サックス奏者が一番大事にしているのは、お気に入りのマウスピースではないでしょうか。サックスの楽器本体は壊れたとしても、かなり類似なもので代替えが利かない訳ではありません。しかしマウスピースはどうしようもありません。落として、欠けたら、割れたら、ヒビが入ったら、全く同じものはほとんど存在しません。ましてやヴィンテージ・マウスピースなら…。ああ想像しただけで寒気がします。そんな大切な、マウスピースはどうやって作られているのでしょう。
サックスのマウスピースの材料には、エボナイト、フェノール樹脂(プラスチック)、アクリル、真鍮、ステンレススチール、アルミニウム合金、チタン合金など、幅広い種類の材料が使われています。かつては天然ゴムに硫黄を添加し、加熱することで硬化させる「エボナイト(ハードラバー)」がマウスピースの主たる材料で、金型に原料を注入して焼成して固め、マウスピースの原型「ブランク」を作り、それを削り込むことでマウスピースを作っていました。初期のメタルマウスピースでは、やはり鋳型に溶かした金属を流し込み、鋳造しているものもありました。鋳造メタルマウスピースの中には、中心線に左右パーツの結合跡が残っているものもありました。近年の材料加工技術の進歩に伴って、素材の塊を切削して、精度の高い加工でマウスピースが作られるようになります。乱暴な言い方をすれば、丸棒を途中からくさび型に削り、シャンク側から丸い穴を途中まで貫通させ、リードテーブルを平たく削り、そこからバッフルを彫り込んでシャンク側の穴につなげれば、マウスピースらしきものが出来上がります。かなり複雑な工程で、かつ高い加工精度が求められる加工作業です。それゆえ現代のサックスのマウスピースは、メーカーやモデルによって、それぞれ個性的な製造方法が用いられています。
現代のマウスピース製造で欠かせないのが、フライス盤と旋盤です。フライス盤とは、回転する工具(フライスやエンドミルなど)を材料に押し当てて削り、目的の形状に加工する工作機械です。金属、木材、樹脂などの材料に平面、溝、穴などを高精度に加工出来ます。旋盤(せんばん)は、円筒形の素材を回転させ、刃物(バイト)を当てて削ることで円筒形状に加工する工作機械です。円筒形状の部品(丸棒やパイプ、ネジ、シャフトなど)の製作に適しており、外側を削る外径加工に加え、内側を削る内径加工も出来ます。これらの工作機械と材料、そして設計図があればマウスピースの製作は可能ですが、現在のマウスピースのほとんどは、もっと先進的な機械、「マシニングセンタ」で作られています。マシニングセンタとは、コンピュータ制御で多種類の切削加工(穴あけ、平面削り、ねじ立てなど)を1台で超精密におこなえる工作機械です。複雑な形状の部品を高精度かつ短時間で製造でき、自動車、スマートフォン、飛行機などの部品製造に不可欠な機械です。そして近年人気の高いマウスピースメーカー、「Syos」では、ABS樹脂素材の3Dプリンターを使ってマウスピースを製造しています。マシニングセンタでも3Dプリンタでも、CADを使ったデジタルデータでマウスピースを設計していますが、ヴィンテージレプリカモデルなどでは、3Dスキャナを使って実際のヴィンテージ・マウスピースを測定し、そのデータをもとにデータを構成するという手法もあるようです。マウスピースもデジタルの時代ですね。
——————————————————————————————–
⇒『 AIZENより 音楽の秋 キャンペーン 返品保証30日+豪華3大特典付き』
⇒『AIZENお客様の声キャンペーン!』















この記事へのコメントはありません。