サックス 練習・レッスン

音の表情

ご存知のように、サックスという楽器は楽器の固体、マウスピース、セッティング、リードの状態、演奏者の体格、吹き方等、様々な条件でその発音する音色が変化します。それ故にサックス奏者は、いつでも「良い音」を求めてさまよい続けています。
吹き方を工夫したり、マウスピースを換えたり、ネジやリガチャー等のアクセサリーを採用してみたり、「音質」もしくは「サウンド」に対する努力や出費は、おそらく一般的な管楽器の中では、ダントツの一番なのではないでしょうか。
しかし「良い音」と言われても、かなり漠然としています。人によって好みもあるでしょうし、奏者によっても目指すものは違うでしょう。何か「良い音」の指標になるようなものはないのでしょうか。あります。それが「音の表情」です。

多くの楽器演奏教育者やプロの楽器奏者が、楽器の音質について語るとき「音の表情」という言葉を口にします。
ボーカルの歌唱では意味のある歌詞が発せられているため、歌声の表情はついつい見逃がされがちですが、歌詞やその物語、感情に合わせて、歌声の音質は常に移り変わり、顔の表情と同じように、伝えたい「意思」が示されています。歌唱の技術の中でも、いかに声の音色で表情を伝えるかは、とても重要な要素です。
優れたバイオリニストの演奏を思い出してください。あの「弦を弓で擦る」という作業だけで、あるときは悲しみに暮れた絶望の感情を、またあるときは喜びに溢れた歓喜の雄たけびを表現します。初心者のときには「ギーギー」しか言わなかったバイオリンが、習熟したバイオリニストになれば、喜怒哀楽以上の様々な表情を感じる音を出すことが出来ます。
曲のメロディは、その曲の本質的な物語であり、基本的な表情を持っています。しかしその曲の演奏方法、演奏者の技術による「音の表情」によって、より大きな感動を生む「音楽」になっていくのだと思います。

ロングトーンの練習で、喜怒哀楽を表す表情をサックスから出すことを試してみてください。
「喜び」は明るく大きな音でしょうか。「怒り」は詰まって籠った音、「悲しみ」はしゃがれた小さな音、「楽しさ」はきらびやかに輝くストレートな音でしょうか。しかし、これらを納得する質で吹き分けるのが至難の業という事は、サックスを吹く人なら誰でも分かるはずです。
音の表情を付けるためには、まず無表情でニュートラル、それでいて音楽性豊かな、基本の音を手に入れなければなりません。その基本の音が出せたとき、「良い音、良いサウンド」を手に入れたと言えるのではないでしょうか。
良い音を目指すとき、ダイレクトにそこに辿り着こうとせず、音の表情作りから大回りで近づく、そんなアプローチも有りなのではないでしょうか。

 

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