サックス 本体

サックス解体新書:胴輪

サックスという楽器は、かなり複雑なメカニズムを持っています。一般的なアルトサックスで約600点の部品から構成されています。その膨大な数の部品が、ひとつひとつ各々の役割を果たし、私たちサックス奏者の演奏をサポートしてくれています。
サックスを細かく解剖し、それぞれの部品の役割を探ってみましょう。今回のテーマは「胴輪」です。

「胴輪」はサックスの二か所に使われています。ベルとU字管(一番管)の接合部、そしてU字管と二番管(メインボディ)の接合部です。
サックスの管体はベルも二番管も、金属(通常は真鍮)の一枚板を筒状に丸め、合わせ目を溶接してパイプにします。しかしU字管はパイプの曲がり方がきつい為、二枚の金属板をそれぞれプレスしてパイプの半身を作り、それらを溶接することでパイプ形状を作ります。このようにストレートソプラノを除く「曲がったサックス」は、その製造過程の理由で、「パイプを繋ぐ」必要が出てきます。
パイプの結合部は、精密なオス/メス構造で結合されていますが、その結合を補強してくれるのが「胴輪」です。結合部をネジを締めることで強く圧迫し、結合をより強固なものにしています。
サックスの全キー、全部品を外したうえで管体を洗浄し、またキーを組み上げて調整する「オーバーホール」の際でも、胴輪を外してU字管を外すことはほとんどしませんが、U字管部の打根(へこみ)などで胴輪を外す場合があります。パイプ接合部には接着剤やロウ付け等がおこなわれている場合があり、胴輪外しの作業は難易度が高いリペアとなります。

「胴輪」の話をすると、ヴィンテージサックスマニアの方々は、「アメセルのU字管のハンダ付け伝説」を思い浮かべるのではないでしょうか。
プレミアムとも言える最高の評価を受けている、フランスから部品で輸入したセルマーサックスを、アメリカで独自の組み立てをして、ジャズ市場に特化した調整を施したサックス、それが「アメセル」です。
SBAやMark VIの時代に絶大な評価を得ましたが、1975年頃Mark VIIの製造終了とともに、アメセルはその歴史に幕を下ろしました。その「アメセル」の胴輪部分の結合がはんだ付けされていることから、自分のサックスのU字管接合部をリペアマンにはんだ付けしてもらい、「うん、アメセルに近くなった」と満足げに語るサックス奏者が、ある時期とても多かったのです。
しかし実際は、ここをハンダ付けしてるヴィンテージサックスは決して珍しいものではなく、現行サックスでも、かなり安価な楽器でハンダ付けされているものもあるようです。
近年のサックス関係者の間では、重要な事は”ハンダ付けする”ではなく、”どういう手法で接着し、どういう状態になったか”であり、サックスの性能にとって、ただ「ハンダ付けしました」では、必ずしも楽器がいい状態になるとは言えない、ということが一般的になっています。近年U字管接合部の強化には、エポキシ樹脂を使用するメーカーやリペアマンが多いようです。

 

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