Written By: sax on 4月 17, 2019 No Comment

アルトサックスなら安いもので5、6万円、標準価格帯で20万から40万円、文句無しのプロモデルなら50万から100万円あたりと、サックスの価格は本当にピンキリの幅が大きいです。この価格差は楽器設計の形態や製造方法、材料、検品・調整の方法、品質管理の体制など、とても複雑な要因の積み上げから発生しているとは推察されますが、果たしてその価格差が、ダイレクトに演奏者のための品質の差になっているかは意見が分かれるところでしょう。今日はその価格差の一つの要素、「部品の質」について考えてみましょう。
 まずは「ばね」。サックスにはニードルスプリングと呼ばれる針状のバネが、全体で数十本使われています。ニードルスプリングは、サックスの操作性や機能を支える、非常に重要な部品です。ステンレスや鋼鉄、炭素鋼等で作られており、たかが「ばね」ですが、高性能なほど高価です。安価なサックスには銀色のステンレスばねが使われていることが多いようですが、高価なモデルには硬鋼線を低温焼き鈍し(テンパー処理)した、青みがかった黒色のばねが使われています。このばねは焼き鈍し処理によって独特の青みが出るため、ブルースプリングとも呼ばれ、均一で強い弾性とへたり難い耐久性が特徴です。質の高いニードルスプリングは、小さなたわみでもしっかりとした反発弾性を持つため、繊細で応答性の良いサックスの操作が実現します。

 次に気になるのがパッド(タンポ)の品質です。サックスのタンポの構造は、基本的に台紙と呼ばれる丸い紙に、中綿となるフェルト、これを包み込みこむように皮が張られ、プラスチックや金属のリゾネーター(ブースター)と呼ばれる円盤状の板でそれらを止めています。皮には合成皮革、羊やカンガルーの天然皮革等が使われ、ほとんどの場合防水加工されています。高価なパッドはきめの細かい柔らかな皮で、トーンホールの密閉性を高めます。またリゾネーターには、プラスチック、メタル等の材質のバリエーションとともに、形状のバリエーションもありますので、メーカーや奏者のサウンドヘの意向に応じた、様々な仕様のパッドがあります。ピゾーニ、シャヌー、ミュージック・メディック、ヤマハ等がパッドブランドとして有名です。パッドはあくまで消耗品ですが、低品質なものは早期に硬化して密閉性が劣化したり、破損したりします。高価なパッドは比較的長持ちしますので、結果として経済的とも言えます。
 コルクもサックスの重要な部品の一つです。コルクは地中海性気候を好むコルクガシという植物の樹皮です。自然材ですので採取する樹木の生育状態、また採取時期によってその品質は大きく変わります。適切な条件の下で採取されていないコルクは、そのクッション性にムラがあり、曲げるとすぐに割れてしまうという、サックスの部品としては適当でないものも少なくありません。節が多く、明らかに断層があるのがそんなコルクです。また細かいコルクのフレークを高圧で固めた圧縮コルクというものもあります。これもサックスの部品としては不向きです。最近では化学樹脂で作られた合成コルクもサックスの部品として使われている場合もあるようです。「部品うんちく」でした。

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Written By: sax on 4月 10, 2019 No Comment

偉人と呼ぶにはあまりに若いかもしれませんが、日本ジャズ界の歴史に残るサックス奏者だと確信しています。その人の名は寺久保エレナ、1992年4月30日北海道札幌生まれの26歳のアルトサックス奏者です。ついこのあいだ、高校を卒業してバークリー音楽院に入学したと思っていたら、いつの間にかこんなに大人になっていました。
 ニューヨーク在住のジャズサックス奏者、寺久保エレナの音楽人生は「神童」から始まりました。19歳のときM&M’s(チョコレート)のサックスを持ってる人形をもらって、それがカッコいいな~と思い、それで両親がジャズのライブに連れて行ってくれて、そこからジャズとサックスにハマリました」、とサックスとの人生を早くにスタートしました。12歳で地元札幌のSJFジュニアジャズオーケストラに入団。中学生のときにピアノの山下洋輔に見い出され、新宿ピットインで共演。17歳でボストンバークリー音楽院サマープログラム「Jazz Work Shop」に選抜され5週間のボストンでのキャンプに参力。その翌年にはなんとキングレコードからアルバム「NORTH BIRD」でメジャーデビュー。ピアノに帝王ケニー・バロン、ベースはクリスチャン・マクブライド、ギターにピーター・バーンスタイン、ドラムはリー・ピアソンという最強のリズム隊の共演でニューヨークにて録音。このときはまだ高校3年生です。同年に東京JAZZ 2010で、ロン・カーター(b)、オマー・ハキム(ds)、ウィル・ボウルウェア(pf)と共演。高校卒業直後の2011年6月にはケニー・バロン、ロン・カーターらを迎えた2ndアルバム「New York Attitude」をリリースし、その年の9月、バークリー音楽院に日本人初のプレジデンシャルスカラーシップ生として入学。なんと授業料も寮費も全部免除の特待生です。バークリー在学中に、2012年にはプレイボーイ・ジャズフェスティバル、モンタレー・ジャズフェスティバル、ボストンでのビーンタウン・ジャズフェスティバル等に出演し、その年「New York Attitude」をリリースし、北米デビューを果たしました。2013年(21歳)にはもう自己のカルテットでブルーノート東京に出演と、学生時代からとんでもない活躍ぶりです。バークリー卒業後は拠点をニューヨークに移し、世界中で活躍し、2018年には5枚目のアルバム「リトル・ガール・パワー」をリリースしています。

 寺久保エレナは早熟なだけではありません。日本人には稀な、卓越したグルーヴ感を有し、バラードから撃速テーマまで、バップからファンクまで、あらゆる形の音楽で、「自分のサウンド」を存在させ続けることの出来る、唯一無二の個性を持ったサックス奏者です。彼女は現在セルマー社と契約し、同社のリファレンスモデルを使用していますが、小さい頃のヤマハやその後のヴィンテージマークⅥ時代と、ほとんど音が変わっていない感じすらします。雑誌のインタビューに、「新しい音楽は、新しい楽器でやるほうが向いてる気がする。」と答えています。どんな楽器でも、彼女の切れ味の良い、芯のあるサウンドは、まさに彼女だけの「オンリーワン」のサウンドのだと思います。

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Written By: sax on 4月 3, 2019 No Comment

最近のサックスケースは、スリーウェイという、手持ち・肩掛け・リュック背負いの3種類の「持ち方」が出来るものが多いようです。PROTEC製のケースシリーズでは、「バックパックストラップ」という別売のアタッチメントが有り、そのアタッチメントを追加購入すれば、ケースが背負えるように変身します。とはいえ管楽器の基本ケースである箱型ケース、セルマーの超軽量パックケース、フライトケース、SKB、Walt Johnson、Winter等のメーカーのシリーズには、背負えるようになっていないものもあります。肩掛けケースをたすき掛けに背負って両手を開ける、というサックス奏者もよく見かけますが、これも軽量のアルトまででしょう。サックスケースをリュックのように背負って、安定した状態で両手が空くのは魅力的です。また重量のあるサックスケースでも、両肩と背中で重量を受け止めれば、かなりの重さでも苦にならずに移動できます。「自分のケースを背負いたい、でも出来ない」、という悩めるサックス奏者に秘密の情報(?)をお教えします。

 楽器の関連製品や付属品は、その楽器の「使用人口」が多いほど多種多様で安価なものが出回っています。世界中で一番演奏者が多い楽器、「ギター」の世界に救世主がいました。「ケースサドル」とか「ケースポーター」と呼ばれる製品です。アコースティックギターのハードケースは「丈夫で重い」の典型です。しかしとんでもない金額のブツも少なくない「ギター」という楽器の世界では、「軽い?持ち易い?いやいや、重くても持ち難くても結構。丈夫が一番!」というプレーヤーが少なくありません。そんな重くて丈夫なケースを、なんとか楽に運びたいと考え出されたのが「ケースサドル」です。サドルとは馬の鞍のことですが、鞍のようにギターケースに縛り付けて固定します。ギターケースの首の部分を締めるようにベルトを巻き付け、ケースの下の部分は相撲のまわし(ふんどし)のようにT形のベルトで固定します。そうしてギターケースに固定された「鞍」には、リュック用のショルダーベルトが二本生えている。幅広のナイロンベルトと、よく考えられたバックルによって、固定した後はぴったり密着しズレることはありません。取り付けられたギターケースを正面から見ると、「むち打ち症のお相撲さん」と見えなくもありませんが、ごついギターケースがこれで背負えるようになったのですから、文句は無いでしょう。このアタッチメントはギター業界では普通に知られた製品のようです。
 なんとサックスケースにもこの「ケースサドル」は使えます。要は「首」と「お尻」があれば、すべてのケースにケースサドルは取り付けられます。ベルトは伸縮自在だし、取り付け時の締め込みも特性バックルでばっちりです。バックルにセーフティボタンが付いていて、バックル部が不用意にどこかにあたっても、決してバックルが外れないようになっています。箱型ケースならアルトサックスからバリトンまで使えそうです。フライトケースのようなパック型サックスケースや、Winterのバリトンケース等にも結構上手く取り付け出来ます。検討する価値はあると思います。

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Written By: sax on 3月 27, 2019 No Comment

身長170センチという小柄にもかかわらず、テナーらしい野太い音で、超絶スピードのフレーズをブロウすることから付いた愛称は「リトル・ジャイアント」でした。そう、あのジョニー・グリフィンです。1928年4月24日、イリノイ州シカゴ生まれのテナー奏者ジョニー・グリフィンは、1945年頃からライオネル・ハンプトンの楽団などで活動し、以降セロニアス・モンク、アート・ブレイキー、ウェス・モンゴメリー等、多くのミュージシャンらと共演しています。1957年に同じテナーサックスプレイヤーのジョン・コルトレーン、ハンク・モブレーと共演した「ア・ブローイング・セッション」をブルーノートからリリースし、テナーサックスのヒーローたちの歴史的なセッションとして伝説のアルバムとなっています。テナー3本にトランペットのリー・モーガンまで加わっているという豪華仕様で、御大アート・ブレイキーがドラムスで「にらみ」を効かしています。グリフィンは超絶技巧で激速フレーズを連発し、モブレーは渋い音で歌い上げ、コルトレーンは先進的なモダンフレーズで我が道を行っています。変幻自在にテナーサックスをブロウし、繊細にバラードを奏で、パッセージを世界最速で吹く小さな巨人は、ジャズ界で多くの支持を受けました。リバーサイドはもとより、ブルーノート、プレスティッジと、ジャズの三大レーベルでアルバムを吹き込んだ怪物はジョニー・グリフィンだけだと言われています。1963年にフランスヘ移住し、活動の場をヨーロッパに移しました。60、70年代はアメリカのジャズミュージシャンがヨーロッパに遠征する際には、こぞってサックスにはジョニー・グリフィンを、と指名したそうです。そんなヨーロッパでの活動の中で特筆すべきは、ケニークラーク・フランシーボランビッグバンドヘの参加です。ベルギー生まれの名ピアニスト兼アレンジャー、フランシー・ボランのアレンジによる重厚なサウンドの源泉には、テナーが3本、2ドラムという特殊な編成に加え、グリフィンの縦横無尽なソロワークも大きく貢献しています。

 ジョニー・グリフィンは典型的なハードバップ時代の「ホンカー」です。テキサス・テナーやブロー・テナーと呼ばれるこのスタイルのテナー奏者の音は、とにかく「でかく太い」です。ジョニー・グリフィンはオットーリンクのスーパートーンマスターとトーンマスターのメタルマウスピースを使用していましたが、そのティップオープニングはホンカー独特の「超ワイド」で、ボアも大きくえぐれていたようです。かつてドレイク(Drake)ブランドから、彼の使用したスーパートーンマスターを基にした「ジョニー・グリフィンモデル」が発売されていましたが、吹きこなせるプレーヤーは少なかったようです。
 ジョニー・グリフィンは大の日本好きで、たびたび日本を訪れています。日本のジョニー・グリフィンのファンの中で、「新幹線でジョニー・グリフィンと一緒になった」とか、「浅草でジョニー・グリフィンと立ち話した」などという話しはよく耳にします。2008年7月25日、ジョニー・グリフィンはパリの自宅で80歳で亡くなりました。彼の死をもって「ハード・バップ時代の終焉」、と言うジャズファンは少なくありません。

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Written By: sax on 3月 20, 2019 No Comment

ネットオークションやネットフリマでは、「ジャンク」と銘打ったサックスが多数出品されています。確かにあっちこっちの部品が欠落し、管体も朽ち果てそうなサビだらけの、「まじジャンク」も少なくありませんが、意外と程度の良い、「直したら吹けるんじゃない?」というサックスも見受けられます。うまくいけば一万円前後でテナーサックスやアルトサックスが手に入ります。職場での昼休み練習用の「置きサックス」のためにもう一本、なんて「有り」だと思いませんか。
 ネットオークションやネットフリマの「ジャンク」サックスを見ていくと、本当に年代物の朽ち果てたサックスと、ほとんど使わずに遺棄されていたと思われる廉価版サックスのジャンクの二種に分けられます。錆にまみれた「まじジャンク」を再生することは相当な技術を要しますが、凹みや歪み、些細な故障で見捨てられた入門用廉価版サックス、とくにアルトサックスは再生の可能性が大です。ある程度サックスの機構に対する知識があれば、自力での修理は不可能ではありません。アルトは、とあえて言ったのは、テナーサックスの場合はネックの曲がりや、自重が重いためシャフトや管体へのダメージが大きいので、安物買いの銭失いになる可能性が比較的高いからです。

 「まともに音が出ないジャンク」の原因にはいくつかあります。「ネックが本体にはまらない」、「オクターブキーが動かない」、「パッドが欠損」、「部品の歪みや破損」等です。ネックが本体にはまらないのは一見歪みと考えがちですが、「円」というのは意外に歪みに強く、多くの原因は接続部(ソケットとレシーバー)の汚れです。シンナーやジッポオイルを付けた布でネックソケットや本体のレシーバー部をひたすら擦ると、あら不思議、スコンとネックがはまります。オクターブキーの故障は、ほとんどの場合オクターブキー連結機構の「曲がり」です。サックス本体から飛び出たオクターブ連結棒は、ちょっとの衝撃で曲がってしまいます。ラジオペンチやプライヤーを使って、曲がりを強引に修正すればOKです。その際、折れないようにゆっくりと、かつ傷つかないよう当て布をして、を守ってください。ネック側のオクターブキーの円弧の修正が必要な場合もあります。右手人差し指のキーとBis(シ♭)キーの連結機構の小さなコルクが無くなってしまっているだけで、「シの♭が出ない」となっている場合があります。使用中の高級サックスですらこの部分での故障は少なくありません。この機構は調整ネジの押し込み、調整ネジの先端、それを受けるレバーのコルクで構成されています。ネジの頭を塩ビチューブで延長したり、レバーに薄くコルクを貼つたりするだけで治ります。
 パッドの欠損はパッドを入手する必要があります。トーンホールの凹みや歪みは特殊治具が無ければ直せません。シャフトの固着も難題です。でも一万円前後でセカンド楽器が手に入れば…。魅力的ですよね。賭けてみますか?

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Written By: sax on 3月 13, 2019 No Comment

ソプラノサックス奏者にありがちな顔を下に向けた吹き方ではなく、ストレートのマークⅥソプラノサックスをほぼ水平に構えているので顔はいつも正面向き。更にマウスピースを口に斜めに挿して、サックスが顔に被るのを防いでいるので、演奏中もその端正な顔立ちが100%クリアに露出される。そう、ソバージュヘアのイケメンソプラノサックス奏者、ケニー・Gです。
 ソプラノサックスと言えばケニー・Gという今日この頃。「いやソプラノといえば『マルサの女』の本田俊之だ」、とか、「ソプラノ奏者の第一人者はやっぱシドニー・ベシェでしょ」、という方々も少なくないとは思いますが、今や圧倒的な支持率のソプラノサックス奏者はケニー・Gだと思います。本名ケニース・ゴアリック(Kenneth Gorelick)、1956年アメリカのワシントン州シアトルに生まれ、17歳でバリー・ホワイトのバックバンド「ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ」に参加してプロ活動を開始、1982年にアリスタ・レコードからケニー・G名義でソロデビューしています。1992年にはアルバム「ブレスレス」が全米2位を記録し、そこに収録されている「フォーエヴァー・ィン・ラヴ」は1994年に第36回グラミー賞で最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞しています。ケニー・Gの音楽ジャンルを「スムース・ジャズ」と定義づけ、彼をその推進者と評する一方で、「彼の音楽はジャズに非ず」というジャズやフュージョン界からの批判もあるようですが、要は「ケニー・Gの音楽」という自身の独特の世界観を持っている、個性的なサックス奏者であることには間違いないでしょう。セルマーマークⅥソプラノサックス独特の甘いサウンドで歌い上げる、ポップス感に富んだ美しいメロディは、音楽のジャンルを超えて多くの人々の支持を受けています。

 使用楽器はソプラノに加えてアルトとテナーもセルマーマークVIの前期から中期のヴィンテージです。ソプラノにはデュコフのマウスピースにロブナーのリガチャーという、「硬質だがソフトなサウンド」にこだわったセッティングで使用しています。セルマーマークVIのストレートソプラノサックスは現代のソプラノに比べてかなり軽量で、ストラップリングも有りません。それゆえにケニー・G独特の、サックスを前方に突き出した奏法が可能になります。現代の重いソプラノをこの姿勢で吹いたら、一曲で右手親指を痛めてしまうか腕がパンパンになると思います。マークVIのソプラノは、トーンホールがほぼ直線に並んだ「インライントーンホール」が特徴で、そのため左手小指のテーブルキーは「右側に押し込む」構造になっています。このメカだからこそ出るサウンドがあり、かつて中国のサックスメーカーがケニー・Gの監修でインライントーンホールのケニー・Gモデルのソプラノサックスを発売し話題となりました。ケニー・G自身が、コンサートで客にそのサックスをプレゼントするという企画も実施したりして一時期人気になりましたが、今ではほとんど流通していないようです。ケニー・Gはビジネスマンとしてもかなり優秀だそうですが、この企画は計画通りにいかなかったのかもしれません。

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Written By: sax on 3月 6, 2019 No Comment

キータッチとはキーを操作する際の指先で感じる感覚のことです。タイプライターのキータッチや鍵盤楽器のキータッチは、その性能の良し悪しの判断基準のひとつになります。サックスの個体の評価の中でも、キータッチの軽さについて言及する場合があります。「羽のような軽いキータッチで、速いフレーズも苦労無く演奏できる。」など等と…。サックスのキータッチは本当に「軽いほうが良い」のでしょうか。
 ピアノの場合は、奏者がピアノのキーを打鍵することによって、指の力が鍵盤に伝わり、この力が機構上ハンマーに伝わります。その動作で慣性力を得たハンマーの頭部が弦を瞬間的に打ち、弦が発音し、これによる音波が音として人の耳に聞こえるわけです。キータッチがハンマーの速度や弦を打つ強さに影響するため、ピアニストは「キータッチ」についてとても敏感です。ピアノのキータッチは奏者が楽器と一体になるための、非常に重要な要素です。しかしサックスという楽器の場合、キーでおこなう操作は、「トーンホールという穴を塞ぐか開けるか」です。音を出しながらパッドをゆっくり開けたり閉めたりすることで、音の高さに変化を付ける「キーベント」という高等テクニックはありますが、サックスのキー操作は基本的に、「開ける」か「閉める」かのオンかオフ、そう「デジタル」な操作に他なりません。確かにキータッチが軽ければ、速くトーンホールを開めることが出来るかもしれません。しかしキーが軽く閉まるという事は、キーを開いているバネが緩いという事になり、キーが開こうとする力が弱いという事になります。C♯、D♯、G♯以外のキーは、奏者が指の力を緩めることで、バネの力でパッドが開きます。このバネが緩ければ、キーの開く速度も遅くなってしまいます。

 結論から言ってしまえば、サックスの場合のキーのフェザータッチは、必ずしも「良い事」だとは言えません。もちろん調整やメカニズム、材料の工夫で「キータッチを軽く感じさせる事」を実現したサックスは沢山あります。しかしそのようなサックスの場合も、トーンホールをしっかり閉めた状態に保つ為には、指にある程度の力を入れておかねばなりません。音の振動エネルギーで、サックスの中の空気は外側に出ようとしますので、キーを閉じた指の力でそれを「押さえ付ける」訳です。サックスという楽器のキーの機能は、ピアノ等のキーとは全く違います。フェザータッチでパラパラと軽やかに操作できるのが良いサックスだと勘違いされる方も多いようですが、本来サックスという楽器のキーはフェザータッチで済む様な代物ではありません。指に力を入れて瞬時にパッドを塞ぎ、その状態で押さえ付け、指の力を緩めれば、楽器の強いバネの力で瞬時にキーが開く…。それがサックスのキーアクションです。サックスの運指にはスピードだけでなく、ある程度のパワーも必要なのです。

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Written By: sax on 2月 27, 2019 No Comment

サックスの重さは、ソプラノで1.4kg、アルトは2.6kg、テナーは3.6kg、バリトンは6.5kgくらいです。材質によってもちろん重さは変わりますが、一般的なサックスはこの重さのほとんどが管体やキー構造の素材「真鍮」の重さです。シャフトとポストをつなぐ部分等のネジには鋼が使われていますが、まあこれも金属です。そしてサックス素材の超マイナーチームがフェルトとコルクです。フェルトはカップなどの可動部の当り防止や開き調整に使われていますが、もうひとつの素材「コルク」はサックスの色々な部分で、多様な使い方をされています。
 サックスにとって一番大事なコルク、「運搬時固定用コルク」はあまり皆さんの目に触れないかもしれません。サックスが工場から出荷される際、輸送中の振動でキーが動いて、調整が狂ってしまうのを防ぐため、カップやキーにクサビ形のコルクを挟んで、可動部が動かないように固定します。これが「運搬時固定用コルク」です。このコルクによって、サックスは輸送時、すべてのトーンホールカップは閉じて固定された状態になっています。両手の8本の指を使ってキーを塞ぎ、最低音のB♭の音を出すときの状態です。

 コルクのもうひとつの役割は「当たり止め兼高さ調整」です。フェルトは金属の間に入って、それらが衝突して音を出すのを防ぐだけですが、クッション性に加えて軽く、ある程度の強度があるコルクは、その高さでキーの開き具合の調整にも使用されます。パームキーには無くてはならない存在で、ここのコルクが外れると、金属が当たってガシャガシャ音が出るだけでなく、キーが開き過ぎて音程が低くなってしまいます。パームキーのコルクが外れた時に、適当な大きさにワインのコルク等を切り刻んで、接着剤で張り付けるサックス奏者が少なくありませんが、キーの開きも調整しないと悲惨な音程になります。素人修理はお勧めしません。
 サックスコルクの花形(?)といえばネックコルクでしょう。ネックの先端でマウスピースを受け止め、息漏れさせずにマウスピースのエネルギーをサックス本体に伝達する、大事な役割のコルクです。雑に取り付けると、ネックとコルクの間に隙間が出来てサウンドの輪郭が甘くなったり、マウスピースがグラグラ動いてアンブシャが安定しなかったりと、ろくなことがありません。またネックコルクには、強度もクッション性も高い上質な天然コルクを使う事も大事です。コースターやピンナップボードに使われている、コルク材を粉砕&圧縮成型した圧縮コルクは、弾性、強度、気密性等、あらゆる面でサックス用には向いていません。同じような理由で、パームキーのコルクも圧縮コルクは不向きです。押さえた時の感覚に雲泥の差が出ます。天然コルクでも粗悪なものは経年劣化か激しいので要注意です。

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Written By: sax on 2月 20, 2019 No Comment

ポール・デスモンドは1924年、ポール・エミル・ブレイトンフェルドとして米国サンフランシスコに生まれました。12歳でクラリネットを始め、後にサックスに転向。19歳にしてプロデビューし、ウェストコースト・ジャズを代表するサックス奏者、作曲家となりました。彼が21歳になったとき、皆に知られるポール・デスモンドに名を変えました。その理由について本人は、「名の響きからアイリッシュ系であることを取り沙汰されるのが嫌だった」、と述べていますが、友人らの証言では諸説入り乱れており、真実はポールの胸の中、という事になっているようです。
 ポール・デスモンドについてはデイヴ・ブルーベック抜きでは語れないでしょう。ポールは1946年、ジャズ・ピアニストのデイヴ・ブルーベックのバンドに参加しました。1967年に至るまで、このバンドで多くのアルバムを発表しますが、特にアルバム「Time Out(1959年)」に収録された、ポールが作曲した5拍子の楽曲「テイク・ファイブ」が評判となり、世界中で大ヒットしました。そう、誰もが知っている、あの「テイク・ファイブ」です。実際にはポールとデイヴがアイデアを出し合って作った曲と言われていますが、あえてデイヴがポールに作曲者としてのクレジットを譲ったようです。ポール・デスモンドはデイヴ・ブルーベック・バンドでの活動以外では、ジェリー・マリガンとも度々共演しました。1950年代中期からは、バンド・リーダーとしての活動も多くなり、ウェストコースト・ジャズの旗手のひとりとして活躍しました。コニー・ケイ(モダン・ジャズ・カルテット)やジム・ホール等がポールのサイドマンを務め、多くのレコーディングを残しています。プロデューサーのクリード・テイラーのCTIレコードが創立されると、ポールも同社の専属となりました。ジャズ専門誌「ダウン・ビート」の読者人気投票で、アルトサックス部門の首位をしばしば獲得する活躍をしていましたが、1977年52歳のとき肺癌で他界しました。

 ポール・デスモンドのアルトサックスのサウンドは、まさに唯一無二の「ポール・サウンド」でした。柔らかくて甘い音でありながら、ある意味硬質でしっかりとした芯があり、遠くまで届く鋭さを持っている…。まあ、文章での表現はどうやっても本質を語ることは出来ないでしょう。とにかく録音を聴いてください。多くの一流プロサックス奏者たちが、ポール・デスモンドのサウンドに感動し、研究し、彼のサウンドの秘密を探り、その魅力に少しでも近づこうと努力しています。しかし、セルマーSBA(Super Balanced Action)にフレディ・グレゴリーの広めのマウスピース。それにやや硬めのリードというポールのセッティングを真似ても、彼の音は到底出すことが出来ないようです。有名な彼の語録のひとつに、「ドライ・マティーニのような音を出したい」というフレーズがあります。そう、まさにドライ・ジンとドライ・ベルモットのステアカクテル(シェイクしない)に、オリーブが添えられている…。そんなサウンドなんです。

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Written By: sax on 2月 13, 2019 No Comment

サックスという楽器はピカピカ・メカメカしてる割には、「色味」に欠ける工業製品です。楽器全般に渡って色味の豊富なものは多くはありませんが、歴史の古い楽器の「工芸的な美しさ」に比べ、サックスが放つオーラは直球的な「機能美」であり、アート性もベルの彫刻が担っている程度です。そんなサックスに、野に咲く小さな花のようなささやかな色味をもたらしているのが「フェルト」です。大げさですか?ならば、サックスの各所に散らばる、赤や緑のいくつかの小片が無くなってしまったら、サックスがいかに味気ない見栄えになってしまうか想像してください。あの緑や赤、結構決まってますよね。
 あらぬ方向から攻め始めましたが、サックスのフェルトは決して飾りではなく、機能上不可欠なものです。そして各メーカーが、味も素っ気も無い黒や自のフェルトを選ばないことは、サックスのデザインにフェルトの色がいかに貢献しているかを物語っていると思います (大げさですか?)。サックスでフェルトが使用されている場所は、左手小指のテーブルキーの連動接触面の衝撃緩和、左手フロントGキーやAキーのカップ接触面の衝突音防止と隙間調整、右手ハイEサイドキーの足の当り止め、Low C、B、B♭カップの開き調整用、といったところです。金属同士が当たる部分に薄いフェルト片を挟んで音や傷を防ぐ事と、円柱状の位置調整可能なフェルトで、トーンホールカップの開きの角度を決める事、そんな役割でフェルトは使われています。ちっちゃいフェルトシートが10枚以下、大小の円筒のフェルトが4個くらい、それがサックスのフェルトの全数です。

 フェルトはサックスにとって決してメジャーな部品ではありませんが、サックスからフェルトが無くなったらどうなるでしょう。キーを操作するたびにサックスが「ガチャガチャ」と激しい音を立て、各音の音程、特に低音部の音程はむちゃくちゃになるでしょう。「フェルトじゃなくても良いじゃん」、と言う方も居るでしょう。事実、欧州の楽器メーカーの多くが業績不振に陥つたとき、あのセルマー社がサックスのコルクやフェルトの代替え品として、「合成ゴム(のようなもの)」を使った時期があったそうです。古参のリペアマンさんの話しでは、それらの部品は貨物船の船倉での高温・高湿に耐え切れず、サックスが日本に付いたときには、ゴムが溶けてべったりと金属管体にくっ付いてしまっていたそうです。ある時期の日本のサックスリペアマンたちは、新品サックスのゴム剥がしに明け暮れた、という話しです。真偽のほどは定かではありません。
 コルクもフェルトも、欠損、劣化に気付き難い部品です。たまには自分のサックスのフェルトやコルクをじっくりと眺めて、その状態を確認してあげてください。

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