Written By: sax on 10月 18, 2017 No Comment

前回はリガチャーの一般的な特性についてお話ししましたので、今回は実際にリガチャーを 「選ぶ」際の注意点についてお話しします。
 新しいリガチャーを選ぼうとしているということは、今使っているリガチャーヘの不満があるという事です。はっきりした不満は感じていなくても、「何か音がぼやけている気がする」、「マウスピースの性能が十分出ていない気がする」等の、もやっとしたものかもしれません。少なくとも今使っているリガチャーがマウスピースに付属の物だったり、出所不明の雑な造作の物だったりする場合は、市販の個別売りのリガチャーに交換すれば、たとえそれが高価なものでなくても、ほぼ確実にサウンドは改善すると思います。良いリガチャーはサウンドばかりでなく、吹奏感も改善します。息が通り易く感じたり、少ない息で十分な音量を出せたり、音の強弱のコントロールがし易くなったりします。しかしここで、「わー、最高!このリガチャーにしよう。」、と決めてしまうのは考え物です。何故なら、普通のリガチャーを使えばみんなそうなるからです。要は今まで使っていたリガチャーが「ちゃんとしていなかった」だけなのです。リガチャー選別において、多くのサックス奏者がこのギャップに魅せられて、必要な検討にまで至らずに新リガチャー購入を決めてしまう傾向にあります。そしてそのリガチャーを使っているうちに、また新たな不満に気づき違うリガチャーを検討する、というリガチャー探しの無限ループに入り込んでしまいます。もちろん、息が通り難い、息のパワーを取られる、音の強弱のコントロールがし難い、なんて感じるリガチャーは論外ですが、その上にある「サウンドの改善」という目標を忘れないでください。もちろん、その目標があるならばですが…。吹奏感の改善目的でリガチャーを新調するのを否定するわけではありませんが、せっかくの高額な買い物ですので、サウンドの改善を目論まない手は無いと思います。現状のサウンドへの不満を思い返し、それを改善するリガチャーを、試奏を録音するなどして慎重に選んでください。
 リガチャーの交換で期待できるサウンドへの変化はいくつかありますが、そのひとつに 「音の濁りを取る」があります。なにかもっさりと濁っているサウンドが、適切なリガチャーを選ぶとすっきりとクリアな音になります。メタルマウスピースであれば、「共鳴する」リガチャーを使うことでサウンドの輪郭を増強することが出来ます。ラバーマウスピースであればベルト系のリガチャーで「倍音を整理」してサウンドを整えるのも良いでしょう。リガチャーで「音を明るく」することも出来ます。クリアと明るいは同一線上ですが別問題です。倍音豊かに響くリガチャーを探す訳ですが、この倍音構成(サウンドカラー)は奏者の好みです。リガチャー特有の個性を較べながら探してください。「音を締める」ことにもリガチャーが貢献できます。マウスピースを均一に振動させることでこの効果が出ますので、あまり共鳴しないリガチャーが良いでしょう。マウスピースが明る過ぎるサウンドなら、リガチャーで高音域の倍音を抑え込んで、「ダーク」にすることも可能です。このような、「方法」と「結果」を考えながら、リガチャーの選択をすることをお勧めします。
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Written By: sax on 10月 11, 2017 No Comment

サックス奏者の特徴というか、宿命(?)が「セッティングの試行錯誤」です。マウスピースやネック等の部分の交換。サムレストやサムフック、ネックスクリュー等の部品の交換…。ストラップやクリーニングスワブ、リードケース等の周辺小物の検討…。お金と根性の続く限り、サックス奏者の「果てしのない旅」は続きます。その中でも一番「病気にかかり易い」のが「リガチャー」ではないでしょうか。千円前後の超安価なものから、数万円の「猛者」までバリエーションが多数あり、かつ見た目のアピール度も千差万別。はたまたサウンドへの影響も多大と来たら「病気」にならない訳がありません。そんな病気にお役にたてるかどうかは分かりませんが、リガチャーを理解するための、その仕組みについてお話しします。
 リガチャーの基本機能は単純です。リードをマウスピースに固定して、リードが安定的に振動して音を出せる環境を作るのがリガチャーの仕事です。リガチャーの原点は、「紐でぐるぐる巻きにして縛る」でした。それが「輪っか」型の金属ベルトをネジで締める形に変化し、ネジを上側にした「逆締め」が登場、またオットーリンクのリガチャーのようなネジでリードプレートを押し付けるタイプなども出てきました。リガチャーの構造による機能性は各々特徴がありますが、重要なのは「リードを均一な力でマウスピースに押し付けて固定する」ことです。どんな優秀な機構のリガチャーでも、無造作にセットすれば均一性や安定性が得られません。順締めリガチャーならギャップはリードの真ん中にしましょう。逆締めリガチャーは、左右からのベルトの力が均一になるよう、指でリードとリガチャーベルト部をしっかり押さえながら締めましょう。リードプレート型リガチャーでは、締めネジの中心がリードの中心とマウスピースの芯を貫くようにセットします。リガチャーがリードを最適に固定できるかできないかは、あなたの注意深さ次第です。ちゃんとセットすると、安価なリガチャーでも予想以上のサウンドが得られる場合もあります。
 リガチャーはリードを固定する以外に、「マウスピースの振動の手助け」という機能も持っています。マウスピースはリードの振動に共鳴し、サックスのサウンドの源流を生み出しますが、その源流の音の生成に参加しています。色々な形がある金属製リガチャーのほとんどは「共鳴子」として振動を増幅します。増幅する振動の周波数特性が「そのリガチャーのサウンド傾向」です。逆に厚い樹脂ベルト式のリガチャーは振動を吸収します。振動の吸収は決して「音を無くす」ことではなく、特定の倍音を制御することでもあり、マウスピースの不要な周波数を抑え込んでサウンドを改良します。糸系、紐系、針金系のリガチャーはあくまでも「振動しない」ことに重点が置かれていることが多いようです。マウスピースのサウンドに対して余計な足し算も引き算もしない、奥ゆかしいリガチャーです。
 以上のリガチャーの特性はあくまで一般論です。リガチャーによってサックスのサウンドは激変しますので、お財布と相談しながらリガチャー選択を楽しんでください。
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Written By: sax on 10月 4, 2017 No Comment

今日のテーマは、改めて口にするのもばかばかしい位の常套句、「どうしたらサックスが上手になるか」です。しかしサックス初心者からプロ奏者まで、「どうしたら上手くなるか」は絶えず悩んでいることです。ぽんと、どうしたら少しでも近道が出来るんでしょう。一緒に考えてみましょう。
 サックスを上手くなりたい自分としては、他の楽器から何かを「パクれないか」をしばしば考えます。同じ木管楽器の「フルート」や金管楽器の花形「トランペット」はどうなんでしょう。何か上手くなる特効薬がないのか聞いてみました。答えは皆同じ。「練習だよ!」でした。ですよね…。あ、でもフルートやトランペットの練習を見ていたら、何かが違います。同じ指使いで違う音が出ています。サックスは音に対して指使いが決まっています。サックスの「運指表」では基本的に全部の音に指使いが決まっており、ある運指をすれば、基本的に該当する音が出てくれます。オクターブ上はオクターブキーを押し、その上の音はサイドキーの操作で出てくれます。これって、他の楽器では信じられない「楽なこと」なんです。金管楽器は倍音の積み重ねと、それに対する管長の操作で音を出しています。トランペットでは第1バルブを押すと1音下がり、第2バルブを押すと半音下がり、第3バルブを押すと1音半下がる仕組みになっているので、唇で倍音の基音を出し、バルブ操作でそれを下げて音を出します。フルートもオクターブキーが無いので、唇から出す息のスピードや太さを変えて倍音を出します。
 サックスは科学技術の力によって、特定の音を究極に出し易くした楽器です。奏者がさほど苦労しなくとも、指定された指使いさえすれば、決められた音が出てくれます。実はサックス奏者にとって、ここが大きな問題なのです。サックスはオクターブキーを押して、左手人差し指と中指を閉じれば「ラ」の音が出ます。しかしフルートは同じ指使いでもオクターブ下の音が出たり、他の倍音が出ます。トランペットも同様です。唇や口の中の容積、息のコントロールで、「ラを出そう」としなければ、「ラ」は出ないのです。サックス奏者のかなりの人たちが、「出ちやった音」でサックスを演奏しています。それを「出した音」にすればサウンドの質も向上し、コントロールの方法も明確になります。サックス奏者が出す音を意識して初めて、サックスと一体化した最高の音が出せるのです。
 面倒臭い理屈を言いましたが、実践は簡単です。頭の中で出したい音の高さと音質を「歌う」のです。楽器なしで歌うときの喉、呼吸、身体全体の状態を意識して、その体勢で息を入れてサックスを吹くのです。これによってびっくりするほどサウンドが改善しますが、決して簡単なことではありません。歌いながらスケールを吹いてみましょう。歌いながらフレーズを吹いてみましょう。サックスそのものと奏者が一体になって音を出す。これが、サックスが上手くなる練習の原点です。
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Written By: sax on 9月 27, 2017 No Comment

サックスのような操作方法でシンセサイザーの電子音を出す楽器、いわゆる電子サックスには、サックス奏者である皆さんは、一度は興味を持ったことがあると思います。て言うか、かなりの方がもうすでに所有されているかもしれません。出る音が電子音ですので、深夜でもイヤホンで聞けば、誰に遠慮する事無く演奏する事が出来ますし、音程も取り易い、キーの変更(移調)もボタン一つです。今日はこんな夢の楽器、電子サックスの歴史をお話しします。
 最近では電子サックスなどという泥臭い名前ではなく、ウインドシンセサイザーという呼び名が一般的になっていますが、その「始祖」は1974年にコンピュトーン社が発売した「リリコン(Lyricon)」です。ストレートソプラノサックスのようなりードのついた機械、「スティック」でシンセサイザーをコントロールするシステムです。マウスピース部分にはリードを咥える力を感知するセンサーや、吹き込んだ息の量やスピードを検知するセンサーが付いており、キーボードよりも細かいニュアンスでのシンセサイザーのコントロールが可能でした。キーがメカニカルタイプだったのでサックス奏者に親和性が高く、トム・スコット、デビッド・サンボーン、伊藤たけし等、多くのサックス奏者がステージで使用しました。同じころ、トランペット奏者のナイル・スタイナーがトランペット型のウインドシンセサイザー、「EVI」を世に出します。そしてそれは改良され、サックス型の「EWI」となり、両者は「スタイナーホーン」と呼ばれました。ほぼ手作りだったリリコンもスタイナーホーンも、革命的な電子楽器でしたがビジネスとしては成功とは言えませんでした。 リリコンの特許はYAMAHAに譲渡され、ヤマハWX-7を生み出し、またスタイナーホーンはAKAIがライセンスを買い取り、EWI1000として製品化します。 AKAIのEWIシリーズはステージ楽器としても成功し、マイケル・ブレッカー、伊藤たけし等、多くのミュージシャンがステージや録音でこのシリーズを使用しています。リリコン系のYAMAHA WXシリーズがメカキーであるのに対し、スタイナー系のAKAI EWIは静電式タッチキーを採用しており、サックスのように「押さないときもキーの上に指を置いておく」ことが出来ませんが、それによって特殊な奏法が可能にもなっています。
 ヤマハは管楽器の発音特性をシミュレーションした物理モデル音源VL-70mとスティックコントローラーWX- 11 やWX-5を組み合わせてシステムを展開していましたが、今では生産を終了しています。 AKAI のEWIは、赤井電機(2000年経営破たん)からAKAI ProfessionalMI(2005年倒産)、そして現在はアメリカのDJ機器メーカーinMusic Brand社と製造元は移り変わりましたが、EWI4000S音源内蔵タイプ、EWI5000ワイヤレストランスミッター内臓と進化しており、現在でも多くのミュージシャンに支持されています。
 これらの「2強」に埋もれている感はありますが、カシオ計算機が1988年~90年代初期に製造・販売した、音源、スピーカー内蔵のウインドシンセサイザー、デジタルホーン(Digital Horn)」もありました。またローランドが2016年に発売した、「AE-10エアロフォン」はサックスの小指キーやサイドキーまでも備えたコントローラーで、今までのどのサックスシンセサイザーよりも「サックスらしい」とプレーヤー達に注目されています。
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Written By: sax on 9月 20, 2017 No Comment

サックスを長年吹いていると、先輩や先生に何百回となく言われるお決まりフレーズが、いくつか体に染み着いています。そのひとつに、「音を遠くに飛ばせ!」があります。もちろん音は目に見えませんし、羽が着いていて飛ぶ訳でもありません。遠くにいるひとにも音が届くように、遠くにいても聴こえるように吹きなさい、という意味です。そして多くのサックス奏者が、これを「大きい音を出せ」と勘違いしています。今日はその勘違いの謎を解明します。
 確かに大音量の音は遠く離れていても聞こえます。しかし「大音量」を近くで聴くのは危険です。うるさいし、下手をすれば耳が物理的に故障します。昔、ロックコンサートでスピーカーの前の席に座ってしまい、一週間耳鳴りが治りませんでした。サックスでこんな大音量は出せませんが、「うるさい音」はサックスにとって良い音なのでしょうか?別にロックに恨みがある訳ではありませんが、ロックバンドの電気楽器プレーヤー達は、ボリュームを回せば簡単に大きな音を出すことが出来ます。残念ながらサックスにボリュームノブは有りませんし、ほとんどの場合サックスの生音は、コンサートホールサイズの中での聴衆に届けばOKです。必要ならマイクを通して音量を追加出来ます。なので、サックスの「遠くへ飛ぶ音」は大音量の音とは違うのです。
 「遠くのひとに届く音」をもう一度考えてみましょう。大きな河の対岸で誰かがサックスを吹いています。人のサイズは豆粒ほどですが、きれいなサックスの戦慄が私のところまで聴こえてきます。何故私に聴こえるのでしょう。すぐ後ろにある県道には沢山の自動車が走っています。河のこちら側の目の前のグランドでは野球をやっています。笛に合わせてランニングをする一団も通り過ぎています。私の周りがノイズだらけなのにもかかわらず、対岸からのサックスの音が私に届く。そう、サックスの音がノイズに負けずに、ノイズの隙間を通り抜けて私に聴こえてくるのです。自然にはあり得ない安定した音程、音の輪郭、楽器の美しい音であるがゆえに、ノイズに負けずに、というより、ノイズに紛れずに私の耳に届いてくるのです。サウンドに芯があり、しっかりとした輪郭を持ち、雑然とした生活空間の中のサウンドノイズにかき消されない、音楽としての個性を持った音。それが「遠くへ飛ぶ音」です。逆を言えば、日常生活の騒音の中にはほとんど存在しない、音楽性に溢れたサウンドが、生活空間のノイズに打ち勝って、騒音に押し潰されることなく遠くの聴衆に届くのです。
 人間の聴覚には、マスキング効果と言う「聞きたいものを選り分けて聞く能力」があります。つまり聴衆が、「美しい」、「魅力的だ」と感じる音は、聴き手が本能的に選んで「すくい上げて」聴いてくれるのです。遠くへ飛ぶ音のイメージ、なんとなく分かってもらえましたか?
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Written By: sax on 9月 13, 2017 No Comment

音楽をやっていると、なにかとスポーツと比較されることが多いような気がします。学生であれば、軽音楽部や吹奏楽部の部員達は、野球部やサッカー部等の「体育会系」と比べられ、「軟弱だ!」と言われることが少なくありません。しかし楽器を演奏するという事は体を動かすことです。特に管楽器はスポーツに匹敵するほど体力を使う事もあります。そう、我々サックス奏者も体育会系のみんなのように、練習や試合(本番のステージ)での「体力配分」や「疲れのコントロール」を考えることはとても重要です。
 スポーツの練習で重要なことは基礎体力と技術の向上です。サッカーなら45分ずつの前半後半を乗り切れる体力を養い、相手に負けない技を鍛えます。サックスならどうでしょう。何曲吹いても疲れて緩まない唇の筋肉、楽器を支える首の力、素早いタンギングをするための舌の動き、超絶フレーズを吹くための指の操作等を鍛えるのでしょうか?ロングトーンや基礎練習は、そんな目的のためにやってるんですよね…。って、違いますよぉ~!。スポーツの練習では確かに体力増強を目指しますが、それが最終目的ではありません。長い試合時間を、能力を衰えさせることなく乗り切ることが本当の目的で、体力増強はそのひとつの手段です。例え体力が向上しなくても、45分間フルスピードでプレイできる「疲れない走り方」が出来たなら、それでも良いのです。サックスも同じです。練習で「鍛える」ことを目的にするのはあまり感心しません。とかく練習というと苦しいことを繰り返し、その苦しさに打ち勝つことが練習の成果と考えてしまうことが多いようです。スポーツなら、ひょっとしたらそれはあっているのかもしれませんが、サックスなどの楽器に関しては、「違う」と断言できます。サックス等管楽器の練習の重要な目的のひとつは、「疲れない吹き方を身に着ける」という事だからです。練習の本質を深く考えれば、スポーツも楽器も同じです。いつでも、どんな状況でも、自分の能力を最大限に引き出せるようにするのが「基礎体力」です。ロングトーンの練習をするときは、いかに楽に、無理をせずに、美しく均一な音を長い間出すことの出来る「楽な吹き方」を探す練習をお勧めします。これが「疲れのコントロール」です。こう吹くと疲れない、また、疲れてきたらこう吹けば音がぶれない。そんなことを意識しながらの練習が効果的です。
 また多くの音楽指導者の方々が、「欠点直しの練習に終始するのは感心しない」と言っています。吹けないフレーズをゆっくりと何百回も繰り返せば、だんだん吹けるようになって来ます。しかしそんな練習は疲れるだけです。マイナス面を消すだけの練習では、何も新しいものは生まれません。3時間の練習が疲れるだけで楽しいですか?そこにも疲れのコントロールが必要です。得意な部分をより強調するための練習や、好きなフレーズをより滑らかに吹く練習など、「練習での心の疲れ」に配慮した練習を心掛けてみたらいかがでしょう。
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Written By: sax on 9月 6, 2017 No Comment

もう百回ぐらい言っているかもしれませんが、サックス吹きにとってリードは永遠の悩みの種です。リード選びを原点に帰って、もういちど基本から考えてみましょう。
 リードは振動して音を出します。この音がサックスのサウンドの源流です。リードの良し悪しを言う前に、「振動する環境」を整えましょう。マウスピースには正しくリードをセットすることが必須です。正しいセットとは、左右にずれが無く、先端もマウスピースの先端に揃えましょう。先端の合わせ方は、「髪の毛一本分手前」、「ぴったり」、「リードをマウスピース先端に押し付けてピッタリ」と3種類ありますが、好みと鳴りで選んでください。リガチャーの位置はマウスピースのリガチャーマークに合わせるとか、なるべく下側とか、二本ネジの先端側は少し緩める」とかの諸説ありますが、リードがずれないようにしっかりと留めることが重要です。好みの調整の前に、「しっかりと」だけはちゃんとお願いします。リードが接触する大事なポイントはマウスピースのテーブルだけではありません、その反対側、奏者の下唇も重要な接触ポイントです。下唇を巻き込んで唇越しに下の歯でリードを押さえるシンリップ、下唇を巻き込まないファットリップ、上の前歯もマウスピースに触らないダブルリップ、とアンブシャには色々ありますが、どう下唇がリードに接触するかが大事なポイントです。下唇のリードへの接触によって、リードの振動を妨げないことが重要です。一般的な接触のベストポイントは、唇の柔らかい皮膚とその下側の顔の皮膚との境目です。ここでは「振動を妨げない硬い線」があり、そこでリードを押さえればもっとも振動を吸収しにくい状態となります。唇の厚さの個人差によって、このポイントでリードを支えるために、どのくらい下唇を巻き込むかが異なりますので、鏡を見ながら確認してください。
 リードの形も鳴りに大きな影響が有ります。リードの裏側が凹んで円弧を描いているものはリードの平均的な振動を阻害します。紙やすりやリードリサーフェサーなどでフラットに加工するのが良いでしょう。この場合注意すべきなのは、リード裏面が平滑であることが重要なのではなく、マウスピースに対して左右対称に、ぴったりと接触することが目的です。リードの左右のバランスを崩さないよう注意してください。リード先端のカーブとマウスピース先端のティップカーブがぴったり揃っていないと、リードが鳴らないと思っている方が少なくありませんが、曲線の違いが左右対称であればさほど気にする必要はありません。リード先端のカーブを矯正するために、リードカッターを使用するサックス奏者がいらっしゃいますが、これはマウピピースティップのカーブに合わせるためにカットしているのではなく、リードの先端をほんの少しカットすることでリードの振動の仕方を調整しています。
 「リードは天然の植物だから、鳴りのばらつきはどうしようも無い」と諦めているサックス奏者が少なくありませんが、今日挙げたポイントをチェックしたり、修正するだけで、ダメリードが変身する場合が少なくありません。
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Written By: sax on 8月 30, 2017 No Comment

サックスに限らず、管楽器奏者には多くの都市伝説や迷信とも言うべき「言い伝え」が存在します。それだけサウンド作りが微妙であり、かつ奏者たちの注意、愛情が多く注がれている事の結果だと思います。それらのいくつかの迷信を考えてみましょう。
 最近よく耳にするサックスの表面処理についての解説で、「ノーラッカーのサックスは渋い音がする」という意見があります。本当でしょうか?渋い音ってなんでしょう?サックスの場合、スモーキーで枯れた音というのが、ヴィンテージサックスの音に似ているとして高い評価を得る場合があります。音質を倍音成分について考えると、枯れた音は広範囲に倍音成分が分布しているもので、倍音が少なく、楽器のセンタートーンに音の成分が集中しているのが、いわゆる「ストレートな音」です。ノーラッカーのサックスの場合、ラッカーによる表面塗装によって失われる振動成分が生きている、つまり倍音成分がラッカー塗装の場合に比べて多い、そしてそれが広く分布していると言って良いでしょう。ですので、多くの意見で、「ノーラッカーは良く鳴る、渋い音がする」と言われるのだと思います。ただし、「渋い」に関しては、ノーラッカー故の表面の腐食系変化が視覚的に影響していると思います。そしてサックスの表面のラッカーは決して倍音を殺す悪役ではなく、サックス表面を腐食変化から守る、という役割もありますので、ノーラッカーのサックスは、「どうサウンドが育つか分からない」という部分もあります。
 リードは硬いほうが良い、というサックス奏者少なからずいます。リードは「Hardを使ってます」、「4番です」なんてサックス奏者を、「凄いなあ!」なんて感心する風潮もあります。これ、完全に無意味です。リードの一枚一枚の振動性能(鳴り)とマウスピースとの相性、そして奏者の吹き方でサックスのサウンドが決まります。固いリードが柔らかいリードより良い音が出るという根拠はありません。ただし柔らかいリードより硬いリードの方が鳴らせ難いという傾向はあながち間違いではありません。そして奏法として、柔らかいリードの「暴れる振動を抑え込んで吹く」のと、硬いリードの「振動し難いものを息でどう振動させるか」という相異する奏法のどちらが効果的でやり易いかは奏者によって異なるようです。
 ストラップによってサックスの音色が変わる、というのはサックス奏者の知識として常識になりつつあります。本当でしょうか?ストラップ側のフックとサックス側のストラップリングとの接点はせいぜい2、3平方mmです。プラ製フックは弾力が有るので接触面積が大きいです。金属製フックは硬いので、ストラップリングとの接触面積は少なくなります。この面積でサックスの響きにどれだけの影響が出せるのでしょうか。ストラップがサックスのサウンドに影響が無いとは言いませんが、フックやスリングの材質をあれこれ考えるより、楽な演奏姿勢を考えたほうが、効果的に良い音が出せるのではないかと考えるのは、私だけでしょうか?
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Written By: sax on 8月 23, 2017 No Comment

音楽家、特に管楽器奏者は「擬音語」が好きなようです。近年では「オノマトペ(擬声語を意味するフランス語)」などと呼ばれて市民権を得ています。ドカーン、とか、サラサラとか、ワンワン等の状態や動作を簡単な比喩の言葉で表現したものがオノマトペですが、サックスの周りにも色々ありますよね。何故か音楽をやっていると、多くの事でオノマトペが使いたくなる傾向にあるようです。思いつくがままに挙げてみますので、もし気に入ったものがあったら、音楽仲間との会話や、リペアマンとのやり取りに使ってみてはいかがでしょう。
 リードの周りはオノマトペの宝庫です。「手入れの悪いリードがニチャニチャする」、「リードを指でコンコン弾いて水分を散らす」、「リードに水分が溜まってジュルジュル音がする」、「ペヒッ、とりードミスを繰り返す」、「リードをべ口べ口舐めて湿らせる」、「リードの先がパキッと割れた」、「リードがへたって来て、先端がウネウネになってる」、など等ありますね。
 サックスの不具合やコンディションを表す場合にもオノマトペは大活躍です。「低いB♭の運指でパッドを全部塞ぎ、人差し指を開けたり閉じたりして、ネック先端からボンボンと重く低い音が出てきたら、パッドの密閉性はほぼ問題なし。ペンペンと高い音がしたら、どこかのパッドが空気漏れの可能性あり」、「ネックが本体にサクッと入る場合は、ネックのテノン(継手)は要拡張。グリグリと入り難かったら本体レシーバーの要拡張」、「キーアクションでどこかからカチカチ音がしたら、コルク欠落の可能性あり」、「どこかのトーンホールに隙間があると、音がパヒッと裏返る」、「パッドがトーンホールにくっ付いて、ペチャぺチャする」、「パームキーのトーンホールから、水分がタラタラと垂れて来る」、「ネックスクリューはギュッとではなく、クイッと締める。締めすぎに注意」、「針バネを開放して、ウビーンウビーンと振動しなくなったら、バネが鈍って来ているので要交換」、「G♯キーを開けると、ストッパーコルクが当たらず、プルルンと嫌な振動をする」。
  奏法を説明するときには伝統的に(笑)オノマトペが多用されています。「吹き込むときは、ハアーと温かい息をマウスピースに吹き込むつもりで」、「フラジオ域を出すときは、ヒィーという高音を歌う喉にして息を出す」、「タンギングはトゥトゥトゥトゥとルルルル(これはオノマトペとは違うかな?)」、「息を吸うときは、クッと背中を開いて素早く吸う」、「立ったまま腰をストンと落とす感じで力を抜く」、「キーに指を置くときは、フワッと卵を包む感じで」、「音の最後はヒュイッと抜かずに、ピッと止めること」。きりがありませんね。
 演奏の表現に至っては、それぞれが自由なオノマトペを使います。「イントロはドカーンとかまして、メロに向かってシューとデクレ(デクレッシェンド)してください。メロのバックはフワッと優しく。Fからのテュッティはゴリゴリと音を前に出してください。エンディングに向かってギュンギュンと各パートが絡んでいきますが、決してツンツン前のめりで走らないように。…」。分かりました?(爆笑)
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Written By: sax on 8月 16, 2017 No Comment

良いサックスとはどんな楽器か、またどんなサックスが良いと言えるのかは、ネットや書籍、雑誌等、多くの場所で語られています。逆に良いサックスでも、その残念な部分も話題になります。多くのヴィンテージサックスの名器はその秀逸な音質の魅力に対し、音程や操作性に難があることが多いようです。サックスに関して「良い」だ「悪い」だを我々サック奏者は毎日のように話題にしていますが、サックスの、「良い子、悪い子、普通の子」とは何なんでしょう。
 「良いサックス」の定義は意外と簡単です。演奏者に愛されているサックスであれば、それは良いサックスでしょう。楽器という音を出す機械の性能としての、音程、音質、操作性、耐久性、反応速度等、色々な「尺度」はありますが、奏者が気に入って吹いているのなら、多少の不具合は気にならないでしょう。しかし奏者の技術の上達や嗜好の変化によって、「良いサックス」でも、あっという間に「今いちなサックス」になってしまうことは言うまでもありません。サックスに限らず、楽器の「良さ」は、その奏者の求めるものとのバランスの結果であるとも言えるかもしれません。ある著名なプロサックス奏者は、「音程を捨てても音質やサウンドを取る、というサックス奏者は居るし、間違いではない。自分のやりたい音楽がそれで出来るのなら。しかしビッグバンドのサックスセクションがそれを言うのはダメだと思う。」と言っていました。プレーヤーのそれぞれの立ち位置で、サックスの「良し悪し」も変わるという事ですね。
 「悪いサックス」はもちろん「良くないサックス」です。サックスとしての性能、音程や音質、操作性、耐久性等々の要素が、必要なレベルに達していないサックスが「悪いサックス」と言えるでしょう。でも市場にあるサックスで、少なくとも商品として新品、もしくは中古商品としてショップで売っているサックスには、本当の意味での「悪いサックス」は無いのではないかと思います。ある程度の機能満足度の違いはあっても、その店やメーカーが商品として堂々と市場に出しているものですので、それなりの楽器だと思います。ならば100万円のサックスと3万円のサックスの違いは何なのでしょう。その違いは、機械としてそのサックスを作るためのコストの差によるものです。上質な素材を使い、高度な生産技術で作り上げ、入念に検品や調整をしたサックスは、やはり高額にならざるを得ません。それらのどこかに目をつぶれば、かなり安価にサックスを製造できます。しかしコストの削減は、多くの場合耐久性に現れます。安価なサックスは、買った当初は「普通のサックス」でも、数か月で「悪いサックス」に近づきます。調整で復活する場合もあれば、調整すら無理なサックスもあるようです。頻繁な調整を必要とすれば、調整にかかる費用が最初の価格を上回る場合もあるでしょう。あるベテランリペアマンが言っていました。「良いサックス?修理し易いサックスかな。」、だそうです。「良い子悪い子普通の子」、難しいですね。
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