カーボンファイバー(炭素繊維)は、アクリル繊維や話題の石油ピッチなどを高温で炭化させて作られる、合成繊維素材です。「鉄の1/4の軽さ」と「鉄の10倍の強さ」をあわせ持ち、航空機、宇宙開発からスポーツ用品まで幅広く活用されています。超軽くて超丈夫、という夢の新素材で、サックス関連ではケースの外装素材等に使われていたりしますので、決して馴染みの無い素材ではありません。しかし最近、サックスのサウンドにもろに関わる方面で、カーボンファイバーの使用が注目されています。サックスとカーボンファイバーの関係に迫ります。
最近のサックスケースには、カーボンファイバー製の外装を持った製品が数多く見られます。楽器ケースに求められる、頑丈さでしっかり楽器を守り、でも羽のように軽くしたい、という無謀な要求を叶えてくれる、夢のような素材です。カーボンファイバーのケースは、かつては「かなりお高め」の値段でしたが、製造方法が熟成してきたせいか、手頃な価格の製品も数多く出回っています。強さと軽さにばかり注目されがちなカーボンファイバーですが、近年、その音響特性についても注目されており、「管楽器の音」に関わる分野でも注目されてきています。スイスの管楽器ブランド、「da Carbo(ダ・カーボ)」はカーボンファイバー製のベルを搭載したトランペットを製造しており、非常に軽量で、少ないエネルギーでレスポンスよく鳴るため、「音が澄んでいて、かつ疲れにくい」と、世界中のトランペット奏者に評価されています。カーボン素材は金属に比べてほとんど振動しない素材で、余分な倍音を管体が付加しないため、澄んだ音が得られると言われています。また同様の特性から、金管楽器のミュートにも採用されています。PROTEC(プロテック)MC100ストレートミュートは、 4層構造でわずか51gという超軽量で耐久性に優れ、温かみのある音色を生み出します。ドイツのトランペット奏者、F.アレックス氏によって開発された、強化カーボンファイバー製のトランペットミュート、A MUTE(アーミュート)は、どの音域でも音程が良く、ミュート装着時も吹奏感が変わらず、明るい音色を実現できると評判です。
ベルがカーボンファイバー製のサックスはまだ市販されていないようですが、台湾サックスの父と呼ばれる、張連昌(チャン・リェンチェン)氏により1945年に創業された、台湾を代表する老舗サックスブランド、LC Saxophoneが開発した、Pioneerシリーズのサックス、A-803CB(アルト)/T-803CB(テナー)は、特殊合金製の管体とビッグベルで、キーの各所にカーボンファイバーが採用されています。この超軽量キーによって、軽快な操作性と反応の速さが実現されています。またサックス奏者であるハリー・ハートマン氏によって創設されたドイツのブランド、HARRY HARTMANN’S Fiberreed(ファイバーリード)は、中空ファイバーと高弾性カーボンファイバー素材を、交互に織り交ぜたリードを開発しました。複合構造により、リッチな倍音と豊かな音量を実現し、低音域はファットに、高音域は鋭く抜けのよいサウンドで、ポップスやジャズに最適です。カーボンファイバーは、今後も益々サックス奏者に密接になって来そうです。
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