オットー・リンク、デイヴ・ガーデラ、ベルグ・ラーセン等々、設計者の名が冠されたサックスの「銘マウスピース」はたくさんありますが、ジャズ黄金期のレスター・ヤングやチャーリー・パーカー、また近年ではメイシオ・パーカーらが使っていることで有名な、アーノルド・ロス・ブリルハート(Arnold Ross Brilhart)氏の設計によるサックス・マウスピース、「ブリルハート」が復刻/販売されることが発表されました。
復刻されたのは、白いバイトプレートが施されたお馴染みの「ブリルハート・エボリン(Brilhart Ebolin)」と、バイトプレートが省略された「ブリルハート・エボリン・スペシャル」です。今日はこの「ブリルハート」について迫ってみましょう。
アーノルド・R・ブリルハートは1904年9月30日にコネチカット州で生まれました。彼はサックス奏者として、ドーシー・ブラザーズ・オーケストラ等で多くの録音に参加しますが、1939年8月、ニューヨーク郊外のロングアイランド、グレートネック地区に、自身の設計したマウスピースを製造/販売する会社を設立しました。
1940年8月14日にトナリンとエボリンのマウスピースが発売され、両者はたちまち人気のマウスピースとなります。同社はオフィス兼工場を転々と移転しますが、モデルの改良や製造方法の進化によって、ヴィンテージマウスピース市場では、「どこで作られたブリルハートなのか」が評価の一材料になっています。1965年には、世界最初の複合リード材料である「ファイバーケーン(Fibercane)」の特許も取得しています。
ところが1966年、業績不振により、米国コーン・セルマー社にブリルハート・カンパニーとブリルハートの社名の権利を譲渡します。その契約では、アーノルド・ブリルハートは10年間木管楽器のマウスピースを作ることを許可されませんでした。そして11年後の1977年、ARB(アーノルド・ロス・ブリルハートの略)のサックス・マウスピース向けの商標が承認され、ブリルハートの親友、エルマー・ビーチラー氏の会社、ビーチラー(Beechler)社からARBブランドのサックスとクラリネットのマウスピースがリリースされました。
ブリルハートは個性あるリガチャーでも人気を博しました。現在でもオリジナルのヴィンテージ・リガチャーを、ケニー・ギャレット等の多くのサックス奏者が使用しています。このリガチャーには、リードと接触する独自のプレートがあり、二つのデザインバリエーションがあります。一つはプラスチックのプレート、もう一つは金属のプレートです。
プラスチック・プレート・バージョンは、3 本のバンドが付いた本体と、黄褐色のプラスチック製リードプレート、および黒のエポキシでカバーされたつまみのネジを備えています。このブリルハート・リガチャーは、米国のエコー・ブラス・リガチャー(Echo Brass Ligature)社が復刻製造/販売しています。
アーノルド・ブリルハートが最後にデザインしたマウスピースは、リコ社のグラフトナイトとメタライト・マウスピースでした。グラフトナイトはA、B、C、三つのチャンバーモデルを持ったグラファイト製のマウスピースで、多様な音楽ジャンルの表現に対応していました。
メタライトは、高いステップバッフルを備えた、名器レベル・エアに似たデザインで、グラフトナイトよりも明るく鳴りました。サックス・マウスピースの発展に大きく寄与した人物、アーノルド・ブリルハートは1998年5月21日、カリフォルニア州で逝去しました。
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