サックス マウスピース

アンブシャのパラドックス

*シンリップ、ファットリップ、ダブルリップ等、サックスのアンブシャ(マウスピースの咥え方)は色々です。そしてそれらのアンブシャタイプも奏者によって微妙に変化します。またアンブシャを変化させると音質や音の安定性が激変します。サックス奏者にとってアンブシャは、目標のサウンドを実現するための「試練」であったり、時折自分を襲う「不安」だったり、答えの出ない「研究対象」だったりもします。どんなアンブシャが良い、とかいう長くなりそうな話は置いておき、サックス演奏のアンブシャの原点を考えてみます。
 サックスのアンブシャは「パラドックス」そのものだ、という人がいます。パラドックスとは矛盾やジレンマ、逆説などと訳されますが、「一見間違っていそうだが正しい説」、もしくは「一見正しく見えるが正しいと認められない説」等を指して用いられます。アンブシャのどこがパラドックスなのでしょう。それはサウンドを作り出すリードの自由度と、そのサウンドのコントロール性の関係がパラドックスを生んでいるということのようです。やや哲学的な解釈はここまでにして、具体的な矛盾の例を説明しましょう。ファットリップは上下の唇の力のみでマウスピースを咥え、息を吹き込んでリードを振動させるアンブシャです。リードを締め付ける力が少なく、リードは最大限に振動することが出来ます。しかし音のコントロールは大変難しく、安定した音を出すためには相当な訓練が必要です。シンリップは逆に、マウスピースをかなりの力で締め付けるアンブシャです。音のコントロールは非常にやり易いアンブシャですが、リードを鳴らし、太く大きな音を出すことと両立するためには、こちらも高い技術が必要です。
 サックスを楽器として機能させるためには、音のコントロールが必須です。正しい音程で、求められたタイミングで音を出し、意図した音の大きさで、意図した長さの音を出すことが 「コントロール」です。そしてサックスの誕生と同時に生まれたのがシンリップです。長きに渡り、クラシックサックスの世界では「王道」のアンブシャです。しかしサックスが色々なジャンルの音楽で活躍するようになってくると、「これがサックスの限界なの?」、「もっと面白いサウンド出せそう」、とかの欲が出てきました。そしてサックスの音の源泉であるリードの振動を、より自由にしてあげようというアンブシャが考えられ出しました。しかしリードに自由度を与えると、コントロールが難しくなりました。豊かな太いジャジーなサウンドでも、音程が悪すぎれば音楽になりません。吠えるような轟音でも、音のタイミングは重要です。サックスのアンブシャは、何かを得るためには何かを捨てなければいけないのかもしれません。そして捨てる物と得る物の価値は、プレーヤーひとりひとり、それぞれによって違います。アンブシャの基本形はあっても、それが自分の欲しいサウンドを作り出してくれる保証はありません。
 シンリップは正しくもあり間違っている。ジャズで標準的なファットリップも、正しくもあり間違ってもいる。確かにパラドックスです。重要なのは捨てる物と得る物に対する、「あなたにとっての価値」を自覚することではないでしょうか?
——————————————————————————————–

『イー楽器のお得情報』

返品保証30日+豪華3大特典付き
⇒『AIZENより 2月キャンペーン』

レビューを書いてAIZENゲットのチャンス!
⇒『AIZENお客様の声キャンペーン!』

関連記事

  1. サックス 演奏

    技術よりも結果を大事に

    はーい、アマチュアサックス吹きの皆さん、練習してますか?ロングト…

  2. サックス 演奏

    サックスはうるさい(?)

    サックスは何故かうるさいとよく言われます。金管楽器にはミュートが使用…

  3. サックス 練習・レッスン

    記録の重要性

    サックスのサウンドは色々な要素で変化します。変化するし、してしまいま…

  4. サックス 練習・レッスン

    楽譜は苦手、を克服しよう!

    クラッシック、ブラスバンド、ジャズでもビッグバンドのかたは楽譜を読ん…

  5. サックス 演奏

    サックス練習の悩み

    「どうすれば、早くサックスが上手くなりますか?」。良く訊かれる質問…

  6. サックス 演奏

    パートリーダーの役割

    以前、バンドの音楽を率いる「コンサートマスター」や「リーダー」のお話…

previous arrow
next arrow
Slider

最近の記事

アーカイブ

2025年5月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
PAGE TOP