開け難い、なんて悩みもあります。ま、単純に書けば、「重い」とか「痛い」とか「苦しい」でしょうか。それ故に斬新な機構のサックスストラップが多数開発され、それらはかなりの数のサックス奏者に支持されています。ストラップに悩みを持つサックス奏者が、沢山いるという事でしょう。しかしサックス奏者の友人達の中には、まったく「重い」、「痛い」、「苦しい」を頓着しない人達もいます。彼らはむしろ、スライダーの安定性やストラップフックの材質、外れ難さなどにこだわっています。細いベルトのストラップなのに、「別に痛くねえし、喉も閉まらない」と言ってのけます。そんな「こだわらない派」の演奏姿勢を観察すると、共通点が見つかります。まずストラップのネックベルト部分が、首の付け根に置かれています。「首でサックスを吊る」、というより、首の付け根の肩との境界でストラップを支える、といった感じです。またサックス奏者特有の「猫背」にも特徴があります。やや背を丸めるのと同時に、腰をちょっと突き出しています。これは結果的に、身体の重心の垂直線に対し、サックスが近くなります。多くのサックスプレーヤーが知らず知らずにしてしまう。「身体という釣竿から垂れた糸の先にサックスをぶら下げる」ような姿勢ではなく、サックスがぴったりと体に密着し、横から見てもストラップはほとんど見えない状態です。これが「重い」、「痛い」、「苦しい」が回避できる演奏姿勢のようです。

 ストラップは出来るだけ首の付け根で受けましょう。イメージ的には「鎖骨」に乗せる感覚です。ワイシャツ等の硬い襟の服を着ていたなら、その襟の外側に回します。アンブシャ(マウスピースを咥える角度)の為に背を丸める場合は、やや腰を突出し、身体のS字を保つようにしましょう。基本、サックスはなるべく自分に近いところで操作します。右手のひらの付け根や右腕の先を、体のどこかに触らせて演奏するのも得策です。演奏姿勢が安定し、サックスの重量も分散します。ここで重要なのは、左右の肩を前方に丸めない事です。コンパクトな演奏姿勢は、往々にして肩で胸を締めがちです。喉から肺、肋骨へのスムースな空気の通りを確保するため、「胸を閉じない」事は重要です。この姿勢を意識すれば、かなり安価な「あたりまえのストラップ」でも、快適に演奏できるのではないかと思います。

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