Written By: sax on 5月 22, 2019 No Comment

久々に斬新で、画期的なサックスアクセサリーが開発されたようです。名前は失念しましたが、サックスのクローズキーカップに装着し、そのパッドを開いたままに固定するアクセサリーだそうです。それによって普段は閉じているパッドが外気に触れ、演奏後も早くに乾燥し寿命が長くなると同時に、パッドの表面にトーンホールエッジが押し当てられることで付いた溝が膨らんで浅くなり、トーンホールの密閉度が高くなる、ということだそうです。確かにG♯、E♭、C♯のキーはほとんどの場合に閉じており、管体の中の湿度満点な空気にいつも触れています。サックスを演奏していないときぐらい、外の世界の空気に触れて適度に乾燥させることは良い事なのでしょう。
 かたや30年以上前から存在する、サックスのマニアックアクセサリー(?)に「サックス・クランプ」というものがあります。名前や構造が違うものが数社から出ていますが、こちらは、「開いているキーを閉めて止めておく」道具です。サックスは工場から出荷される際、輸送時の振動でキーの調整が狂わないよう、各所にコルク材を挟んで、キーがすべて閉じた状態にして箱詰めされます。キーカップがトーンホールから離れた状態でサックスが激しく振動すると、シャフトから枝のように伸びたキーカップがテコの原理でおもりになり、シャフトとの接続部に力がかかってキーバランスが狂ってしまうのです。「サックス・クランプ」はいくつものコルクの役割を特殊な形状のワイヤ等で代用させ、サックスのすべてのキーを閉じた状態に簡単に固定させることが出来るアクセサリーです。また、サックスのパッドを全交換したときに、「パッドをトーンホールに馴染ませる」目的でサックス・クランプを使用するリペアマンも少なくありません。

 ということで、「え~?パッドは閉じるの、それとも開けるの?」という疑間が湧くわけですが、賢明な読者の方々は既にお気づきと思います。保管時にはパッドは開け、輸送時・移動時には閉じておきましょう、ということですね。サックスを使用しないときは、掃除した後にすべてのキーを開け、ケースにも仕舞わずにスタンドに立てかけて放置しておくのが最良でしょう。低音域のキーだけでなく、ネック側に近いパームキー等のパッドも開けておくと、より効果がありそうです。そしてサックスをケースに入れて持ち歩くときにはパッドは閉めよう、ということですね。これはバリトンサックスのようにトーンホールが大きく、カップも大、という部分が多いサックスに効果が大きいでしょう。これらを真面目にやるとかなり面倒ですが、身の回りの輪ゴムや針金で対応することも不可能ではないでしょう。この「理屈」を頭に入れてご自分のサックスと付き合えば、きっとその良い状態を長く維持することが出来るはずです。

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Written By: sax on 5月 15, 2019 No Comment

「T.K.」こと伊東たけしは、1954年3月15日に福岡県福岡市に生まれた日本のフュージョンミュージシャンです。日本のフュージョンシーンで、サックス奏者、ウインドシンセ奏者として絶大な人気を誇っています。ちなみに「T.K.」とは名前のイニシャルではなく、英語圏では発音し難い「たけし」という音に替えるものとして、「ティーケー」と自身で名乗っています。
 フュージョンやらクロスオーバーやらジャズロックやら、最近ではスムースジャズなどとも呼ばれる伊東たけしの音楽フィールドは、とにかく格好良く、おしゃれで、刺激的で、先進的です。学生ビッグバンドの名門、日大リズム・ソサエティ・オーケストラに所属し、既に有名なリードアルトだった伊東は、当時明治大学の軽音楽部で活動していたギタリストの安藤正容(あんどうまさひろ)が結成したフュージョンバンド、「THE SQUARE」に参加、1978年にプロデビューしました。何度かの離脱もありますが、現在も名を変えた「T-SQUARE」で活動しています。
 伊東たけしと言えば「EWI(AKAI製の電子サックス)」でしょう。伊東は一時期リリコン(コンピュトーン社製サックスシンセ。世界初のウインドシンセ)もステージで使用していましたが、EWIが発売されるとすっかりこちらに傾倒したようです。開発にも深く携わり、伊東用のプロトタイプや専用改造モデルも使用しています。EWIの性能や長所を知り尽くした伊東の演奏は、多くの名演奏を残し、多くのファンの心を掴みました。F-1グランプリのテーマ曲として大ヒットした「TRUTH」での伊束のEWIプレイは、EWI奏者のバイブルであるとともに、音楽界においてウインドシンセの可能性を広く知らしめた名演奏でしょう。あまりにも多くのEWIプレーヤーが伊東たけしのサウンドセッティングを真似て演奏するので、伊東のサウンドセッティングを「EWIの音」と誤解している人も少なくないようです。シンセサイザーなので、あらゆる音が出せるんですけどね。

 伊東はEWIだけでなく、生のサックスにもマニアックです。マウスピースこそオールド・デュコフのD8を主に使っていますが、アルト本体は色々なものを吹き倒しています。「吹き倒す」とあえて使ったのは、伊東はあまりにもパワフルな吹き方をするため、新品の楽器が数年で吹きつぶれ、彼の求める抵抗感が無くなってしまうのだそうです。結果、ネックを変えたり、楽器をGP(金メッキ)のものにしたりと色々試す事になるようです。現在ではセルマーの管体総銀製(スターリングシルバー)のSERIE IIIを使用していますが、この楽器はかなり長く使っています。このモデルの発売直後に渋谷のセルマージャパンで試奏した伊東は、そのサウンドに惚れ込んでしまい、延々と試奏を続けた末に、即購入&お持ち帰りとなったそうです。このモデルはあの渡辺貞夫も使用しています。また伊東は評SAXZ(サクゼト)というブランドから自身のシグネチャーモデルのマウスピースを出したことがあります。デュコフに似たハイバッフルのメタルマウスピースで、なんとこれも総銀製(スターリングシルバー)。10年前の発売当時、価格は16万円ほどでした。凄い!

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Written By: sax on 5月 8, 2019 No Comment

サックスという楽器の構造には、ある特徴的な部分があります。もともと指でトーンホール(音孔)を塞いで音程を作り出す「笛」が原点であるサックスは、楽器の大型化によって「指が届かなくなった音孔」に対し、「棒(シャフト)」を使って指の動きが音孔を塞ぐ「パッド」に連動するようにしました。指の届かない背中の中心部分を掻く、「孫の手」みたいなものですね。サックスのメカニズムには、その「孫の手」となるシャフトが何本も装着されています。
 シャフトは「ポスト」と呼ばれる、サックス管体に建てられた支柱で両端を支えられ、他のメカニズムと連動して回転運動をします。30cmの長さのシャフトであれば、シャフトの片方の端を45度回転させれば、30cm離れたもう片方の端も45度回転します。テナーサックスのハイEキーのシャフトは、右手の人差し指の付け根でEキーを押すことで同じだけ回転し、50cm以上離れたネックジョイント近くのハイEのトーンホールを塞ぐパッドが、指の操作と連動して同じだけ開きます。バリトンサックスのハイEキーのシャフトの長さは、当然もっと長くなります。どうやっても指だけでは開け閉め出来ない音孔が、シャフトの働きで演奏者の意のままになるのです。これがサックスのシャフト連動機構です。

 両端をポストで挟まれるシャフトは、サックス全体で26から30本程度使われています。非常に短いものから、ものすごく長いものまで、千差万別の長さのバリエーションがあります。ほとんどのシャフトは管体と同じ金属素材のパイプ状になっており、その内部に「芯金」という鋼材の軸が通っています。その芯金の両端をポストに取り付け、ピボットスクリューというネジで固定します。ピボットスクリューは先端が円錐形に尖っており、芯金の中心=シャフトの中心を、ポストのシャフト受けの中心にびったりと固定します。ねじ込みの具合でシャフトの押さえ具合を調整しますが、締め過ぎるとシャフトが回り難くなり、緩め過ぎるとシャフトの中心がブレた状態になり、芯金の摩耗やパッドカップ(パッドが付いたカップ状の部品)のガタ、連動メカの不具合につながります。このように「真っ直ぐ」であることが重要なシャフトですので、長いシャフトの中間部分には、シャフトがたわんだり、ブレたりしないように、「シャフトガイド」が取り付けられています。
 サックスの管体を握ろうとすると、必然的に何本ものシャフトを握ってしまうことになります。シャフトに力が加わって曲がってしまい、その動作の伝達性が損なわれれば、サックスは動作不良を起こします。それゆえに、「サックスを持つときはベルを持ちましょう」というお勧めマナーとなるわけですが、決して実践向けな方法ではありません。どうしてもベルと管体の間に手を差し込んでサックスを持つのが便利で簡単です。このとき何本かのシャフトをつかんでしまうことになりますが、シャフトガイドの位置を気にしながらつかむ場所を考えれば、シャフトヘの不要な力は最低限で済ませることが出来ます。シャフトの重要性を理解すれば、それに見合った扱いが出来るようになると思います。

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Written By: sax on 4月 24, 2019 No Comment

スタン・ゲッツは1927年、ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれのジャズテナーの巨人です。誰もがその名前を知る、「ザ・ジャズマン」ですので、彼について語れる逸話は星の数ほどあるのですが、今日は「フォー・ブラザース」、「ドラッグ」、「ボサノヴァ」の三題噺でまとめてみます。
 ジャズの歴史において、「ユダヤ系ジャズマン」は才能ある演奏者のひとつのグループとして分類されています。ゲッツはユダヤ系ウクライナ人移民の家庭に生まれたユダヤ系ジャズマンで、ピアノのビル・エヴァンス、アルトサックスのリー・コニッツ、スイングの帝王ベニー・グッドマン、またビッグバンドの巨匠ウディ・ハーマンも「ユダヤ系ジャズマン」です。ゲッツがベニー・グッドマン楽団やウディ・ハーマン楽団で鍛えられ、頭角を現したというのは、そんな「出自」が関係していたのかもしれません。スタン・ケントン楽団やトミー・ドーシー楽団といった一流バンドで経験を積み、ベニー・グッドマンに移った頃のゲッツは、当時の最先端ジャズ「ビ・バップ」に傾倒し、チャーリー・パーカーのフレーズの研究等に時間を費やしたそうです。そしてウディ・ハーマン楽団で方向性を同じとする先進の若手サックス奏者とともに、伝説の「フォー・ブラザース」を録音します。「フォー・ブラザース」のサックス・セクションは、スタン・グッツ、ズート・シムズ、ハービー・スチュワードの3人のテナーサックスにバリトンのサージ・チャロフという、アルトレスの斬新な編成で、中低域が分厚い、独特のファットなサウンドで人気を博しました。この曲はビッグバンドのサックス奏者にとって、ゆるぎない至高の教材として頻繁に演奏されています。

 次にゲッツのドラッグ歴です。スタン・ケントン楽団時代に若くしてヘロインに手を出し、ウディ・ハーマンのビッグバンドで有名になった頃には立派な中毒患者でした。26歳でモルヒネ欲しさに強盗未遂事件を起こし逮捕され、半年間の麻薬刑務所暮らしを送ることになります。その後、麻薬に代わってアルコール依存に悩まされつつも演奏活動を続け、闘病生活を続けた末に1991年、64歳で肝臓癌で逝去しました。ゲッツにとって不幸だったのは、彼の演奏がドラッグや酒の依存症による衰退を周りに感じさせなかったことでした。もちろんそれらのせいで彼の精神と肉体は蝕まれ、生活も荒れていましたが、彼としては良い音楽を生みだせればそれで良かったのでしょうか。同時代のプレーヤー達の中では、「人としては最低の人間」とのゲッツの評価も少なくないようです。
 そして「ボサノヴァ」のゲッツです。一時期ほとんど引退状態でスウェーデンに移住していたゲッツはアメリカに戻り、「ボサノヴァ」の生みの親のひとり、ジョアン・ジルベルトと、彼の奥さんアストラッド・ジルベルトとともに、「ゲッツ/ジルベルト」を発表します。これが大ヒットし、ゲッツは再び脚光を浴びることとなりました。そのヒットには「ボサノヴァ」という目新しい音楽の効果もありましたが、ジャズマンとしてのゲッツの高い音楽性があってこそのものでした。甘い歌声にからみ付く、寄り添うようなオブリガート(合いの手のメロディ)は、ゲッツならではの音楽世界が作られています。スタン・ゲッツはあらゆる意味で「超人」です。

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Written By: sax on 4月 17, 2019 No Comment

アルトサックスなら安いもので5、6万円、標準価格帯で20万から40万円、文句無しのプロモデルなら50万から100万円あたりと、サックスの価格は本当にピンキリの幅が大きいです。この価格差は楽器設計の形態や製造方法、材料、検品・調整の方法、品質管理の体制など、とても複雑な要因の積み上げから発生しているとは推察されますが、果たしてその価格差が、ダイレクトに演奏者のための品質の差になっているかは意見が分かれるところでしょう。今日はその価格差の一つの要素、「部品の質」について考えてみましょう。
 まずは「ばね」。サックスにはニードルスプリングと呼ばれる針状のバネが、全体で数十本使われています。ニードルスプリングは、サックスの操作性や機能を支える、非常に重要な部品です。ステンレスや鋼鉄、炭素鋼等で作られており、たかが「ばね」ですが、高性能なほど高価です。安価なサックスには銀色のステンレスばねが使われていることが多いようですが、高価なモデルには硬鋼線を低温焼き鈍し(テンパー処理)した、青みがかった黒色のばねが使われています。このばねは焼き鈍し処理によって独特の青みが出るため、ブルースプリングとも呼ばれ、均一で強い弾性とへたり難い耐久性が特徴です。質の高いニードルスプリングは、小さなたわみでもしっかりとした反発弾性を持つため、繊細で応答性の良いサックスの操作が実現します。

 次に気になるのがパッド(タンポ)の品質です。サックスのタンポの構造は、基本的に台紙と呼ばれる丸い紙に、中綿となるフェルト、これを包み込みこむように皮が張られ、プラスチックや金属のリゾネーター(ブースター)と呼ばれる円盤状の板でそれらを止めています。皮には合成皮革、羊やカンガルーの天然皮革等が使われ、ほとんどの場合防水加工されています。高価なパッドはきめの細かい柔らかな皮で、トーンホールの密閉性を高めます。またリゾネーターには、プラスチック、メタル等の材質のバリエーションとともに、形状のバリエーションもありますので、メーカーや奏者のサウンドヘの意向に応じた、様々な仕様のパッドがあります。ピゾーニ、シャヌー、ミュージック・メディック、ヤマハ等がパッドブランドとして有名です。パッドはあくまで消耗品ですが、低品質なものは早期に硬化して密閉性が劣化したり、破損したりします。高価なパッドは比較的長持ちしますので、結果として経済的とも言えます。
 コルクもサックスの重要な部品の一つです。コルクは地中海性気候を好むコルクガシという植物の樹皮です。自然材ですので採取する樹木の生育状態、また採取時期によってその品質は大きく変わります。適切な条件の下で採取されていないコルクは、そのクッション性にムラがあり、曲げるとすぐに割れてしまうという、サックスの部品としては適当でないものも少なくありません。節が多く、明らかに断層があるのがそんなコルクです。また細かいコルクのフレークを高圧で固めた圧縮コルクというものもあります。これもサックスの部品としては不向きです。最近では化学樹脂で作られた合成コルクもサックスの部品として使われている場合もあるようです。「部品うんちく」でした。

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Written By: sax on 4月 10, 2019 No Comment

偉人と呼ぶにはあまりに若いかもしれませんが、日本ジャズ界の歴史に残るサックス奏者だと確信しています。その人の名は寺久保エレナ、1992年4月30日北海道札幌生まれの26歳のアルトサックス奏者です。ついこのあいだ、高校を卒業してバークリー音楽院に入学したと思っていたら、いつの間にかこんなに大人になっていました。
 ニューヨーク在住のジャズサックス奏者、寺久保エレナの音楽人生は「神童」から始まりました。19歳のときM&M’s(チョコレート)のサックスを持ってる人形をもらって、それがカッコいいな~と思い、それで両親がジャズのライブに連れて行ってくれて、そこからジャズとサックスにハマリました」、とサックスとの人生を早くにスタートしました。12歳で地元札幌のSJFジュニアジャズオーケストラに入団。中学生のときにピアノの山下洋輔に見い出され、新宿ピットインで共演。17歳でボストンバークリー音楽院サマープログラム「Jazz Work Shop」に選抜され5週間のボストンでのキャンプに参力。その翌年にはなんとキングレコードからアルバム「NORTH BIRD」でメジャーデビュー。ピアノに帝王ケニー・バロン、ベースはクリスチャン・マクブライド、ギターにピーター・バーンスタイン、ドラムはリー・ピアソンという最強のリズム隊の共演でニューヨークにて録音。このときはまだ高校3年生です。同年に東京JAZZ 2010で、ロン・カーター(b)、オマー・ハキム(ds)、ウィル・ボウルウェア(pf)と共演。高校卒業直後の2011年6月にはケニー・バロン、ロン・カーターらを迎えた2ndアルバム「New York Attitude」をリリースし、その年の9月、バークリー音楽院に日本人初のプレジデンシャルスカラーシップ生として入学。なんと授業料も寮費も全部免除の特待生です。バークリー在学中に、2012年にはプレイボーイ・ジャズフェスティバル、モンタレー・ジャズフェスティバル、ボストンでのビーンタウン・ジャズフェスティバル等に出演し、その年「New York Attitude」をリリースし、北米デビューを果たしました。2013年(21歳)にはもう自己のカルテットでブルーノート東京に出演と、学生時代からとんでもない活躍ぶりです。バークリー卒業後は拠点をニューヨークに移し、世界中で活躍し、2018年には5枚目のアルバム「リトル・ガール・パワー」をリリースしています。

 寺久保エレナは早熟なだけではありません。日本人には稀な、卓越したグルーヴ感を有し、バラードから撃速テーマまで、バップからファンクまで、あらゆる形の音楽で、「自分のサウンド」を存在させ続けることの出来る、唯一無二の個性を持ったサックス奏者です。彼女は現在セルマー社と契約し、同社のリファレンスモデルを使用していますが、小さい頃のヤマハやその後のヴィンテージマークⅥ時代と、ほとんど音が変わっていない感じすらします。雑誌のインタビューに、「新しい音楽は、新しい楽器でやるほうが向いてる気がする。」と答えています。どんな楽器でも、彼女の切れ味の良い、芯のあるサウンドは、まさに彼女だけの「オンリーワン」のサウンドのだと思います。

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Written By: sax on 4月 3, 2019 No Comment

最近のサックスケースは、スリーウェイという、手持ち・肩掛け・リュック背負いの3種類の「持ち方」が出来るものが多いようです。PROTEC製のケースシリーズでは、「バックパックストラップ」という別売のアタッチメントが有り、そのアタッチメントを追加購入すれば、ケースが背負えるように変身します。とはいえ管楽器の基本ケースである箱型ケース、セルマーの超軽量パックケース、フライトケース、SKB、Walt Johnson、Winter等のメーカーのシリーズには、背負えるようになっていないものもあります。肩掛けケースをたすき掛けに背負って両手を開ける、というサックス奏者もよく見かけますが、これも軽量のアルトまででしょう。サックスケースをリュックのように背負って、安定した状態で両手が空くのは魅力的です。また重量のあるサックスケースでも、両肩と背中で重量を受け止めれば、かなりの重さでも苦にならずに移動できます。「自分のケースを背負いたい、でも出来ない」、という悩めるサックス奏者に秘密の情報(?)をお教えします。

 楽器の関連製品や付属品は、その楽器の「使用人口」が多いほど多種多様で安価なものが出回っています。世界中で一番演奏者が多い楽器、「ギター」の世界に救世主がいました。「ケースサドル」とか「ケースポーター」と呼ばれる製品です。アコースティックギターのハードケースは「丈夫で重い」の典型です。しかしとんでもない金額のブツも少なくない「ギター」という楽器の世界では、「軽い?持ち易い?いやいや、重くても持ち難くても結構。丈夫が一番!」というプレーヤーが少なくありません。そんな重くて丈夫なケースを、なんとか楽に運びたいと考え出されたのが「ケースサドル」です。サドルとは馬の鞍のことですが、鞍のようにギターケースに縛り付けて固定します。ギターケースの首の部分を締めるようにベルトを巻き付け、ケースの下の部分は相撲のまわし(ふんどし)のようにT形のベルトで固定します。そうしてギターケースに固定された「鞍」には、リュック用のショルダーベルトが二本生えている。幅広のナイロンベルトと、よく考えられたバックルによって、固定した後はぴったり密着しズレることはありません。取り付けられたギターケースを正面から見ると、「むち打ち症のお相撲さん」と見えなくもありませんが、ごついギターケースがこれで背負えるようになったのですから、文句は無いでしょう。このアタッチメントはギター業界では普通に知られた製品のようです。
 なんとサックスケースにもこの「ケースサドル」は使えます。要は「首」と「お尻」があれば、すべてのケースにケースサドルは取り付けられます。ベルトは伸縮自在だし、取り付け時の締め込みも特性バックルでばっちりです。バックルにセーフティボタンが付いていて、バックル部が不用意にどこかにあたっても、決してバックルが外れないようになっています。箱型ケースならアルトサックスからバリトンまで使えそうです。フライトケースのようなパック型サックスケースや、Winterのバリトンケース等にも結構上手く取り付け出来ます。検討する価値はあると思います。

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Written By: sax on 3月 27, 2019 No Comment

身長170センチという小柄にもかかわらず、テナーらしい野太い音で、超絶スピードのフレーズをブロウすることから付いた愛称は「リトル・ジャイアント」でした。そう、あのジョニー・グリフィンです。1928年4月24日、イリノイ州シカゴ生まれのテナー奏者ジョニー・グリフィンは、1945年頃からライオネル・ハンプトンの楽団などで活動し、以降セロニアス・モンク、アート・ブレイキー、ウェス・モンゴメリー等、多くのミュージシャンらと共演しています。1957年に同じテナーサックスプレイヤーのジョン・コルトレーン、ハンク・モブレーと共演した「ア・ブローイング・セッション」をブルーノートからリリースし、テナーサックスのヒーローたちの歴史的なセッションとして伝説のアルバムとなっています。テナー3本にトランペットのリー・モーガンまで加わっているという豪華仕様で、御大アート・ブレイキーがドラムスで「にらみ」を効かしています。グリフィンは超絶技巧で激速フレーズを連発し、モブレーは渋い音で歌い上げ、コルトレーンは先進的なモダンフレーズで我が道を行っています。変幻自在にテナーサックスをブロウし、繊細にバラードを奏で、パッセージを世界最速で吹く小さな巨人は、ジャズ界で多くの支持を受けました。リバーサイドはもとより、ブルーノート、プレスティッジと、ジャズの三大レーベルでアルバムを吹き込んだ怪物はジョニー・グリフィンだけだと言われています。1963年にフランスヘ移住し、活動の場をヨーロッパに移しました。60、70年代はアメリカのジャズミュージシャンがヨーロッパに遠征する際には、こぞってサックスにはジョニー・グリフィンを、と指名したそうです。そんなヨーロッパでの活動の中で特筆すべきは、ケニークラーク・フランシーボランビッグバンドヘの参加です。ベルギー生まれの名ピアニスト兼アレンジャー、フランシー・ボランのアレンジによる重厚なサウンドの源泉には、テナーが3本、2ドラムという特殊な編成に加え、グリフィンの縦横無尽なソロワークも大きく貢献しています。

 ジョニー・グリフィンは典型的なハードバップ時代の「ホンカー」です。テキサス・テナーやブロー・テナーと呼ばれるこのスタイルのテナー奏者の音は、とにかく「でかく太い」です。ジョニー・グリフィンはオットーリンクのスーパートーンマスターとトーンマスターのメタルマウスピースを使用していましたが、そのティップオープニングはホンカー独特の「超ワイド」で、ボアも大きくえぐれていたようです。かつてドレイク(Drake)ブランドから、彼の使用したスーパートーンマスターを基にした「ジョニー・グリフィンモデル」が発売されていましたが、吹きこなせるプレーヤーは少なかったようです。
 ジョニー・グリフィンは大の日本好きで、たびたび日本を訪れています。日本のジョニー・グリフィンのファンの中で、「新幹線でジョニー・グリフィンと一緒になった」とか、「浅草でジョニー・グリフィンと立ち話した」などという話しはよく耳にします。2008年7月25日、ジョニー・グリフィンはパリの自宅で80歳で亡くなりました。彼の死をもって「ハード・バップ時代の終焉」、と言うジャズファンは少なくありません。

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Written By: sax on 3月 20, 2019 No Comment

ネットオークションやネットフリマでは、「ジャンク」と銘打ったサックスが多数出品されています。確かにあっちこっちの部品が欠落し、管体も朽ち果てそうなサビだらけの、「まじジャンク」も少なくありませんが、意外と程度の良い、「直したら吹けるんじゃない?」というサックスも見受けられます。うまくいけば一万円前後でテナーサックスやアルトサックスが手に入ります。職場での昼休み練習用の「置きサックス」のためにもう一本、なんて「有り」だと思いませんか。
 ネットオークションやネットフリマの「ジャンク」サックスを見ていくと、本当に年代物の朽ち果てたサックスと、ほとんど使わずに遺棄されていたと思われる廉価版サックスのジャンクの二種に分けられます。錆にまみれた「まじジャンク」を再生することは相当な技術を要しますが、凹みや歪み、些細な故障で見捨てられた入門用廉価版サックス、とくにアルトサックスは再生の可能性が大です。ある程度サックスの機構に対する知識があれば、自力での修理は不可能ではありません。アルトは、とあえて言ったのは、テナーサックスの場合はネックの曲がりや、自重が重いためシャフトや管体へのダメージが大きいので、安物買いの銭失いになる可能性が比較的高いからです。

 「まともに音が出ないジャンク」の原因にはいくつかあります。「ネックが本体にはまらない」、「オクターブキーが動かない」、「パッドが欠損」、「部品の歪みや破損」等です。ネックが本体にはまらないのは一見歪みと考えがちですが、「円」というのは意外に歪みに強く、多くの原因は接続部(ソケットとレシーバー)の汚れです。シンナーやジッポオイルを付けた布でネックソケットや本体のレシーバー部をひたすら擦ると、あら不思議、スコンとネックがはまります。オクターブキーの故障は、ほとんどの場合オクターブキー連結機構の「曲がり」です。サックス本体から飛び出たオクターブ連結棒は、ちょっとの衝撃で曲がってしまいます。ラジオペンチやプライヤーを使って、曲がりを強引に修正すればOKです。その際、折れないようにゆっくりと、かつ傷つかないよう当て布をして、を守ってください。ネック側のオクターブキーの円弧の修正が必要な場合もあります。右手人差し指のキーとBis(シ♭)キーの連結機構の小さなコルクが無くなってしまっているだけで、「シの♭が出ない」となっている場合があります。使用中の高級サックスですらこの部分での故障は少なくありません。この機構は調整ネジの押し込み、調整ネジの先端、それを受けるレバーのコルクで構成されています。ネジの頭を塩ビチューブで延長したり、レバーに薄くコルクを貼つたりするだけで治ります。
 パッドの欠損はパッドを入手する必要があります。トーンホールの凹みや歪みは特殊治具が無ければ直せません。シャフトの固着も難題です。でも一万円前後でセカンド楽器が手に入れば…。魅力的ですよね。賭けてみますか?

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Written By: sax on 3月 13, 2019 No Comment

ソプラノサックス奏者にありがちな顔を下に向けた吹き方ではなく、ストレートのマークⅥソプラノサックスをほぼ水平に構えているので顔はいつも正面向き。更にマウスピースを口に斜めに挿して、サックスが顔に被るのを防いでいるので、演奏中もその端正な顔立ちが100%クリアに露出される。そう、ソバージュヘアのイケメンソプラノサックス奏者、ケニー・Gです。
 ソプラノサックスと言えばケニー・Gという今日この頃。「いやソプラノといえば『マルサの女』の本田俊之だ」、とか、「ソプラノ奏者の第一人者はやっぱシドニー・ベシェでしょ」、という方々も少なくないとは思いますが、今や圧倒的な支持率のソプラノサックス奏者はケニー・Gだと思います。本名ケニース・ゴアリック(Kenneth Gorelick)、1956年アメリカのワシントン州シアトルに生まれ、17歳でバリー・ホワイトのバックバンド「ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ」に参加してプロ活動を開始、1982年にアリスタ・レコードからケニー・G名義でソロデビューしています。1992年にはアルバム「ブレスレス」が全米2位を記録し、そこに収録されている「フォーエヴァー・ィン・ラヴ」は1994年に第36回グラミー賞で最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞しています。ケニー・Gの音楽ジャンルを「スムース・ジャズ」と定義づけ、彼をその推進者と評する一方で、「彼の音楽はジャズに非ず」というジャズやフュージョン界からの批判もあるようですが、要は「ケニー・Gの音楽」という自身の独特の世界観を持っている、個性的なサックス奏者であることには間違いないでしょう。セルマーマークⅥソプラノサックス独特の甘いサウンドで歌い上げる、ポップス感に富んだ美しいメロディは、音楽のジャンルを超えて多くの人々の支持を受けています。

 使用楽器はソプラノに加えてアルトとテナーもセルマーマークVIの前期から中期のヴィンテージです。ソプラノにはデュコフのマウスピースにロブナーのリガチャーという、「硬質だがソフトなサウンド」にこだわったセッティングで使用しています。セルマーマークVIのストレートソプラノサックスは現代のソプラノに比べてかなり軽量で、ストラップリングも有りません。それゆえにケニー・G独特の、サックスを前方に突き出した奏法が可能になります。現代の重いソプラノをこの姿勢で吹いたら、一曲で右手親指を痛めてしまうか腕がパンパンになると思います。マークVIのソプラノは、トーンホールがほぼ直線に並んだ「インライントーンホール」が特徴で、そのため左手小指のテーブルキーは「右側に押し込む」構造になっています。このメカだからこそ出るサウンドがあり、かつて中国のサックスメーカーがケニー・Gの監修でインライントーンホールのケニー・Gモデルのソプラノサックスを発売し話題となりました。ケニー・G自身が、コンサートで客にそのサックスをプレゼントするという企画も実施したりして一時期人気になりましたが、今ではほとんど流通していないようです。ケニー・Gはビジネスマンとしてもかなり優秀だそうですが、この企画は計画通りにいかなかったのかもしれません。

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