Written By: sax on 10月 3, 2018 No Comment

サックスのキーのローラーを意識したことはありますか?左右の小指の動きを滑らかにするためのローラーで、キーの乗り換えをスムーズにし、早いフレーズを補助します。ローラーの付いたキーはフルートやファゴットにもありますが、サックスのキーローラーには他の楽器に無い特徴があります。
 サックスのローラー付きキーは、低音域の大きなパッドを押さえるためのキーです。力を加えたいキーなので、小指の力が効率良くキーに伝わるように、独自の工夫がなされています。それは、キーのブロックがお椀の底のようなアーチを描いている、ということです。フルートやファゴットのローラー付きキーにはあまりこのような工夫はされていないようですので、ひょっとしたらアドルフサックスさんがサックスの構造とともに登録したの特許のひとつなのかもしれません。右手小指キーのローラーは単純です。小指をドとミ♭のキーとの間を滑らかに移動させるためのものです。左手小指のローラーは、ド#、シ、シ♭の三つをつなぎます。さて、これらのローラーと運指の動きをじっくりと見ていきましょう。

 小指を素早く動かすためには、キーの押さえ方は場合によって変わります。具体的に言うなら、ある程度ゆっくりした指の動きの場合、押す力を最大限にするために、小指の先端に対する直線的な力でキーを押さえます。そのときにはローラーもあまり活躍しないでしょう。しかし「ド・ミ♭・ド・ミ♭・ド・ミ♭・ド・ミ♭」のような右手小指の速い動きにはローラーは活躍しますが、あれ、指の動きが違います。ミbを押していた小指は、倒れ込むようにしてドを押さえていませんか。小指の先端ではなく、小指の右腹あたりでキーを押していませんか。もちろんこういった指の動きは奏者によって千差万別です。奏者の癖や指のコントロールの力の入れ方などによって、右手小指の動きと押さえ方は異なります。このような理由から、ド側のローラーを「回らなくする」プレーヤーもいるようです。いわく、「倒れ込む指を早くキーが受け止めるためには、ド側のローラーは動かないほうが良い」、とのことです。
 サックスの左手小指の動きには、また別のお作法があります。まずド#とシのトリルは物理的にほとんど不可能です。でも諦めの悪い奏者はここのローラーを大きく滑らかにし、かつキーの角度を調整して、少しでも素早い運指の転換を可能にしています。シ♭を出す場合には、小指の先端はほとんど動かさず、左手小指の左の腹でシ♭キーを押す方が多いようです。これが一番力が入る指の置き方です。セルマー・マークVII以降、「大きいことは良い事だ」傾向のシ♭キーですが、素早く閉めるために、「ぼくは左手小指の付け根で押してるよ」という方も少なくありません。ローラー絡みのキーの使い方は、ほんと、結果オンリーだと思います。

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Written By: sax on 9月 26, 2018 No Comment

楽器って、思わぬミスで故障させてしまう場合が少なくありません。サックスもそのメカの複雑さゆえに、「やっちまった!」というケースが多々見られます。サックス奏者が練習や本番で遭遇しがちな小さな故障と、その対処法や簡易修理道具についてお話しします。
 冬場にセーターなどを着こんで、モコモコの状態でサックスを吹いていると、ちょっとした動作で服にサックスの針バネが引っかかってしまい、バネの外れを起こしたり、ひどい場合にはバネがあらぬ方向に曲がってしまう場合があります。針バネの修理には普通「バネ掛け工具」を使用します。バネ掛け工具はバネを引っ掛ける「カギ」と、バネを押す「Y字溝」を有する棒状の工具で、ネット等で入手することが出来ます。とはいえ私たちは専門のリペアマンではないので、立派な工具は宝の持ち腐れになるでしょう。バネ掛け工具の代替えとして、100均で入手できる「編み物用のかぎ針」が使えます。かぎ針には「バネを押すY字溝」はありませんが、バネを押すのは指でも鉛筆でも可能です。狭いところから針バネの先端を引っ掛け、バネ受けの溝にはめるのは、指等では難しい作業ですが、編み物用のかぎ針で充分専用工具の代用が可能です。バネの外れの場合だけでなく、パッドの閉まりが弱いとか、クローズキーの開きのスピードが遅いとか、バネの強さを調整したい場合にもかぎ針は役に立ちます。かぎ針の先端で該当箇所のバネを外し、バネをしごいて曲がり具合を調整し、かぎ針でモノの位置に戻す。こんな調整もかぎ針があれば簡単です。

 バネが折れたりバネ受けが欠けるという、致命的な故障が突如演奏中に発生する場合もあります。バネが無いので、故障個所はブラブラとなります。こんなときに活躍するのは「ゴム」。輪ゴムよりも女性が髪の毛に使用する「ヘアゴム」が使い勝手が良いでしょう。使い方は故障個所によってそれぞれですが、壊れたバネの替わりの「張力」が再現できるように、ゴムをパッドのアームに引っ掛けて、ぐるりと回してどこかに止めたり(パッドを開ける場合)、逆にパッドを押し付けるように、ゴムを管体に巻きつけたり(パッドを閉める場合)、とゴムは大活躍です。ちょっとメカニズムに関するセンスが必要ですが、上手くゴムで修理できれば、サックスは演奏可能な状態になります。基本は「引っ掛けて」、「巻きつける」ですが、余計な部分を「避ける」のもコツのひとつです。
 パッドを押さえるコルクやフェルトの調整が狂う故障もあります。これらは調整ネジの締め具合で高さ調整をします。右手人差し指キーとBisパッドの連携の調整コルクには小さめのマイナス時計ドライバー、ペル部のパッドの「開き具合」を決めるフェルトの高さ調整には大きめのマイナスドライバーかコインがあると便利です。このへんになると、故障個所を見つけるのにちょっとノウハウが必要かもしれません。

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Written By: sax on 9月 19, 2018 No Comment

サックススタンドは、かつては持ち替えの多い、ビッグバンドサックス奏者の専用の道具のような位置づけでしたが、今では多くのサックス奏者がスタンドを使っています。「サックスの置き方」としては最良と思われるサックススタンドですが、使用上の悩みも少なくありません。
 サックススタンドに関連した、一番多い事故は、「ずるっ、コテン」の落下事故です。スタンドへのサックスの収まりが悪く、重心が安定していないと、まずサックスがスタンドの上で「ずるっ」と回転します。U字型のベルレシーバーの中でサックスが回ると、ネックが下がり管体全体が傾きます。そしてスタンドから外れてサックスが床に落下したり、スタンドごと床に倒れます。通常右側に倒れるので、ネックジョイント近くの右側の一番背の高いポストが床に打ち付けられ、最悪の場合管体は凹み、ポストが歪んでシャフトが上手く動かなくなります。恐ろしい「ずるっ、コテン」です。これを防ぐには、U字型のベルレシーバーがしっかりとベルおよびサックス全体を支えるようにすることです。金属製のベルレシーバーなら、力づくでU字の開き具合を広げたり閉じたりすれば、ペルが安定する「開き」に調整することが出来ます。もしくはサックスのベルとの接触部に布やテープを巻くのも良いでしょう。布は柔らかく、適度な弾力が得られるので、サックスのスタンドへの着脱が無理なくおこなえます。テープ等のビニール系の加工は、ペルとレシーバーの間の滑りを無くし、しっかりと支えるようになりますが、サックスをスタンドから外すときに、スタンドから「外れ難い」場合がありますので注意が必要です。

 サックススタンドはベルレシーバーでベルの左右2か所、U字管近くのサックスの下部の1か所の、計3か所を支えることでサックスを安定して収納しますので、この3点を安定させるためにベルレシーバーを「調整」することは「得策」ではあります。が、しかし、サックスはキーメカニズムの構造により、重量バランスが管体中心に対し左右対称ではないので、垂直なスタンドではどうしても安定させられない場合があります。ですので、スタンドの構造上可能であれば、U字ベルレシーバーの「左右の腕を上下にねじる」のが最善の場合があります。サックススタンドがサックスを斜めにして収納するのが、実は一番安定したりするわけです。ただしこの加減はサックスの機種によっても、また取り付けたアクセサリー等によっても変わりますので、どうするのがベスト、というポイントは簡単に見つけられません。劇的な効果が得られる場合のある、裏ワザがひとつあるので紹介します。サックススタンドは多くの場合3本足ですが、そのうちの一本、右の足の下に厚さ1センチほどの雑誌を敷いて、サックススタンドをやや左に傾けます。すると、あら不思議。収まりの悪かったサックスがストンとスタンドの上に安定しています。ま、本当かうそか、自己責任でトライしてみてください。サックスを傷つけぬよう、実験はあくまでも慎重におこなってくださいね。

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Written By: sax on 9月 12, 2018 No Comment

サックスの運指の練習に「クロスフィンガリング」という課題があります。ファと右手中指ファ#、左手のシとド等の指の動きで、指が「順番」に開いて行ったり、閉じて行ったりするサックスの基本的な運指に対し、「指が交差する」という意味でクロスフィンガリングと呼ばれています。ま、普通よりちょっと難しい指の動きです。
 「クロスフィンガリングが滑らかにできません!」というお悩みに対しては、「練習あるのみ!」としか答えようがないのですが、「シ・ド・シ・ド・シ・ド・シ・ド」や「ファ・ファ#・ファ・ファ#・ファ・ファ#・ファ・ファ#」などと「単独クロス往復運指」の練習を繰り返す方が多いようです。この練習は「特殊な動きを指に覚え込ませる」という意味では間違いではないのですが、滑らかなフレーズを目指すには、前後の音を含めた「スケール上下の運指練習」をお勧めします。例えば下のラから真ん中のミまで半音のスケールで上下しましょう。シ♭を右手人差し指でやるかパームキーでやるかは自由ですが、このスケールは結構難しい指使いが出てきます。ミ♭→ミ→ミ♭なんて運指はなかなか手強いです。ラ・シ♭・シ・ド・ド#・レ・ミ♭・ミの8音を上がったり下がったり、均一なタイミングと音の長さで連続演奏するのは、とても良い練習になります。クロスフィンガリングの練習は、その運指を含めたブロックスケールで練習すると、より早く曲への応用が出来ると思います。

 「レ→ミ♭→ミ」や「ソ→ソ#→ラ」もクロスフィンガリングです。通常の生活では、小指はそんなに動かすことはありません。それゆえ、小指の絡んだフィンガリングは結構な難関となります。「小指」は意志によるコントロールの精度が他の指より劣りますので、小指がからんだクロスフィンガリングのスケール練習と合わせて、小指単独コントロールの練習をするのもお勧めです。手のひらを軽く開き、机の上に五本の指の先端を軽く接触させます。その状態で小指だけを左右に動かします。机に触ったまま左右に「スライド」させるのではなく、一旦浮かせて動かします。浮かす・右・浮かす・左・浮かす・右、という動きです。初めはゆっくりから、次第にテンポを上げていき、250くらいのテンポまでは楽々クリアできるようになりたいですね。
 サックスを演奏するための指の動きは、決して日常的な指の動きではありません。なので、少しでも長い時間サックスに触れ、サックスの運指を自分の身体に「日常」として覚え込ませることが重要です。またサックスの運指には多くの「替え指」がありますので、実際のフレーズの演奏を「どの運指でおこなうか」を検討することが出来ます。ちょっと考えただけで、劇的にフレーズの運指が楽になったりもします。また「奏者の意識」と「指」は密接に関係していますので、「難しくても苦手ではない運指」のようなものが人によってあるようです。死ぬほど練習したうえで、ちょっと考える。これがスムースな運指を実現する秘訣です。

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Written By: sax on 9月 5, 2018 No Comment

サックスは何故かうるさいとよく言われます。金管楽器にはミュートが使用できますが、サックスはその原理と構造上、高効率な弱音器は存在しません。いくつかの「サックス用ミュート」が製品化されていますが、トランペットのプラクティスミュート(練習用弱音器。他のミュートは音質を変える事が目的ですが、これは吹奏感を損なわずに、音を小さくすることが目的のミュートです)に比べたら、弱音の効果には雲泥の差があります。
 サックスは何故うるさいのでしょう。結論から言ってしまえば、発明者のアドルフ・サックスが「大きな音の楽器を作りたかった」からに他なりません。クラリネット等の木管楽器の高い操作性を持ち、金管楽器のダイナミックレンジの広さを兼ね備えた新しい楽器として、アドルフ・サックスはサックスいやサキソフォンを考え出したのです。彼の優れたアイデアによって、サックスは洗練された運指、発音の容易さでは、他の管楽器に類を見ない楽器となりました。ということで、「うるさい」という意味では宿命を背負ったサックスですが、ビッグバンドでも吹奏楽でも、「あ~!サックス隊、うるさい!」という言葉は聞いても、「ラッパ隊、うるさいよ。」というのはあまり聞きません。何故でしょう。その原因は、サックスが小さい音を出すのが難しい楽器だからです。

 金管楽器の音の源泉は奏者の唇です。自分の身体なので奏者は責任を持ってコントロールしています(かな?)。フルートの音の源はリッププレートの上に発生した空気の渦です。オーボエ等のダブルリード楽器のリードは細長いストローを潰したような形状です。で、サックスの音の源泉、リードの大きさはどうでしょう。大きいですね、広いですね。リードの面積はクラリネットも同様かもしれませんが、クラリネットとは本体の大きさや材質が違います。しかも管体が円錐状に広がっています。ね、サックスはどうやっても大きい音が出るんです。そして大きい音が出し易い分、小さい音が出し難いのです。アルトでもテナーでも、どんな種類のサックスでも、ピアニッシモの小さな音を出すにはかなりの技術が必要です。 「うるさいサックス隊」の原因が見えてきましたね。そう、彼らのほとんどは「下手なサックス隊」なのです(ごめんなさい!)。サックスの場合、小さな音が出せないという事は、楽器をコントロールできていないという事です。コントロールできていない音は、当然きれいな音にはなりません。だから音が大きく、汚い音で周りをイライラさせるのです。しかも注意されて気が付いても、彼らは小さい音を出すことが出来ません。それで余計周りをイラつかせます。そして、「サックスはうるさい」という「デマ」が広がるのです。
 サックス奏者は、ピアニッシモからフォルテッシモまでの音量のコントロールが出来るようになってから、人前で楽器を吹いたほうが良いのではないかと思います。それが「うるさい!」と言われないための秘訣です。うーん、分かっちゃいるけどキツイ結論ですね。(苦笑)

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Written By: sax on 8月 29, 2018 No Comment

楽器屋さんでも、またネットのあちこちでも、「初心者向けアルトサックスセット」とか「初心者に最適!お手頃サックス」等のキャッチコピーが溢れています。また、「初心者向けのマウスピースは何か良いですか?」や「初心者でも出来る練習方法を教えてください。」なんて質問も良く見ます。改めて、少し真剣に「初心者向け」とは何を指しているのかを考えてみました。
 「初心者向けサックスセット」というのは、誰もが想像できるように、サックスを始めたばかりのひとが、「サックスを吹く」という行為を続けるための楽器本体や、必要な小物をすべて取り揃えたものです。楽器本体にケース、マウスピースにリード、ストラップ、クリーニングクロス、掃除用スワブ、コルクグリス、吸水ペーパーあたりのセットが標準的でしょうか。どうせならサックススタンド、譜面台、電子メトロノーム、電子チューナー等も付属していたら完璧度が格段に上がりますね。あ、出来たら、「これを聴くべし!」なんて、歴史的サックス奏者の名前と音源(CD等)のリストなんかも付けてくれたら、初心者サックス奏者さんは、嬉しくて飛び上がるのではないでしょうか。この場合の「初心者」は、今までサックスに全く関係のない生活を送っていて、「さあ、これからサックス生活を始めるぞ」という人を指している訳ですね。多くの場合初心者セットは、比較的安価に供給されています。「これから一生、濃厚にサックスを吹き続けるための、スペシャル初心者セット」と銘打って、高級機種のサックスに人気のある周辺小物を揃え、マウスピースは数種類、リードなんかは数種でいくつもの番手のリードを付けたらどうでしょう。多分軽く百万円は超えると思いますが…。

 「初心者向け」という言葉は「標準的な」という意味でも使われるようです。マウスピースならセルマーのD、メイヤーの5M、オットーリンクの7*とかのティップオープニング、リードであればMIDIUMや2-1/2の「真ん中」の番手が初心者に勧められるようです。しかしこれらはあくまで「標準」であり、奏者の感覚や個性、個人的身体特性によって、いずれは多くのサックス奏者が標準を離れていきます。そう考えると、「まずは標準のセッティングで吹いてみて」というのは、必ずしも正しいとは言えないかもしれません。出来る事なら初心者であっても、色々なティップの広さのマウスピースを試し、かつ色々な硬さや個性のリードを試してみるのが良いと思います。リードは試奏が出来ませんし、マウスピースのバリエーションは無限ですので、現実的にはそう簡単なことではないんですけどね。
 この様に考えてみると、「初心者」には優れた「指導者」のアドバイスが必須であり、これからの彼・彼女のサックス人生を、楽しいものにさせるのも、上達の近道を歩ませるのも、その指導者次第という事を感じます。優れたサックスの指導者は、その生徒さんとしっかりと会話し、体格を観察し、練習環境を類推し、そのひとに最適な「サックスの始め方」を考えてくれるはずです。確かにサックスは、それだけ面倒臭い楽器です。サックスは管楽器の中でも、一番指導者との出会いが重要な楽器なのかもしれません。

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Written By: sax on 8月 22, 2018 No Comment

最近、楽器のサウンドの音質を表現する際に、「豊かな倍音を含んだリッチなサウンド」などと、「倍音」という単語が頻繁に登場するようになって来ました。うーん、倍音って何でしょう?
 サックスの場合、「倍音」という単語は二系統の意味があります。ひとつは楽器のコントロールの訓練である、オーバートーン・トレーニングで言うところの倍音です。オーバートーンを日本語訳すると「倍音」となります。最低音のシ♭の運指でオクターブ上のシ♭、ファ、シ♭、レ、ファ、ラ♭、シ♭の音を喉のコントロールで出します。最初の音が基音、オクターブ上のシ♭が第二倍音。それに続いて第三倍音から第八倍音です。これらの倍音を喉のコントロールで意図的に鳴らすオーバートーンのトレーニングをすることは、幅広い音色を自分でコントロールすることへ繋がる重要な練習です。もう一つの倍音は、音の音質を作り出す「高調波」です。音は正弦波(サインカーブ)で解析できますが、基音だけの単純な音は音叉の音です。音叉の音にはほとんど倍音が含まれていません。これに対し、すべての楽器はそれぞれの個性ある倍音を含んだ複雑な波形の音を持っており、その楽器の音色、サウンドを生み出しています。オーバートーンでは第二倍音、第三倍音と整数の倍音しか扱いませんでしたが、楽器の構造によっては1.5倍音等、整数倍で無い倍音も混ざっています。

 音叉は「倍音を徹底的に抑制した楽器」です。通常は、どんな音も倍音を含む、というのが物理の法則です。さきほどのオーバートーンの話しに戻ると、「楽器が本来持っている基音と倍音を意図的に引っ張り出す」というのが練習の実際です。音響心理学的な研究では、偶数倍音は「精神的安らぎや安定」の効果があり、奇数倍音は「明瞭度の向上」の特性を持っていると言われています。クラリネットは円筒形の閉管構造であるため、主に奇数倍の倍音を多く含むため、シンプルで明瞭度の高い音色を持っています。サックスは管が円錐形であるため、偶数倍の倍音が豊富です。このため、サックスはフルートやクラリネットより倍音成分が複雑で、音色も複雑になっています。そう、倍音の種類や配分量でその楽器のサウンドが決まる訳です。
 整数倍の倍音は、音階の範囲内に入っていますので、基音に対してハーモニー(和音)の効果を発揮します。従って、整数倍の倍音が多い楽器のサウンドはとても音楽的です。逆に非整数倍の倍音は、いわゆるノイズになります。スネアドラムやシンバルなどの打楽器は非整数倍音が優位なため、基音の音程感が希薄です。同じ打楽器でもティンパニーは整数倍音が多いため、しっかりとした音程感を持っています。倍音は、料理で例えるならば、調味料やスパイスかもしれません。その量やバランスで、様々な味の料理、サウンドが作り出されます。そう、倍音を制する者がサウンドを制するのです。

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Written By: sax on 8月 15, 2018 No Comment

サックスに限らず、管楽器の演奏には腹式呼吸は不可欠だと言われています。しかし、「正しい腹式呼吸」やら「腹式呼吸のコツ」等の情報を見るたびに、「ん?」という思いが出て来ます。腹式呼吸について、突っ込んで突っ込んで考えてみましょう。
 管楽器の演奏に必要なのは、「瞬時に大量の空気を肺に取り入れ」、「繊細にコントロールしながら息として出す」事です。腹式呼吸をしなくても、このような「吸気と呼気」が出来れば、方法に束縛される必要は無いかもしれません。腹式呼吸に対して、胸式呼吸があります。これは、多くの人が無意識におこなっていると言われている呼吸法で、肋骨を持ち上げつつ左右に開き、胸郭(胸をとりまく骨格)を前後左右に拡大させ、これによって肺を膨らませて息を吸い込み、逆に肋骨を閉じて息を吐く、というものです。腹式呼吸はご存知のように、横隔膜を下に下げ、胸郭がそれによって上下に拡大することで外気を取り込み、息を吐くときには横隔膜を弛緩させ、胸郭を狭くすることで息を吐き出す、というものです。ヨガや瞑想系の呼吸法では、筋肉の使用部分や意識の集中法が異なる両者は、全く別の呼吸法とされています。しかしそれは、呼吸法そのものが目的であり、呼吸の過程を重要視しているからです。管楽器奏者のように、「息の出入りを思いのままにコントロールしたい」わけではないのです。そう、我々サックス奏者にとって腹式呼吸と胸式呼吸の違いは、考えようによっては「どうでも良い」のかもしれません。

 意外と忘れがちな事ですが、「横隔膜」は胃より上にあります。みぞおちのあたり、一番下の肋骨に沿って水平に広がり、腹腔と胸腔を分けています。胴体のかなり上の、この位置を意識して力を入れてみてください。無理ですよね。筋肉無いですから。横隔膜を下げるには、腹筋と背筋に力を入れます。管楽器用の腹式呼吸で「腹筋と背筋を使いなさい」と言われるのは、息を吐くときもこの筋肉で、息の量やスピードをコントロールするからです。ここで一考です。横隔膜を下げながら、肋骨を持ち上げ、かつ左右に開いたらどうでしょう。腹式呼吸と胸式呼吸の合わせ技です。横隔膜と胸郭全体を意識しながら、ゆっくりで良いのでやってみてください。もの凄く胸郭が広がり、肺が目いっぱいに広がっている感覚がありませんか?
 サックスの呼吸法には「目的」があります。目的を達成できれば、手段にこだわる必要はあるでしょうか。いわゆる「腹式呼吸」は、「管楽器の理想的な呼吸に一番近い方法」であることは間違いありませんが、言葉に惑わされ過ぎて、目的を逸しては本末転倒です。瞬時に大量の空気を肺に取り入れ、最良のサウンドを作り出すために、繊細にコントロールされた息を吐く。そのためには、あなたの身体がどう動けばよいのかを、もう一度、いや定期的にチェックしてみたらいかがでしょうか。

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Written By: sax on 8月 8, 2018 No Comment

ブラスバンドやクラッシック系のサックス奏者の方々には無縁かもしれませんが、ジャズやポップス系の音楽をやってると、必ず出くわすのがバンド用語です。もの凄くアホらしいものから、音楽的なものまで、数ある音楽業界用語の中からいくつかご紹介します。ほとんどが戦後まもなくの、「スイングバンド全盛時代」からのものなので、まあ、「化石級」ですね。
 数字を「ツェー」「デエー」「イー」「エフ」という音階のドイツ読みで言う方々がいます。 「デーまんゲーせん」は、2万5千円、「イーせん通し」は、飲み会で一人3千円の割り勘ですね。同様な有名どころでは、「バンドマンの逆読み言葉」があります。「しーすー(寿司)」、「しーめ(飯)」、「るーびー(ビール)」あたりは分かりますが、「きがしゃ(楽器+車=楽器運搬車)」とか「ちーた(立ち→立奏)」なんて、初めて聞いたら意味不明な単語もあります。「あいばん(ステージで交代しながら演奏する相手バンド)」、「トラ(エキストラ→代役)」、「ぱつら(ラッパ→トランペット)」あたりは、かなりややこしいです。何となく意味は分かるが、何故そうなったか分からないバンド用語に、「はこ(ライブハウスやコンサートホール)」、「返し(ステージ用モニタースピーカー)」、「どんかま(リズムマシン)」、「インペグ屋(アーティストの録音やコンサートの伴奏、テレビ番組や映画のBGM、劇場公演のオーケストラピットでの演奏等にミュージシャンを斡旋する業者)」などがあります。

 ビッグバンド業界にも、知らない人には分からない業界用語が沢山あります。バンド用語と言うよりも、ビッグバンド用語とも呼べる音楽的な隠語です。まずは、「ソリ」。同じ種類の楽器の合奏をこう言います。サックスソリは多くのアレンジで多用されており、ペイシー楽団のIn a Mellow Toneなど、名作と呼ばれる有名なサックスソリも沢山あります。サックスソリを演奏する場合は、普通サックスセクションは立ち上がって演奏します。これが「ちーた(立奏)」ですね。管楽器全員が一緒に吹き散らす(?)のを「トュッティ」と言います。イタリア語の音楽用語で、全部という意味で、「ソロ」の対義語です。「124小節目の3拍目からの8分4個はイーブンでね」と言われたら、ここの8分音符はスイングしないで、同じ長さの普通の8分音符の長さで演奏します。「言い分」と聞き間違えないでくださいね。「じゃ、一回「べ夕」で通そうか」と言われたら、曲を始めから終わりまで通すのですが、全てのリピートを省略して演奏します。本番前の音合わせ等で、時間や体力を節約する演奏です。「コーダ・コーダ」なんていう、コーダマークが出たらすぐにエンディングコーダに飛ぶ、中抜き演奏もあります。「ここは場ソロで」と言われたら、センターマイクへ出ずに、自分の場所でソロを取ります。こんな業界用語、知らなかったら分からないですよね。ま、知らなくても問題ないと思いますが。

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Written By: sax on 8月 1, 2018 No Comment

中級クラスのサックス奏者の方ですら、いまひとつはっきりとした指針を持っていないのが、「いつ、リードを捨てるか」です。天然ケーン(アシ)のリードは消耗品です。必ずいつかは寿命が来ます。死んだりードをマウスピースに付けて本番のステージに…なんて、考えただけでも恐ろしい状況です。A型のおうし座の私の場合の、女性…いや、リードとの別れ方をお話ししますので、少しでもご参考になれば幸いです。
 リードの寿命は?と聞かれたら、1週間のモノもあれば6か月のモノもある、と答えます。実際に恐ろしく長寿なリードは存在しますし、感覚的には使用リードの30%ほどは「長寿」な感じです。ただしこれも、「ローテーション」あっての話しです。そう、特定のリードを1枚だけ、ずっと使い続けるというサックス奏者はまずいません。4から6枚程度の複数のリードを使い回すのが、一般的なリードの使用法でしょう。ローテーションメンバーのなかで「ダメ」になったリードは廃棄し、その代わりに新しいリードを補給する。その繰り返しで、常に「良いリードを確保しておく」のが一般的なリード管理です。

 さて、どんなに風になったリードが、廃棄すべき「死んだリード」でしょうか。私の場合はまず「年齢」を考慮します。仕込みを終えて、そのリードを実戦投入したした日付、そして鳴りのレベル(三ツ星:激鳴り、二つ星:普通、一つ星:様子見)をリード1枚毎に記入しています。「3/6…」と書いてあったら、3月6日に使い始めた、とても良く鳴るリードです。そのリードを吹いていて、「ん?4か月?寿命だな」、として廃棄します。吹いていて、そのリードが寿命ではないかと感じる、「ん?」のポイントはどこかというと、「息の変化にリードの反応が付いて来ない」、「大きい音が出せない」、「小さな音が安定しない」、「リードミスが頻繁に出る」、「音が曇って来た」、等々です。吹奏感や出てくるサウンドに加え。「先端を押すと、リード振動部全体がしならずに、先端だけがクネッと曲がる」、「リードの先端が不規則にうねっている」、「リードが平たくなく、ねじれている」、等の物理的な状態も「ダメ基準」となります。
 ダメになり始めたリードにきっぱりと別れを告げられるのは、自分のサウンドをシビアに管理しているプロのサックス奏者達です。優柔不断で貧乏な、我々アマチュアサックス奏者達は、未練たらたらと判断を延ばし、どうしようもない状態までリードを使い続ける事がほとんどでしょう。しかし瀕死のリードを使って練習をしても、何ひとつ良いことはありません。アンブシャにも不自然さが出てきますし、奏法にも無理な力が入るでしょう。「ん?」と感じて、「ダメかな」と思ったら、潔くそのリードの先端を指で割りましょう。「今までありがとう。さようなら」と心の中で呟きながら…。ダメになったリードの使い道?そんなものは有りません。ただの燃えるゴミです。

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