ネックとベルが無いアルトサックスの管体に、電子回路を詰め込んだ、リアルサックス型サックスシンセサイザー、EMEOの新型、EMEO MSが本年2026年4月にリリースされました。初代のMk1が2020年リリースですので、6年間の技術革新でどんな進化を遂げたのでしょうか。今回はEMEOの進化を、他のサックスシンセの歴史とともに調べてみました。
2020年に発売されたEMEO Mk1(当時はEMEOという名前だけでした)は、アルトサックスの2番管の金属筐体に電子機器、センサーを埋め込んだ、「サックスと同じ操作で演奏できる、サックス型MIDIコントローラー」でした。そう、音源は内蔵されていない、EWI業界で言う、「MIDIスティック」です。1987年リリースのAKAIのEWI1000、また後のEWI3000(1990年)、EWI3020(1994年)までの機種は、内蔵音源を持たない音源は別ユニットのコントローラーです。EWIは2006年のEWI4000Sで、初めて電池駆動で内蔵音源が搭載されました。
EWIは静電駆動型のタッチセンサーでコントロールするタイプですが、YAMAHAのYDS-120の先祖、WXシリーズはEMEOと同じような樹脂製メカニカルキーを持ち、また別の進化をして来ました。1987年発売のYAMAHA WX-7は専用の音源ユニットが付属した、ウインドコントローラーです。廉価版のWX-11(1988年)、そして10年後の1998年にはWX-5がリリースされます。この時代のYAMAHAのウインドコントローラーは、1996年に発表された、管楽器の空気振動物理モデル、VA音源(Virtual Acoustic)を採用した、ハーフラックサイズの革新的なハードウェアシンセサイザー、VL70-mと連携して使用され、多くのファンの人気を集めていました。VL70-mはコントローラーから息を入れすぎると、オーバーブローして音がひっくり返るなど、本物の管楽器をシミュレーションしたシンセサイザーでした。しかしWXシリーズはあくまでサックス練習用機器であり、プラスチックメカの耐久性や操作性の違和感などから、ステージ楽器としての使用例はあまりありません。周知のように、ステージ演奏でのウインドシンセは、マイケル・ブレッカーや伊藤たけしが使用していた、EWIの独壇場でした。その後YAMAHAは2020年に内蔵音源にスピーカーとベルまで搭載した、YDS-150を発売します。2023年には廉価版のYDS-120も発売しましたが、いずれも、「自宅でヘッドホンで静かに、本格的なサックスの演奏が楽しめる、初心者向けの電子管楽器」、として展開しているようです。ちなみに本年12月には、USB端子がType-Cへと刷新され、スマートフォンやPCとの接続性や給電、MIDI連携が向上した最新機種、YDS-122とYDS-152が発売されます。
EMEO MSは初代Mk1のリアルな操作感はそのままに、本体内蔵音源(オンボードサウンド)とヘッドホン端子が新たに搭載され、外部機器に繋がず単体で演奏できるようになりました。かなりWXからYDS-150への進化に似ていますね。またEMEO MSはBluetoothオーディオに対応しており、外部デバイスからのカラオケトラックを直接楽器にストリーミングできます。接続すると、スマホやタブレットからの音声がEMEO MSに接続したヘッドホンから再生され、内蔵音を聞きながらカラオケトラックや他の音声で練習することができます。EMEOのユニークなところが、他のサックスシンセと違い、ほとんどスイッチ類やディスプレイが無いことです。色々なモード変更や、キー変更等は、コマンドモードで複数のキーを組み合わせて操作します。直観的とは言い難いですが、慣れれば苦にはならないそうです。同様な発想で、最低音B♭の運指に、小指のCまたはE♭を組み合わせると、バリトンサックスのAの運指となります。EMEO社は、「EMEOは革新的なサックス練習器機です」と謳っています。
現在メカニカルキー式のサックスシンセは、EMEOとヤマハのYDSシリーズ、そしてTravel Sax 2です。タッチセンサータイプやボタンタイプのものに較べて、少々種類が少ない感じです。メカニカルキータイプ、がんばれ!
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