サックス 本体

カイルヴェルト物語

昨年、ブランド創立100周年を記念したモデル、「100th Anniversary SX90R」をテナー50本、アルト50本の合計100本限定で発売したユリウス・カイルヴェルト(JULIUS KEILWERTH:スペル末尾がTHなので英語読みでカイルベルスと呼ぶ場合もあるようです)。一部のパワー系のサックス奏者には絶対的な人気を持つ、非常に個性的なサックスメーカーです。「俺のサックスはカイル」と聞くと、その奏者の演奏スタイルばかりか、人柄までをも想像できそうな、「奏者を選ぶサックス」を生み出した、ユリウス・カイルヴェルトについて深掘りしてみましょう。

1894年生まれのユリウス・カイルヴェルトは、20歳からサックスの工房、「V. F. Kohlert& Sons」で働き始めました。26歳のとき、父のヨハン・バプティスト・カイルヴェルトが自身の工房でのクラリネット製作を開始したのを機に、3人の兄弟とともに同工房で働き始め、ユリウスはサックスを組み立てる仕事を担当しました。そして1925年、ユリウスは自身のサックスブランド、「ユリウス・カイルヴェルト」を設立します。その質の高いサックスは大成功をおさめ、1930年にはチェコスロバキアのグラスリッツに新しい工場と自宅を建設するに至ります。1962年、会社を創立したユリウス・カイルヴェルトが68歳で死去しますが、グラスリッツの音楽学校で学び、木管楽器製造の技術を父の工場で習得した息子のヨーゼフが、「ユリウス・カイルヴェルト」ブランドの後継者となりました。1965年、ユリウス・カイルヴェルトは、アメリカの演奏家、作曲家、そして楽器製造販売者でもあったハーバート・コーフ(Herbert Couf)との提携を始め、米国市場向け仕様のサックスを製造を始めます。これらのモデルは「H. Couf Superba I」、「Superba II」、そして「Royalist」の名で全米で人気を博しました。 これがグローバー・ワシントン・ジュニア(Grover Washington Jr.)が愛用したことでも知られる、あの「H. COUF」です。数年のうちに〈ユリウス・カイルヴェルト〉のサックスは、最高峰のサックスのひとつとして奏者達に認識されるまでとなり、1965年には5万本目となるサックスが販売されました。1989年、「ユリウス・カイルヴェルト」はブージー・アンド・ホークス・グループの一部となりますが、ヨーゼフの二人の息子 ゲルハルトとヨッヘン以下、40人の職人の工房から、名器「SX90R」が市場にリリースされました。 2010年、ビュッフェ・クランポン・グループが、「ユリウス・カイルヴェルト」ブランドおよび、ドイツのマルクノイキルヒェンの工場を買収し、同ブランドのサックスの製造を受け継いて現在に至ります。

SX-90Rはそのパワフルな鳴りと、極太のサウンド、正確な音程、そしてしっかりとしたキーレスポンスで定評があります。タンポの密閉度とキイ・アクションの静寂性を高める「トーン・ホール・エッジリング」を採用したり、高さ調節の可能なパームキイ、G#キーの貼りつきを無くすG#リフティングシステム、はめ込みの型を使用しない独立した形状の指貝等、他に類を見ない個性的かつ独創的な工夫が満載されています。そしてその最上級モデルが”SX90R Shadow(シャドウ)”です。人気モデル「SX90R」をベースに、管体にはニッケルシルバー(洋白)を用いてレスポンスを大幅に向上させ、表面仕上げのブラックニッケルメッキとの組合わせで、気品あるスタイリングと音質の向上を実現しています。ネックからベルに至るまで、熟練した職人が贅沢に施した手彫彫刻はまさに芸術品と呼べる美しさです。とっても「カイルな」逸品です。

 

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