ジャズ系のサックス奏者の方々ならずとも、ジャズトランペットの偉人、ディジー・ガレスピーの名はご存じの方も多いことでしょう。ガレスピーのトレードマークである、アップベルのトランペットも超有名です。あのベルの角度、良く見ると、サックスのベルの最後の開口部の角度にかなり似ています。ということで、ガレスピーのアップベルトランペットを考察しながら、管楽器のベルの角度について考えてみましょう。
1953年1月6日、ガレスピーの妻ロレーンの33歳の誕生日パーティーが、ニューヨークのクラブ、「スヌーキー」で開かれました。そのパーティーでガレスピーが演奏するために、ステージ上に置かれていた彼のトランペット(マーチン社のコミッティモデル)を、ステージでダンスを披露していたダンサーが誤ってスタンドごとトランペットを転倒させてしまい、ベルが上向きに曲がってしまいました。ガレスピーは烈火のごとく怒り、また落胆しましたが、替わりの楽器が無かったため、曲がったベルのままのトランペットで演奏しました。ところがベルが曲がったトランペットは、自分の出す音が耳に届きやすく、サウンドも気に入り、また観客にも拍手喝さいの大受けでした。このアップベルが気に入ってしまったガレスピーは、翌日には意図的に45度上を向いた特注トランペットをマーチン社にオーダーし、それが彼のトレードマークとなり、以降ガレスピーは生涯アップベルのトランペットを使用しました。一時期は、自己のビッグバンドのトランペットセクションの全員に、このアップベルトランペットを使用させていた時期もあります。最初のマーチン社のコミッティアップベルモデルは、45度の曲がり部分がコネクタになっており、ベルが主管から取り外せるようになっています。マーチン社が経営難でアップベルトランペットの製造を中止してしまった後は、ガレスピーはキング社に製造を委託しますが、キングのアップベルはベルと管体が一体化されています。また80年以降はシルキ社のアップベルを使いました。
よく考えると、ベルが斜め上を向いた管楽器は、このアップベルトランペットとサックスぐらいかもしれません。ユーフォニウムやチューバのベルは真上を向いています。普通のトランペットやトロンボーンで、ベルを45度の上向きに吹けば、水滴が口に入ってくるでしょう。フルート系の横笛は真横、クラリネットやオーボエ系は、音の出口は真下です。サックスのベルの開口面の角度は、15度から30度とされていますが、やや前屈みに演奏するので、結果ベルの角度は45度に近いのではないでしょうか。45度の角度で物を投げれば、一番遠くに届くというのは学校で習いました。ならば45度のベルから出た音は、一番遠くに届くのではないでしょうか。音の遠達性が良いということです。45度のベル角度は、科学的な進化を遂げた楽器ということかもしれません。「45度ベル属」などという管楽器の分類があっても良いのかもしれません。他の管楽器が追従してこないのは、今はマイクとスピーカーがあるから、なのでしょうか。ま、かなり無理のある仮説ですね。
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