近年、続々と新設計のマウスピースが発売されているサックスのマウスピースですが、とうとうリードを置くテーブルに、穴が開いた(実際には窪みで、貫通していません)マウスピース、QUASAR(クエーサー)がマウスピースの老舗、JodyJazz(ジョディジャズ)から発売されました。かなり個性的なマウスピース達を有するJadyJazz、そしてこの会社の新製品、QUASARを追ってみましょう。
JodyJazzの創始者、ジョディ・エスピナ(Jody Espina)は、優秀なジャズサックス、クラリネット、フルートの奏者であり、経験豊富なジャズ教育者です。エスピナ氏はニューヨーク州のホフ・バーテルソン音楽学校のジャズ学科長を務め、ジャズ理論、即興演奏、アンサンブルを教えたり、また、同州のコンコルディア大学でサックスとクラリネットの非常勤教授も務めるなど、多くの演奏活動に加えて、音楽教育にも熱心でした。しかし2000年に彼が設立したマウスピースの製造企業、JodyJazzが急成長を遂げたのを機に、彼は教職を辞めてJodyJazzでのマウスピース設計・製造・マネジメントに専念することになりました。JodyJazzの名前は、1999年、当時プロのサックス奏者であったエスピナ氏が、伝説的なマウスピース職人であるサンティ・ラニヨン(Santy Runyon)氏に出会ったことが始まりでした。ラニヨン氏がエスピナ氏と共同でマウスピースをカスタマイズした際、それを製品化して「JodyJazz」と名付けようと提案したことが由来となっています。エスピナ氏は「ジャズ専用のマウスピースと誤解される」と難色を示したそうですが、結局世界中で評価されるマウスピースを次々と世に送り出し、2018年にマウスピースの老舗Chedeville(シェドビル)を買収し、全ラインをリデザインして再発売したり、2020年には有名なルソー・ミュージック・プロダクツを買収するなど、JodyJazzのブランドは拡大し続けています。ジョディ氏がマウスピースの設計に取り入れた「Divine Proportion:黄金比、神の比)」のイニシャルを冠した24金メッキメタル「DVシリーズ」は、パワフルな音量と繊細なコントロール性で人気のあるJodyJazzの定番マウスピースです。ハードラバーの「DV HRシリーズ」、ハードラバーマウスピースの外観と、航空宇宙グレードのハードアノード化アルミニウムの精密さを融合させた「GIANTシリーズ」、幅広い奏者に吹き易さとクリーンなサウンドを訴求する「JETシリーズ」等々、個性的かつ斬新なデザインのマウスピースが数多くラインアップされています。
そのなかでも新発売のQUASARは断トツの個性を持っています。QUASARのテーブル中心には、リードの振動と効率を高めるために設計された、特許出願中の「ビブラテーブル」と呼ばれる10個の穴が開いています。この精密な凹みは、テーブル内の質量を減らしリードがより自由に振動できるようにし、より速いレスポンス、より広いダイナミックレンジ、そしてより少ない労力でのサウンドパワーが実現されます。またQUASARはこれまでのJodyJazzマウスピースの中で、最も短いフェイシングカーブを特徴としており、アルティッシモ音域を出すのに最も使い易いマウスピースとなっています。現在QUASARはアルト用の6、7、8、9*の4モデルのみですが、マウスピースのデモ演奏の動画では、スモーキーで太い低音のサブトーンから、超高音のアルティッシモ音域を、難なくピューピューと吹いています。まるで、アルトサックスの音域が変わってしまったようです。とんでもない新種マウスピースが出現したようです。
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