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2月 2019

Written By: sax on 2月 27, 2019 No Comment

サックスの重さは、ソプラノで1.4kg、アルトは2.6kg、テナーは3.6kg、バリトンは6.5kgくらいです。材質によってもちろん重さは変わりますが、一般的なサックスはこの重さのほとんどが管体やキー構造の素材「真鍮」の重さです。シャフトとポストをつなぐ部分等のネジには鋼が使われていますが、まあこれも金属です。そしてサックス素材の超マイナーチームがフェルトとコルクです。フェルトはカップなどの可動部の当り防止や開き調整に使われていますが、もうひとつの素材「コルク」はサックスの色々な部分で、多様な使い方をされています。
 サックスにとって一番大事なコルク、「運搬時固定用コルク」はあまり皆さんの目に触れないかもしれません。サックスが工場から出荷される際、輸送中の振動でキーが動いて、調整が狂ってしまうのを防ぐため、カップやキーにクサビ形のコルクを挟んで、可動部が動かないように固定します。これが「運搬時固定用コルク」です。このコルクによって、サックスは輸送時、すべてのトーンホールカップは閉じて固定された状態になっています。両手の8本の指を使ってキーを塞ぎ、最低音のB♭の音を出すときの状態です。

 コルクのもうひとつの役割は「当たり止め兼高さ調整」です。フェルトは金属の間に入って、それらが衝突して音を出すのを防ぐだけですが、クッション性に加えて軽く、ある程度の強度があるコルクは、その高さでキーの開き具合の調整にも使用されます。パームキーには無くてはならない存在で、ここのコルクが外れると、金属が当たってガシャガシャ音が出るだけでなく、キーが開き過ぎて音程が低くなってしまいます。パームキーのコルクが外れた時に、適当な大きさにワインのコルク等を切り刻んで、接着剤で張り付けるサックス奏者が少なくありませんが、キーの開きも調整しないと悲惨な音程になります。素人修理はお勧めしません。
 サックスコルクの花形(?)といえばネックコルクでしょう。ネックの先端でマウスピースを受け止め、息漏れさせずにマウスピースのエネルギーをサックス本体に伝達する、大事な役割のコルクです。雑に取り付けると、ネックとコルクの間に隙間が出来てサウンドの輪郭が甘くなったり、マウスピースがグラグラ動いてアンブシャが安定しなかったりと、ろくなことがありません。またネックコルクには、強度もクッション性も高い上質な天然コルクを使う事も大事です。コースターやピンナップボードに使われている、コルク材を粉砕&圧縮成型した圧縮コルクは、弾性、強度、気密性等、あらゆる面でサックス用には向いていません。同じような理由で、パームキーのコルクも圧縮コルクは不向きです。押さえた時の感覚に雲泥の差が出ます。天然コルクでも粗悪なものは経年劣化か激しいので要注意です。

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Written By: sax on 2月 20, 2019 No Comment

ポール・デスモンドは1924年、ポール・エミル・ブレイトンフェルドとして米国サンフランシスコに生まれました。12歳でクラリネットを始め、後にサックスに転向。19歳にしてプロデビューし、ウェストコースト・ジャズを代表するサックス奏者、作曲家となりました。彼が21歳になったとき、皆に知られるポール・デスモンドに名を変えました。その理由について本人は、「名の響きからアイリッシュ系であることを取り沙汰されるのが嫌だった」、と述べていますが、友人らの証言では諸説入り乱れており、真実はポールの胸の中、という事になっているようです。
 ポール・デスモンドについてはデイヴ・ブルーベック抜きでは語れないでしょう。ポールは1946年、ジャズ・ピアニストのデイヴ・ブルーベックのバンドに参加しました。1967年に至るまで、このバンドで多くのアルバムを発表しますが、特にアルバム「Time Out(1959年)」に収録された、ポールが作曲した5拍子の楽曲「テイク・ファイブ」が評判となり、世界中で大ヒットしました。そう、誰もが知っている、あの「テイク・ファイブ」です。実際にはポールとデイヴがアイデアを出し合って作った曲と言われていますが、あえてデイヴがポールに作曲者としてのクレジットを譲ったようです。ポール・デスモンドはデイヴ・ブルーベック・バンドでの活動以外では、ジェリー・マリガンとも度々共演しました。1950年代中期からは、バンド・リーダーとしての活動も多くなり、ウェストコースト・ジャズの旗手のひとりとして活躍しました。コニー・ケイ(モダン・ジャズ・カルテット)やジム・ホール等がポールのサイドマンを務め、多くのレコーディングを残しています。プロデューサーのクリード・テイラーのCTIレコードが創立されると、ポールも同社の専属となりました。ジャズ専門誌「ダウン・ビート」の読者人気投票で、アルトサックス部門の首位をしばしば獲得する活躍をしていましたが、1977年52歳のとき肺癌で他界しました。

 ポール・デスモンドのアルトサックスのサウンドは、まさに唯一無二の「ポール・サウンド」でした。柔らかくて甘い音でありながら、ある意味硬質でしっかりとした芯があり、遠くまで届く鋭さを持っている…。まあ、文章での表現はどうやっても本質を語ることは出来ないでしょう。とにかく録音を聴いてください。多くの一流プロサックス奏者たちが、ポール・デスモンドのサウンドに感動し、研究し、彼のサウンドの秘密を探り、その魅力に少しでも近づこうと努力しています。しかし、セルマーSBA(Super Balanced Action)にフレディ・グレゴリーの広めのマウスピース。それにやや硬めのリードというポールのセッティングを真似ても、彼の音は到底出すことが出来ないようです。有名な彼の語録のひとつに、「ドライ・マティーニのような音を出したい」というフレーズがあります。そう、まさにドライ・ジンとドライ・ベルモットのステアカクテル(シェイクしない)に、オリーブが添えられている…。そんなサウンドなんです。

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Written By: sax on 2月 13, 2019 No Comment

サックスという楽器はピカピカ・メカメカしてる割には、「色味」に欠ける工業製品です。楽器全般に渡って色味の豊富なものは多くはありませんが、歴史の古い楽器の「工芸的な美しさ」に比べ、サックスが放つオーラは直球的な「機能美」であり、アート性もベルの彫刻が担っている程度です。そんなサックスに、野に咲く小さな花のようなささやかな色味をもたらしているのが「フェルト」です。大げさですか?ならば、サックスの各所に散らばる、赤や緑のいくつかの小片が無くなってしまったら、サックスがいかに味気ない見栄えになってしまうか想像してください。あの緑や赤、結構決まってますよね。
 あらぬ方向から攻め始めましたが、サックスのフェルトは決して飾りではなく、機能上不可欠なものです。そして各メーカーが、味も素っ気も無い黒や自のフェルトを選ばないことは、サックスのデザインにフェルトの色がいかに貢献しているかを物語っていると思います (大げさですか?)。サックスでフェルトが使用されている場所は、左手小指のテーブルキーの連動接触面の衝撃緩和、左手フロントGキーやAキーのカップ接触面の衝突音防止と隙間調整、右手ハイEサイドキーの足の当り止め、Low C、B、B♭カップの開き調整用、といったところです。金属同士が当たる部分に薄いフェルト片を挟んで音や傷を防ぐ事と、円柱状の位置調整可能なフェルトで、トーンホールカップの開きの角度を決める事、そんな役割でフェルトは使われています。ちっちゃいフェルトシートが10枚以下、大小の円筒のフェルトが4個くらい、それがサックスのフェルトの全数です。

 フェルトはサックスにとって決してメジャーな部品ではありませんが、サックスからフェルトが無くなったらどうなるでしょう。キーを操作するたびにサックスが「ガチャガチャ」と激しい音を立て、各音の音程、特に低音部の音程はむちゃくちゃになるでしょう。「フェルトじゃなくても良いじゃん」、と言う方も居るでしょう。事実、欧州の楽器メーカーの多くが業績不振に陥つたとき、あのセルマー社がサックスのコルクやフェルトの代替え品として、「合成ゴム(のようなもの)」を使った時期があったそうです。古参のリペアマンさんの話しでは、それらの部品は貨物船の船倉での高温・高湿に耐え切れず、サックスが日本に付いたときには、ゴムが溶けてべったりと金属管体にくっ付いてしまっていたそうです。ある時期の日本のサックスリペアマンたちは、新品サックスのゴム剥がしに明け暮れた、という話しです。真偽のほどは定かではありません。
 コルクもフェルトも、欠損、劣化に気付き難い部品です。たまには自分のサックスのフェルトやコルクをじっくりと眺めて、その状態を確認してあげてください。

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Written By: sax on 2月 6, 2019 No Comment

言わずと知れたジャズテナーサックスの巨人、ソニー・ロリンズは1930年アメリカのニューヨークに生まれました。現在88歳で、つい最近まで現役で演奏を続けていましたが、2017年の年末に肺線維症のため引退を宣言しました。1951年にプレスティッジレコードと契約してから、66年間の長きに渡る彼のジャズ人生の中、何度も活動停止や引退宣言をし、その度に復帰をして来ましたが、今回ばかりは復帰は難しそうです。
 ロリンズがジャズテナーの巨人としての存在を確固たるものにしたのは、1956年リリースのアルバム、「サキソフォン・コロッサス」の大ヒットでしょう。その収録曲、「セント・トーマス」はジャズの定番曲となり、かつロリンズの代名詞ともなっています。また1962年リリースの「橋」も名盤として挙げられます。人気絶頂のさ中に引退宣言をし、自分の音楽を見直すためマンハッタンのウイリアムズバーグ橋の下で練習に励んでいたそうです。数年に渡り「引退」していましたが、その後復帰し、復帰最初のアルバムタイトルを、練習場所にちなんで「橋」としたそうです。1956年の「テナー・マッドネス」も必聴盤です。この録音はロリンズとレッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、フィリージョー・ジョーンズ(ドラムス)で録音することになっていたところへ、当時マイルス・デイヴィスのクインテットの新進テナー奏者であったジョン・コルトレーンがひょっこリスタジオに現れ、このメンバーでの録音に飛び入りしたそうです。そのためコルトレーンが参加しているのは「テナー・マッドネス」の一曲のみ。期せずしてジャズテナーの二大巨匠の熱のこもったバトルが実現しました。ロリンズは長い活動期間の中、誰もが認める名盤が数多く揃っているので、紹介しだすときりがありません。

 ソニー・ロリンズは、その太くて暖かい、テナーサックス独特の豪快なサウンドでも有名です。彼の使用楽器はセルマー・マークⅥの13万番代。マウスピースはオットーリンク・メタルの10番またはベルグラーセン・メタルの130にラボーズのMIDのリードだったそうです。しかしロリンズ自身はあまり楽器やセッティングに頓着しないサックス奏者だったようで、ここ10年ほどはセルマーの現行の楽器を吹いているステージ写真が多いようです。またロリンズの半世紀に渡るベスト録音を集大成した「ジャズ・コロッサス」という2枚組のCDを聴いていると、「本当に同じ人が吹いてるの?」と思うほどサウンドが演奏ごとに異なっています。ロリンズは常に奏法の改善を試みていた、との意見もありますが、それだけでは無いような気がします。そしてどんなに音質が変わっても、それらのどれもが「ロリンズの音」になっています。豪快な節回し、美しいアドリブ旋律、表情豊かなメロディはロリンズのそれら以外の何物でもありません。ソニー・ロリンズはまさにジャズテナーサックスそのものです。

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