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サックス 演奏

Written By: sax on 6月 19, 2019 No Comment

サックスのサウンドの源は、言うまでもなく先端のマウスピースに装着されたリードの「振動」です。奏者の息のエネルギーで発生したリードの振動が、マウスピース、ネック、サックス本体へと伝わり、最終的にサックスのサウンドに変化して聴衆へと届きます。ですので、サックスのサウンドを考えるときには、「振動」を考えることが不可欠です。
 「音のエネルギーをロス無く楽器に伝える」、はサックスにとっての永遠の課題です。古くはアメリカンセルマー製マークVIで採用された、「U字管をはんだ付けする」という手法がありました。接着剤やネジによる締め込みが一般的なU字管の接続を、金属はんだでロウ付けし、振動の伝達率を上げ、かつ息漏れを最小限にしようというアプローチです。これによって、「さすがアメセルは反応が違う!」と言わしめたようですが、今の製造技術で考察すると、必ずしも効果があるかどうかは分からないようです。このU字管のように、サックスには沢山の「つなぎ目」があります。そしてそこの接続を密にすれば、きっと良い音がする、というのが「振動伝達」のコンセプトです。

 サックスのつなぎ目には、リードとマウスピースをつなぐリガチャー、ネックコルクを介したネックとマウスピースの接続、ソケット構造によるネックと本体の接続、そしてU字管があります。「振動伝達」を考えると、サムレストやサムフック、ストラップリングのような、「ここから振動が逃げる」、という場所もありますが、今日は置いておきましょう。リガチャーの種類や構造に関しては膨大なバリエーションがあり、単なる振動伝達に留まらず、振動の成分を調整する発想のリガチャーも少なくありません。ネックコルクの振動伝達改善には、最近多くのアクセサリーが発明されています。「小判型」の金属板をマウスピースとネックの金属部に渡して、マウスピースの振動を積極的にネック側に伝えるアクセサリーが人気のようです。またリガチャーから伸びた金属棒をネックに触れさせ、リードの振動をネックに直接伝えようとするアクセサリーもあります。炭素系の超微粒子を特殊処理でオイルに溶かし込んで作られた、金属接合部の振動伝達性を向上させるオイル、というものもあります。ネックジョイントだけでなく、リガチャーや本体のネジ部に注しても効果があるようです。U字管のはんだ付けも、接合に使うロウ材(溶かす金属)の成分を変えることで、音の伝達効率や、伝達する音の成分をコントロールする技もあるようです。同様に、ネックコルクをネックに巻き付ける際の接着剤も、ゴム系の接着剤を避け、常温で硬化するシェラック(パッドをカップに接着するもの)を好んで使うサックスプレーヤーも多いようです。「振動」の事を考え始めると、ほんと、「しんどお」いです。あは。

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Written By: sax on 6月 12, 2019 No Comment

2007年の年が明けて間もない1月13日、多くのジャズファンを呆然とさせた彼の突然の死。偉大なジャズテナー奏者でありEWI(エレクトロニック・ウィンド・インストルメント)奏者のマイケル・ブレッカーが、骨髄異形成症候群から進行した白血病のため亡くなりました。死のまさに直前まで、マイケルは最前線で時代の音楽シーンをけん引していました。生まれ持った才能と弛まない努力によって、彼は最高の技術とセンスで、素晴らしい音楽世界をファンに届けてくれました。
 ブレッカー・ブラザーズやステップス・アヘッドといつた、兄、ランディ(Tp)と共同リーダーを務めたバンドでの活動に加え、自己のリーダーバンド、スタジオ・ミュージシャンやツアーバンド・メンバー、フィーチャード・ソロイストとしての活動も幅広く、関わった録音も多様なジャンルに渡り、その数は1,000を上回ると言われています。マイケル・ブレカーを「20世紀を代表するテナーサックス奏者」と言っても、誰も異論は唱えないでしょう。57歳で亡くなる直前まで新作のレコーディングを進めており、そのアルバム「PILGRIMAGE」が遺作となりました。病室にEWI等の機材を持ち込んで、レコーディングを続けていたそうです。彼の正確無比なサックステクニックは、比べられる奏者もいないほどの至高のテクニックであり、一部のファンには「機械的過ぎて冷たいサウンド」とも言われましたが、没後発表された『UMO JAZZ ORCHESTRA WITH MICHAEL BRECKER LIVE IN HELSINKI 1995』では、キャリアの集大成を迎える絶頂期のマイケルのサウンドが熱くうねりを上げており、兄、ランディ・ブレッカーも、「マイケルの最高のプレイのひとつだ!」、とそのクォリティの高さに驚愕したと言われています。

 ファンクやフュージョンジャズと呼ばれるジャンルで主に活躍したマイケルは、いわゆる「電子化サックス」の先駆者でもありました。バーカスベリー社のリード貼り付け型ピックアップ、モデル1375を1970年代のブレッカー・ブラザーズで使用しており、また1980年代にはネックに穴をあけて装着するピエゾタイプのピックアップをラックタイプのシンセサイザーに接続して演奏しています。「Steps Ahead」の1986年の厚生年金会館でのライブでは、EWIの前身である「スタイナーホーン」を吹いており、サンプラーや複数音源を駆使した一人オーケストラ的演奏は必聴です。1988年には本格的にAKAIのEW11000を使用し始めています。当時ヤマハのメカキータイプのサックスシンセサイザーWX7も発売されていましたが、マイケルは静電タッチキータイプの AKAI製を終始使用していました。スピーディーな運指を突き詰めるには、触れるだけで感知される静電タイプが向いているとのコメントも残しています。
 マイケル・ブレッカーのことを書き始めると、まったく紙面が足りません。とにかくマイケル、凄いっす!

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Written By: sax on 5月 29, 2019 No Comment

日本のジャズ雑誌で「グロテスク・ジャズ」などと、とんでもない呼び方をされたこともあるジャズサックス奏者、ローランド・カークは1936年アメリカ、オハイオ州に生まれました。1975年に脳卒中の発作を起こし、右半身麻痺になりましたが、左手だけで演奏できるように楽器を改造して音楽活動を続け、1977年にインディアナ大学での演奏を終えた直後、二度目の脳卒中の発作を起こし42歳の若さで亡くなりました。彼は幼少期に、病院で点眼液を間違えられたことから両目の視力を失っています。小さな頃からトランペット、クラリネット、サックスなど、様々な楽器を手にしていた彼は、あるとき3本のサックスを同時に吹いている自分自身の夢を見たそうです。その夢に運命を感じた彼は、その後本当に3本のサックスを吹くための特訓に挑みました。そして、この3本サックスの同時演奏は彼のトレードマークとなりました。サングラスをかけた巨漢の黒人が、首から提げた3本のサックスを同時に吹く姿は、見た日だけで言ったら確かに異様で「グロテスク」だったのかもしれません。

 ローランド・カークは「マルチ楽器奏者」です。良くあるマルチリード奏者ではありません。一人で、サックス、フルート、トランペット、オーボエ、ピッコロ、ブルースハープ、イングリッシュホルン、などなど、多種多様な管楽器を卓越した技術で演奏します。そのうえ同時に数本のリード楽器を吹き、鼻でフルートを鳴らしながらスキャットを口ずさみ、同時に手回しサイレンやホイッスルを鳴らします。しかも、息継ぎの無音時間を無くす高度な演奏技法である「循環呼吸」をも実践し、音が絶えることなく響き続けます。こう紹介すると、フリージャズ系の無秩序なサウンドの洪水をイメージされる方が多いと思いますが、ローランド・カークのサウンドは違います。メロディアスで、ファンキーで、立体的なハーモニーを持っています。同時に吹く楽器のすべては、完全に彼の意思のもとにコントロールされ、リズミックに和音を構成する「ひとりオーケストラ」になっています。彼の音楽を一度でも聴いたなら、「グロテスク・ジャズ」などという呼称とは180度異なっていることに気づくはずです。
 彼のサウンドは、独特なユニゾンとハーモニーを持ってミステリアスに響き、ユーモラスでありながら、どこか悲しみを宿したブルージーな響きを聞かせることもあれば、かたや肉声に近いサウンドと、エモーショナルなリズムによって、R&Bやソウル・ミュージック的なポップワールドを実現することもあります。まさにローランド・カークの唯一無二のサウンドです。その場のインスピレーションで曲も楽器も替えてゆくには、使える楽器をすべて手元に置く必要があり、合奏のタイミングを完璧に合わせるには、複数の楽器を同時に自分で吹く必要もありました。複数楽器のアンサンブルに自由度を与えるには、息継ぎをせずに息を出し続ける必要がありました。盲目の天才、ローランド・カークにとって、彼のスタイルは必然的な選択だったのでしょう。

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Written By: sax on 11月 28, 2018 No Comment

マイクスタンドにすっぽりはまり、床やテーブルから生えていたり、ブームで吊るされているものばかりが「マイク」ではないのはご存知かと思います。歌や声を集めるための「マイク」に対し、楽器の音を集めることに特化したマイクが多種あります。今日は、「管楽器専用マイク学」です。

 楽器用マイクを大別すると、接触型の「コンタクトマイク」と、楽器装着型の「クリップマイク」とに分けられます。コンタクトマイクは、電子チューナーに付属している、楽器本体を挟み込んで、クリップのように取り付けるマイクが馴染み深いでしょう。クリップ形状なのに「クリップマイク」では無く、「コンタクトマイク」だなんてややこしいですが、楽器そのものにマイク集音部が接触するのが「コンタクトマイク」、楽器に固定器具で取り付け、楽器とマイク部の関係を密に、かつ固定的にするのが「クリップマイク」ということですので、見た目で誤解しないようにしてください。チューナー用のコンタクトマイクは音程を検出するだけの「音質はどうでも良い」簡易マイクですが、コンタクト型でコンサート品質のマイクも数多くあります。 1963年に世界で初めてピエソ圧電素子を使ったアコースティックギター用ピックアップを世に広めた楽器用マイクの老舗バーカスペリ一社は、楽器用コンタクトマイクを数多く開発しています。ギターのボディーやウッドベース、ヴァイオリンの「駒」に張り付けるマイクはもちろん、フルートのヘッドスクリューにマイクを仕込んだものや、サックスのリードに接着剤で張り付けるサックス用マイクも開発しました。1960年代以降には、サックスのネックに穴を開けてコンタクトマイクを仕込むのが流行ったようです。ヴィンテージ楽器の中には、ネックの「マイク用の穴」を塞いだ痕跡があるものに稀に遭遇します。アメリカセルマー社が販売した電子サックスシステム、VARITONEは、ネックにガッツリとマイクが溶接されており、そこからコントロールボックスを経由して、専用アンプにワイヤがつながっています。コンタクトマイクは楽器に接触してその音を拾うので、周囲の他の音が混ざらず、純粋に楽器からの音のみを増幅し、ワウワウペダルやコーラス等のエフェクターで電子的に音を加工する場合に適しています。
 現在のステージシーンでは、高性能なクリップ型のマイクが主流です。管楽器のベルの部分等に専用クリップでマイクのアームを留め、アームの角度や曲がり具合を調整して、マイクが楽器のベルの中央に向くようにします。スタンド式のマイクに対し、クリップ型はマイクをギリギリまで楽器の発音部に接近させることが出来、かつその位置関係を変化させずに、奏者が自由にステージ上を動き回ることが出来ます。ワイヤレスのシステムを使えば、奏者はうっとおしいマイクケーブルから解放され、ステージどころか客席にまで移動することが出来ます。ポップスやロック系の「目立ちたがりの管楽器奏者(?)」には必須のアイテムになっています。

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Written By: sax on 9月 5, 2018 No Comment

サックスは何故かうるさいとよく言われます。金管楽器にはミュートが使用できますが、サックスはその原理と構造上、高効率な弱音器は存在しません。いくつかの「サックス用ミュート」が製品化されていますが、トランペットのプラクティスミュート(練習用弱音器。他のミュートは音質を変える事が目的ですが、これは吹奏感を損なわずに、音を小さくすることが目的のミュートです)に比べたら、弱音の効果には雲泥の差があります。
 サックスは何故うるさいのでしょう。結論から言ってしまえば、発明者のアドルフ・サックスが「大きな音の楽器を作りたかった」からに他なりません。クラリネット等の木管楽器の高い操作性を持ち、金管楽器のダイナミックレンジの広さを兼ね備えた新しい楽器として、アドルフ・サックスはサックスいやサキソフォンを考え出したのです。彼の優れたアイデアによって、サックスは洗練された運指、発音の容易さでは、他の管楽器に類を見ない楽器となりました。ということで、「うるさい」という意味では宿命を背負ったサックスですが、ビッグバンドでも吹奏楽でも、「あ~!サックス隊、うるさい!」という言葉は聞いても、「ラッパ隊、うるさいよ。」というのはあまり聞きません。何故でしょう。その原因は、サックスが小さい音を出すのが難しい楽器だからです。

 金管楽器の音の源泉は奏者の唇です。自分の身体なので奏者は責任を持ってコントロールしています(かな?)。フルートの音の源はリッププレートの上に発生した空気の渦です。オーボエ等のダブルリード楽器のリードは細長いストローを潰したような形状です。で、サックスの音の源泉、リードの大きさはどうでしょう。大きいですね、広いですね。リードの面積はクラリネットも同様かもしれませんが、クラリネットとは本体の大きさや材質が違います。しかも管体が円錐状に広がっています。ね、サックスはどうやっても大きい音が出るんです。そして大きい音が出し易い分、小さい音が出し難いのです。アルトでもテナーでも、どんな種類のサックスでも、ピアニッシモの小さな音を出すにはかなりの技術が必要です。 「うるさいサックス隊」の原因が見えてきましたね。そう、彼らのほとんどは「下手なサックス隊」なのです(ごめんなさい!)。サックスの場合、小さな音が出せないという事は、楽器をコントロールできていないという事です。コントロールできていない音は、当然きれいな音にはなりません。だから音が大きく、汚い音で周りをイライラさせるのです。しかも注意されて気が付いても、彼らは小さい音を出すことが出来ません。それで余計周りをイラつかせます。そして、「サックスはうるさい」という「デマ」が広がるのです。
 サックス奏者は、ピアニッシモからフォルテッシモまでの音量のコントロールが出来るようになってから、人前で楽器を吹いたほうが良いのではないかと思います。それが「うるさい!」と言われないための秘訣です。うーん、分かっちゃいるけどキツイ結論ですね。(苦笑)

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Written By: sax on 8月 22, 2018 No Comment

最近、楽器のサウンドの音質を表現する際に、「豊かな倍音を含んだリッチなサウンド」などと、「倍音」という単語が頻繁に登場するようになって来ました。うーん、倍音って何でしょう?
 サックスの場合、「倍音」という単語は二系統の意味があります。ひとつは楽器のコントロールの訓練である、オーバートーン・トレーニングで言うところの倍音です。オーバートーンを日本語訳すると「倍音」となります。最低音のシ♭の運指でオクターブ上のシ♭、ファ、シ♭、レ、ファ、ラ♭、シ♭の音を喉のコントロールで出します。最初の音が基音、オクターブ上のシ♭が第二倍音。それに続いて第三倍音から第八倍音です。これらの倍音を喉のコントロールで意図的に鳴らすオーバートーンのトレーニングをすることは、幅広い音色を自分でコントロールすることへ繋がる重要な練習です。もう一つの倍音は、音の音質を作り出す「高調波」です。音は正弦波(サインカーブ)で解析できますが、基音だけの単純な音は音叉の音です。音叉の音にはほとんど倍音が含まれていません。これに対し、すべての楽器はそれぞれの個性ある倍音を含んだ複雑な波形の音を持っており、その楽器の音色、サウンドを生み出しています。オーバートーンでは第二倍音、第三倍音と整数の倍音しか扱いませんでしたが、楽器の構造によっては1.5倍音等、整数倍で無い倍音も混ざっています。

 音叉は「倍音を徹底的に抑制した楽器」です。通常は、どんな音も倍音を含む、というのが物理の法則です。さきほどのオーバートーンの話しに戻ると、「楽器が本来持っている基音と倍音を意図的に引っ張り出す」というのが練習の実際です。音響心理学的な研究では、偶数倍音は「精神的安らぎや安定」の効果があり、奇数倍音は「明瞭度の向上」の特性を持っていると言われています。クラリネットは円筒形の閉管構造であるため、主に奇数倍の倍音を多く含むため、シンプルで明瞭度の高い音色を持っています。サックスは管が円錐形であるため、偶数倍の倍音が豊富です。このため、サックスはフルートやクラリネットより倍音成分が複雑で、音色も複雑になっています。そう、倍音の種類や配分量でその楽器のサウンドが決まる訳です。
 整数倍の倍音は、音階の範囲内に入っていますので、基音に対してハーモニー(和音)の効果を発揮します。従って、整数倍の倍音が多い楽器のサウンドはとても音楽的です。逆に非整数倍の倍音は、いわゆるノイズになります。スネアドラムやシンバルなどの打楽器は非整数倍音が優位なため、基音の音程感が希薄です。同じ打楽器でもティンパニーは整数倍音が多いため、しっかりとした音程感を持っています。倍音は、料理で例えるならば、調味料やスパイスかもしれません。その量やバランスで、様々な味の料理、サウンドが作り出されます。そう、倍音を制する者がサウンドを制するのです。

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Written By: sax on 1月 10, 2018 No Comment

皆さんはチューニングのピッチは何ヘルツに合わせていますか?「え、どういう意味?」という方もいらっしゃるかもしれません。結構奥が深い、基準音についてお話ししましょう。

 五線譜の真ん中のラ(A)を440Hzに調律することが、1955年に国際標準化機構(ISO)によって決められました。それ以来、A=440Hzは音響器材の校正や、ピアノやバイオリンなどの楽器の調律の標準として用いられています。ところが、この国際標準はアメリカがそれ以前に国内で標準として使っていた周波数で、ヨーロッパではA=444HzやA=448Hzが今なお主流ですし、日本でもA=442Hzが実質的主流です。とはいえ、基準は単なる基準。奏者の好みでどうにでもピッチはコントロールできます。例えば古楽器であるチェンバロは、今もバロック時代の基準値A=415Hzで調律されます。時代によるピッチの変遷をたどると、15~16世紀ごろのルネッサンス期は466Hz、18世紀バロック時代後期には392Hz、モーツァルトは422Hz、1859年のフランス政府制定ピッチは435Hz、1884年のイタリア政府制定ピッチは432Hz、20世紀のカラヤンは446Hzのカラヤン・チューニングと呼ばれる標準ピッチを使っていました。凄い違いですね。

要は「基準音A=440Hz」という規格は、音楽をやるものにとっては、「ま、だいたいこの辺」でしかありません。実際に日本のコンサートホールやスタジオ、音楽練習室に置かれているピアノは、ほとんどがA=441~442Hzあたりで調律されています。高めのピッチのほうが、全体にハリのある音になるというのが一般的な意見です。電子キーボードが入ったバンドでは全員が「ピッチ調整」をすることができますので、高いピッチで合わせる傾向があります。アコースティックのピアノがバンドに入っている場合は、ま、ピアノに合わせるしかありません。

 ヴィンテージのサックスにはローピッチモデルとハイピッチモデルがあります。サックスはネックへのマウスピースの抜き差しでピッチを変えるので、楽器の「落としどころ」のピッチを設定することで、「もうこれ以上マウスピースが入らない/抜けない」という問題を解消していました。世界中で標準ピッチが異なっていた事への対応ですね。不用意にヴィンテージのローピッチサックスを買ってしまうと、現代のバンドのピッチに合わせられない場合がありますので注意が必要です。

 「奇跡のピッチA=432Hz」という言葉をご存知でしょうか?A=432Hzでチューニングされた音が、より美しく響き、調和がとれるだけでなく、脊椎や心臓で感じることができるという説です。「A=432Hzは、宇宙の規則性と数学的に一貫しており、意識や重力、磁気、物質は、A=432Hzで振動や光、時間、空間の性質を統一している。」、のだそうです。スマホのアプリで432プレーヤーというものがあり、普通の音楽音源のスピードを変えずに、ピッチを2%だけ下げて再生することができます。これを使って曲を聴くと、確かに音楽全体の雰囲気が少し変わります。感じ方は人それぞれだとは思いますが、是非一回聞いてみてください。音楽でのピッチの重要性が感じられると思います。

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Written By: sax on 12月 13, 2017 No Comment

 「音楽は瞬間の芸術だ!」、とよく言われます。私たちが奏でる音楽は、音になった瞬間から消え失せ、新しい音へ役割を渡していきます。何かあっても常に進み続ける、非情な「時間軸」が音楽の性であり、それ故に失敗が誤魔化せたりします(えへ)。音楽は時間にどの程度縛られているのでしょうか。

 音楽作成ソフトは通常1ms(ミリ秒=1/1000秒)でのタイミングの制御が可能です。音のタイミングや延ばしの長さ、アタックカーブの立ち上がりの勾配等を、この1ミリ秒の精度で指定します。ということは、「人間は音楽の中で1/1000秒を感じることが出来る」ということです。もちろん出音のタイミングが1ミリ秒変わっても、ほとんどの人は差を感じないでしょう。ただこの一桁上、10ミリ秒はほとんどのひとが差を認識します。1/100秒あなたのサックスの音が皆より遅れたら、誰にでも分かる「遅れ」として聞こえます。例えば1分間に120の4分音符が入る(120BPM)アレグロのテンポでは、1拍は0.5秒。そこに入る16分音符の長さは0.125秒です。32分音符なら0.0625秒という「瞬間」です。陸上のトラック競技を見ていれば、この1/10秒がどんなに短い差であるかは感じられますよね。そんな、「シビアなタイミング」のなかで、我々は音楽をしているのです。

 1/100秒のシビアなタイミングを感じることは出来ても、自分で意のままに操作できる事とは違います。我々、楽器奏者の時間のコントロールは基本的に「分数」です。先ほどのアレグロのテンポでは1拍の1/4の16分音符が0.125秒です。「クタクタ、クタクタ」で0.125秒をコントロールしています。ジャズのアップテンポなナンバーだったら200BPMは珍しくありません。そんな曲では0.15秒の8分音符を我々は吹いている訳です。また遅い曲、べったべたのバラードでもタイミングの取り方は同じです。60BPMなら1拍は1秒、8分音符は0.5秒となりますが、この遅い時間世界にも難しさがあるのが音楽の厳しさです。 1/100秒の揺れがあればそれがバレてしまうのですから、スローな曲ほどタイミングがシビアになります。バラードソロを採譜した楽譜には、32分音符やら7連譜などの見たこともない音符表現が出てきます。これはオリジナルのプレーヤーが、「そう吹こうと思って吹いた」のではなく、「プレーヤーのニュアンスを採譜したらそうなった」ということです。その楽譜通りに吹いても、オリジナルの演奏の雰囲気は多分でないでしょう。

 ジャズのフレーズのタイミングには特徴的なお約束があります。スイングです。楽譜に8分音符で、「タ、タ、タ、タ」と書いてあってもそう吹いてはいけません。「たつた、たった」という感じの、「8分音符+8分音符=付点8分音符+16分音符」に近い雰囲気のタイミングで演奏します。しかしこれは「近い」だけであって、そのものではありません。ジャズのスイングのタイミングは多くのプレーヤーが解説していますが、最後は「ジャズらしくスイングしたフレーズ」というあいまいな言葉で終わってしまいます。しかしそこには1/1000秒のコントロールが存在します。微妙なタイミングのスイングも、フレーズごとにぶれてしまえば音楽になりません。いやあ、音楽って難しいですね。

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Written By: sax on 10月 25, 2017 No Comment

サックス奏者ばかりでなく、管楽器奏者にとって「呼吸法」は非常に基本的な課題です。基本的であるにもかかわらずその奥は深く、プレーヤー人生において常に向き合っていなければならない「永遠の課題」でもあります。普段我々の誰しもが、「人間として生きるためにしている呼吸」をしている訳ですが、楽器を吹くための呼吸はそれとは全く違い、「管楽器を鳴らすための呼吸」をしなくてはなりません。今日は管楽器奏者の呼吸の話しです。
 普段私たちがしている呼吸は、息を吸うときも吐くときも、特別な意識はしていません。しかしサックス演奏のための呼吸は、最短時間で最大の空気を吸い込み、かつ完全なコントロールをしたうえでそれを吐き出す、という「サックスを鳴らすための息の出し入れ」になります。そう、「呼吸」ではなく、「空気の出し入れ」です。このとき奏者の身体の呼吸器系は楽器に対して、「能率の良いポンプ」でなければなりません。この「ポンプ」と楽器の相性によって、楽器の鳴り得る最大限の良い音が出る場合もあれば、楽器の性能を生かし切れない、残念なサウンドにもなってしまう訳です。息の吸い方、吐き方の詳細に関しては多くの「セオリー」が書籍や先生から伝えられていると思いますので、ここでは特に触れません。注目していただきたいポイントは、「息の見つけ方」です。
 「自分はポンプ」と考えても、身体の機能は奏者の体格や性別、身体能力によって千差万別です。目的とする「息の吸い方と吐き方」が同じだとしても、その「方法」は人それぞれのはずです。これゆえに、「息を見つける」という練習が必要になります。最短時間で大量の空気を体内に取り込むためには、自分はどこに力を入れ、どこを緩める必要があるか、またその方法に無理はないか…。息のエネルギーすべてをサックスのサウンドに変換するために、自分の喉はどんな角度で、どんな太さで息を出せば良いのか。またその息のスピードと当てる場所、舌や口腔内での空気の流れのコントロールはどのようにすれば良いか…。これらの要素の「出すべき結果」はある程度見えています。しかし、「方法」は自分で探るしかありません。あなたのサックスレッスンの先生も、出てくるサウンドは聞いて判断できますが、あなたの口の中の舌の形を見ることは出来ませんし、そのときのあなたの身体全体の筋肉の緊張度を見極めることは不可能です。ですので、自分で「見つける」しか無いのです。
 息を見つける方法は奏者によって色々ですが、重要な基本は「注意深く自分とサックスと出てくる音を観察する」ことです。左右の背筋、おへその下、肩甲骨等、色々なところに神経を集中して息を吸ってみて、どの方法が一番自然に大量の空気を吸えるかを「探って」みましょう。お腹や喉のどこに力を入れ、どんな舌の形で、どんな角度で息を吹けば、リードが「自然に鳴ってくれる」のかを観察しましょう。色々なことを試し、色々なことを確認し、色々な結果を導き出して、「自分の息を見つける」努力を継続しましょう。その努力によって、あなたとあなたのサックスとの良い関係が築かれ、最高のサウンドで音楽を演奏出来る状態に近づくと思います。
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Written By: sax on 10月 4, 2017 No Comment

今日のテーマは、改めて口にするのもばかばかしい位の常套句、「どうしたらサックスが上手になるか」です。しかしサックス初心者からプロ奏者まで、「どうしたら上手くなるか」は絶えず悩んでいることです。ぽんと、どうしたら少しでも近道が出来るんでしょう。一緒に考えてみましょう。
 サックスを上手くなりたい自分としては、他の楽器から何かを「パクれないか」をしばしば考えます。同じ木管楽器の「フルート」や金管楽器の花形「トランペット」はどうなんでしょう。何か上手くなる特効薬がないのか聞いてみました。答えは皆同じ。「練習だよ!」でした。ですよね…。あ、でもフルートやトランペットの練習を見ていたら、何かが違います。同じ指使いで違う音が出ています。サックスは音に対して指使いが決まっています。サックスの「運指表」では基本的に全部の音に指使いが決まっており、ある運指をすれば、基本的に該当する音が出てくれます。オクターブ上はオクターブキーを押し、その上の音はサイドキーの操作で出てくれます。これって、他の楽器では信じられない「楽なこと」なんです。金管楽器は倍音の積み重ねと、それに対する管長の操作で音を出しています。トランペットでは第1バルブを押すと1音下がり、第2バルブを押すと半音下がり、第3バルブを押すと1音半下がる仕組みになっているので、唇で倍音の基音を出し、バルブ操作でそれを下げて音を出します。フルートもオクターブキーが無いので、唇から出す息のスピードや太さを変えて倍音を出します。
 サックスは科学技術の力によって、特定の音を究極に出し易くした楽器です。奏者がさほど苦労しなくとも、指定された指使いさえすれば、決められた音が出てくれます。実はサックス奏者にとって、ここが大きな問題なのです。サックスはオクターブキーを押して、左手人差し指と中指を閉じれば「ラ」の音が出ます。しかしフルートは同じ指使いでもオクターブ下の音が出たり、他の倍音が出ます。トランペットも同様です。唇や口の中の容積、息のコントロールで、「ラを出そう」としなければ、「ラ」は出ないのです。サックス奏者のかなりの人たちが、「出ちやった音」でサックスを演奏しています。それを「出した音」にすればサウンドの質も向上し、コントロールの方法も明確になります。サックス奏者が出す音を意識して初めて、サックスと一体化した最高の音が出せるのです。
 面倒臭い理屈を言いましたが、実践は簡単です。頭の中で出したい音の高さと音質を「歌う」のです。楽器なしで歌うときの喉、呼吸、身体全体の状態を意識して、その体勢で息を入れてサックスを吹くのです。これによってびっくりするほどサウンドが改善しますが、決して簡単なことではありません。歌いながらスケールを吹いてみましょう。歌いながらフレーズを吹いてみましょう。サックスそのものと奏者が一体になって音を出す。これが、サックスが上手くなる練習の原点です。
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