クラッシックサックス界の重鎮、雲井雅人先生の、国立音大でのサックス個人レッスンの動画を見ました。練習曲の一節を吹き終えた学生に、「案外難しい曲だね。最初の音って、ドミソのミだって分かってる?」と質問していました。どういう意味なのでしょう。今回は「吹いている音を考える」ということに注目します。
ご存じのように、私たちが日常使っている「平均律」は、1オクターブの音程を均等に12個に分けた「12平均律」で、ピアノなどの鍵盤楽器で、どの調でも同じように演奏できる利点があります。しかしすべての音が少しずつ調整されているため、完全な響きを求めた「純正律」に比べると、和音がわずかにうなったり濁ったりします。雲井先生が指摘している「ドミソのミ」とは、曲の和音がCメジャーの部分のミは、良い響きのためには−14セント(正確には −13.7セント)低くしなければならない、ということで、この理屈ではソ(G)は+1.9セント高くしなければなりません。「セント(cent)」とは、音の高さ(音程)のズレや間隔を表す単位で、1オクターブを1200に分割した、1/1200が1セントです。伴奏のピアノが弾いている和音は、平均律によるCメジャーのはずなので、ピアノに合わせる音の高さではなく、「メロディの自分が吹くべき音の高さ」を感じながら、かつピアノの音と調和して吹きましょう、と先生は指導されています。
ピアノやオルガン、電子キーボード等、固定音程楽器以外の楽器は、ギターやバイオリン等弦楽器も、トランペットやチューバ等の金管楽器も、そしてサックスやクラリネット、フルート等の木管楽器も、みんな音の高さは奏者が微細にコントロールすることが出来ます。音色だって演奏中の奏者に任されています。ゆえに、音程や音質を任された楽器の奏者には、その楽器ゆえの「責任」があるということでしょう。自分が出す音を考え、出すべき音は何かを感じ、聴衆に伝えたい音を、良く考えたうえで出し、演奏する、ということです。
またこの動画で先生は、生徒の譜面を指差しながら、「この音が高くなる、というのを吹く前に想像してる?」と尋ねます。予測しておくことで、自分の音を正確にコントロールできるよう、余裕をもって演奏しようということです。そして、音程のコントロールも、「使い物になる音質でコントロール出来る」ことを求めています。コントロールで音質が犠牲にならないよう、日々の練習で意識するよう指導しています。
管楽器は奏者の息、口、身体で音を出します。言ってみれば、奏者自身も楽器の一部です。それゆえに楽器から出る音のほとんどの部分が、奏者のコントロール下にあります。ともすると日頃は、「出た音」にばかり注目しがちな我々アマチュアサックス奏者ですが、「どんな音を出そうか」、「どういう音を出すべきか」、「どんな音を出したいのだろう」などと、自分を主体にして楽器のパフォーマンスを考えることも重要ではないでしょうか。日々の練習を、自分の意志と楽器から出る音の「つながり」を考えながらおこなうことで、自分の出すべき音、自分の出したい音、自分の作りたい音楽、を演奏で作り出すことが出来るのではないでしょうか。
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