「マリゴ(Marigaux PARIS)」というブランドをご存じでしょうか、著名なオーボエブランドのひとつとして、世界的に知られている管楽器メーカーです。長きにわたって、世界の偉大な演奏家たちに愛されてきたこのブランドは、実はある時期、サックスも製造していました。そのころは、「ストラッサー・マリゴー・ルミエール(Strasser-Marigaux-Lemaire)」の名前で知られており、ヴィンテージサックスマニアの間では、「SMLのサックス」として今もなお人気があります。今日はその「SML」の歴史を追ってみましょう。
マリゴブランドの歴史は、1935年1月12日に、ストラッサー氏、マリゴ氏、ルメール氏という3人の共同経営者によって、ストラッサー・マリゴ社がフランスのパリに設立されたことに始まります。創業の地、ラ・クチュール・ブーセー地区は優れた木材が容易に手に入る緑豊かな土地で、パリの木管楽器技術者たちが多く集まっており、ストラッサー・マリゴ社はオーボエをはじめ、サックス、フルート、クラリネット等、さまざまな木管楽器を製作していました。しかし1981年からはオーボエとクラリネットの製作に専念し、とりわけオーボエは世界60ヶ国以上の有名オーケストラ奏者たちに選ばれるトップブランドとして、押しも押されもせぬ地位を築きました。2007年6月、1975年以来マリゴの極東総代理店であった野中貿易株式会社が「MARIGAUX sas」を買収し、現在では野中貿易の傘下でマリゴブランドのオーボエの製造が続けられています。
Strasser Marigaux & Lemaire (以下SML)は創業当初からサックスの製造に取り掛かりました。この年はセルマー社が「バランスド・アクション(Balanced Action)」を発表する2年前で、セルマーが現代サックスの世界標準となる礎を作った時期にあたります。SMLは「ゴールド・メダル(GoldMedal)」と「キング・マリゴー(King Marigaux)」の二つのモデルが特に有名で、独特な音色と音の伸びから現在でも多くのファンがいます。キング・マリゴーは米国の「KING」に依頼されてSMLが製造した、いわゆる「ステンシル・モデル」としてアメリカに輸出されました。正確にはSMLが設計したオリジナル・モデルではありませんが、ゴールド・メダルの後期型を受け継ぎ、実質的な「SMLサックスの最終形」といえるモデルとなっています。SMLのサックスは、どのモデルも明らかに同時代のセルマーと違う鳴りと音色を持っており、そのサウンドの「色気と艶」が賞賛される素晴らしいサックスです。SMLのサックスの構造的特徴は、全体に管体が分厚く、ネックソケットは別部品となっています。低音部のトーンホールガードはひとつずつ別体になっており、左手サムレストには滑らかにカーブした板金が使われています。ベルと2番管は極厚のY字ステーで溶接されており、とても堅牢です。その品質の高さから、本国フランスではセルマーと競い合うほどの地位まで上り詰めましたが、SMLは1981年にサックスの製造を中止します。その際、「(営業力で)もうこれ以上セルマーと競争できない」、とコメントしたと言われています。
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